携帯の「ガラパゴス化」再び?写真 | マルチニーズシステムのブログ

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日経トレンディネット 3月6日(金)17時6分配信

日本のケータイ市場は再び「ガラパゴス化」へ、でも悪いことではない

スマートフォン時代になって海外の動向と歩調を合わせるようになってきた日本の携帯電話市場が、また独自色を強めつつある。この背景をモバイル専門ライターの佐野正弘氏が読み解く。

 スマートフォン時代になって海外の動向と歩調を合わせるようになってきた日本の携帯電話市場が、また独自色を強めつつある。この背景をモバイル専門ライターの佐野正弘氏が読み解く。

 スペイン・バルセロナで開催された、世界的な携帯電話の見本市イベント「Mobile World Congress 2015」。毎年このイベントに合わせて、スマートフォンの最新機種など多くの端末が展示される。

 だが、今年2015年の傾向を見ると、スマホ新機種の多くが日本市場と縁の薄いものになってきており、海外と日本の携帯電話市場が再びかい離しつつあることが見て取れる。その背景に迫ってみよう。

●日本市場に影響を与えるスマートフォンが減少

 Mobile World Congress(以下、MWC)は、携帯電話・モバイルに関する世界最大のイベントであり、世界中の携帯電話関連事業者が集結するイベントだ。ここで発表される発表された端末や技術、サービスなどが、その年の携帯電話業界全体の動向を決める重要なイベントとして、世界中から大きな注目を集めている。

 最近は、日本のスマホ市場の動向を占う上でも、MWCは重要なイベントとなっていた。ソニーモバイルコミュニケーションズやサムスン電子など、多くの端末メーカーがこのイベントに合わせて新しいスマートフォンを発表し、それが日本市場にも積極投入されていたのに加え、最近ではKDDIが対応機種を投入したFirefox OSや、結果的にNTTドコモが採用を見送ったTIZENなど、新しいスマホ用プラットフォームに関する大きな発表もなされていたからだ。

 だが今年のMWCに合わせた各社の発表を見ると、日本市場にもマッチしたスマートフォンを積極投入したのは、曲面ディスプレイを採用したフラッグシップモデル「GALAXY S6 Edge」などを投入したサムスン電子のみ。ソニーモバイルはスマートフォンのフラッグシップモデル投入を見