Logicool1.3万円マウスの進化 | マルチニーズシステムのブログ

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ロジクール1.3万円マウスは何がスゴいのか

従来のハイエンドマウス「m950」(左)とのプロポーション比較。左右からの絞り込み、特に薬指側の絞り込みが浅いのが特徴

■ 実質的に9年ぶりのハイエンドマウス

 そんな中、あくまでも機能、性能といった要素を重視し、最新技術や複雑なメカ設計を用いてマウスの最上位モデルをロジクールは開発してきた。とはいえ、そのロジクールにしても、ハイエンド製品Performance Mouse m950が発売されてから、すでに6年の歳月が経過している。

 もっとも、m950は厳密に言えば、”ハイエンド”と呼べるモデルではない。操作ボタン類やメカニズムなど、その前世代の上位製品に比べ、シンプル化された部分も多かったためだ。ロジクール製マウスの最上位モデルでもっとも機能が充実していたのは「MX Revolution」で、この製品が発売された2006年8月からカウントすると、実に9年近くハイエンドマウスと言える製品は投入されてこなかったことになる。

 もっとも、マウスによるマウスカーソル操作の正確性や機能面でのイノベーションが一通り出尽くしていたから……という側面があったことは否めない。2004年に発売したMX1000で、はじめてレーザー光を使ったトラッキング技術を導入し、2006年にはスクロールホイールに画期的な工夫を施したMX Revolutionを発売。この時点で、マウスの操作性や機能について、行き着くところまで進んでしまったと言えるのかもしれない。

 さて、そんな中で1.3万円もの価格を付けるハイエンドマウスは、オフィスで8時間、パソコンの前で仕事に取り組んでいるビジネスパースンにこそ使って欲しい、快適性を備えたマウスだという。では9年近い時を経ての進化とは、いったいどのようなものだろうか。

どんなに優れた機能を持っていようとも、基本的な手への馴染みやマウスポインターの動きといった基本性能が優れていなければ使いやすいとは言えない。MX Masterには多数の新しい機能が搭載されているが、まずは日常的なマウス操作について、前モデルであるm950と比較していこう。

 m950は単三形のエネループ1本が同梱されており164グラムの重さ。1回の充電で使える時間は4日~1週間程度だった。対する新型は内蔵リチウムイオン電池となり、本体は152グラムに軽量化されている。バッテリー持続時間はカタログスペック値で最大40日となっている。毎日朝から夕方まで使い続けるような方は、2~3週間程度と考えた方がいいかもしれない。

 いずれにしろ、本体は軽量化された上にバッテリ持続時間が大幅に伸びたことになる。またバッテリが切れた場合でも、1分あたり2時間分の急速充電が可能で、4分ほどの充電時間があれば、その日は1日中まかなうことができる。

■ 充電はMicro USB端子から

 MX Revolutionでもリチウムイオンバッテリを採用したものの、充電接点の不良やバッテリ劣化などもあって、経年変化に弱いという印象があったが、このぐらいのバッテリ性能ならば安心できそうだ。バッテリのサイクル性能(繰り返しのフル充電に対する耐久性)はおよそ500~600回程度といったところだろう。なお、充電はMicro USB端子から行う。

 ところが、実際の手への馴染みとなると、筆者の場合はm950の方が良いと感じられた。MX Masterもロジクール伝統の親指と薬指のフィット感を高める独特のシェイプをしているのだが、”クビレ”がやや浅くなっている。特に薬指側にはクビレがあまりなく、マウスをつまんで上に持ち上げて操作する時には、毎回マウス本体をスベリ落としそうになる。

 m950が親指と薬指で軽く挟んでおけば持ち上がるのに対して、MX Masterはやや”掴む”意識を強くしなければ落としそうになる。このこともあってか、実際には軽量なMX Masterの方が重く感じられた。

 これはMX Masterで唯一と言っていい残念な点だ。クレイモデラーが丁寧に原型モデルを手作業で削り、手へのフィット感を高めたシェイプにしたとのことなので、筆者特有の感覚かも知れないが、実物を試す機会があればご自分の手で確かめて欲しい。

 一方、ボタンの操作感はクリック時の音が低音方向にシフトしているため、ややニブイ印象をうけるかもしれないが、実質的な質感は大きく変化していないと思う。もちろん、マウスの動きを検出するトラッキングセンサーは、MX1000以来のレーザー光を用いたdarkfieldテクノロジを搭載しており、使う場所を選ばず高精度である点は従来通りだ。

本機をコンピュータと接続するためのインターフェイスは、Bluetooth SmartとUnifyingの両方を利用できる。Unifyingはロジクール独自の2.4GHz帯を用いた無線通信方式で、専用レシーバが付属している。もっとも、Bluetooth接続の場合でも機能差があるわけではないので、接続するパソコンやタブレットなどがBluetoothに対応しているのであれば、わざわざ専用レシーバを利用する必要はないだろう。

 また、接続先を3カ所まで記憶することができる「Easy-Switch」テクノロジを搭載している。これはいずれかの方法での接続構成を登録しておき、本体裏側にあるボタンで切り替えるというものだ。

 デスク上で二つ以上のコンピュータを同時に操作したい場合に切り替えながら利用できるほか、デスクトップで使っているマウスをノート型パソコンでも使ってみたりと、使い方は人それぞれだが、WindowsとMac、2台のノート型パソコンとデスクトップPCを机に並べている筆者にはとても便利な機能だった。

 なお、前作のm905はUnifyingでの接続しかサポートしていなかった。

■ 注目の新機能は? 

 さて、ここまでがマウスとしての基本動作に関する部分だ。古いマウスでも、マウスの動きに関するカスタマイズなどは、精度が同じdarkfieldトラッキングセンサーなら、ドライバソフトウェアの進化で追従できるが、ボタン配置などの違いから来る付加機能の使いやすさは真似できない。

 MX Masterの場合、もっとも注目されるのはMX Revolutionからm905へのモデルチェンジで廃止されていたサムホイール(親指位置にあるホイール)と、電子制御切り替えのスクロールホイールメカである。

 まずサムホイールだが、名前は同じでもMX Revolutionの時とは仕組みが異なる。MX Revolutionのサムホイールは、ホイール形状をしていたものの基本的にはシーソースイッチで、どちら側に回すか、2値の入力しか行えなかった。これに対してMX Masterのサムホイールはきちんと回転する。

 ホイール回転に対応する機能は、Windowsの規定値では左右スクロールに、Macでの規定値はブラウザの進むと戻るに割り当てられている。Windows 8.xならば、左右スクロールを親指で行うことでスタート画面での操作性がグンと向上する。

 しかし、本機のハイライトはスクロールホイールに電磁クラッチを用いた自動切り替え型のホイールモード切替メカが組み込まれたことだ。カリカリとクリック感のある一般的なホイールの動き(ラチェットモード)に加え、慣性でクルクルと高速回転するクリックのないホイールのモード(フリースピンモード)が、内蔵された電磁式クラッチで切り替わる。

同様の機構はMX Revolutionで導入されていたが、当時は使用アプリケーションごとに自動切り替えするか、手動でホイールボタンを押し下げることで切り替えるかの二種類の切り替え方法だった。前者はアプリケーションごとにカスタマイズが必要であまり使われなかった。このため、m905ではよりシンプルなメカボタンによるクラッチ切り替えに改められている。

 新型のMX Masterでは、ふたたび電磁クラッチによる切り替え機構が復活し、マウスに内蔵されるコントローラでホイールの動きを検出。通常時はクリック感のあるラチェットモードになっているが、ホイールの加速度を監視して高速スクロールが必要と判別した際には、自動的に電磁クラッチを解放してフリースピンモードに切り替わる。このフルオートのホイールモード切替は「Smart Shift」と名付けられている。

 使用感はすこぶる良好。本機を選ぶか否かは、この動作フィーリングが気に入るか否かにかかっていると言っても過言ではなかろう。筆者はデフォルト設定で充分に良いフィーリングが得られたが、どの程度の感度でフリースピンモードに切り替わるかは、設定画面で切り替えることが可能だ。またマウスの任意のボタンにホイールの動作モードを切り替える機能を割り当てることもできる。

■ WinとMac、両方の特徴を捉えたジェスチャーボタン

 もうひとつ、ジェスチャーボタンという機能も、MX Masterで追加されたものだ。親指の第1関節下あたりにある隠しボタンで、これを押し下げながらマウスを上下あるいは左右に動かすことで、特定の機能を呼び出せる。

 同様の隠しボタンはm950にも存在していたが、アプリケーション切り替え機能を呼ぶ機能が従来は割り当てられていた。MX Masterは同じボタンをジェスチャーと組み合わせることで、4つのアクションに振り分けられるようにしたのだ。

 設定で変更は可能だが、規定値で割り当てられている機能は、WindowsとMacOS X、それぞれの特徴に合わせたものになっている。

 Windowsの場合、ジェスチャーボタン+上下でウィンドウの最大化とデスクトップ表示、ジェスチャーボタン+左右でウィンドウの左スナップ、右スナップが呼び出される。

 これがMacになると、ジェスチャーボタン+上下がMission Control呼び出しと同一アプリのウィンドウを個別表示するモード、ジェスチャーボタン+左右がフルスクリーン画面の移動といった具合だ。

つまり規定値ではどちらもウィンドウや画面操作に特化しているが、いくつか設定スキーマが用意されており、たとえば”メディアコントロール”を選べば、上下で音量調整、左右でリワインドとスキップといった再生制御が行える。

 さてまとめよう。m950と比較した場合、トラッキング性能などマウスの基本部分については進化しているわけではない。ただし、ホイール操作やボタンとのコンビネーションによる機能呼び出しは、現時点で使われているパソコン用OSの機能に合わせる形で上手に作り込んでいる。

 複数コンピュータとの接続設定を憶えてくれたり、一回の充電で長期間利用できるなど、技術発展に応じた順当な進化も魅力だろう。

■ 本質的な性能、機能性は変わっていない

 ただし、本質的な性能、機能性が大きく変わったかというと、個別にはそう大きく変化しているわけではない。これまで蓄積してきた、より良いマウスを開発するためのノウハウ、技術の集大成として、2015年の製品としてまとめ上げたのがMX Masterだ。そうした意味では革命的なホイール機構を導入したMX Revolutionに対して、正常進化を果たしたEvolutionモデルといったところだろうか。

 手元のマウスがそろそろ古くなり、買い換え時期を意識しているならば、MX Masterは従来機の正統な後継モデルとして選ぶべき価値がある。ただし、一点だけマウスを持ち上げる操作時のグリップ感に関しては、ややネガティブな印象を持った。

 高機能マウスには他にも”ゲーム用”というカテゴリがあるが、ナレッジワーカー向けの”ハイエンド・マウス”はライバルがいない。さまざまな面で進化を遂げたMX Masterを選ぶのか、あるいはm950を買い直すのか。筆者はしばらくMX Masterを使ってみようと思っている。

本田 雅一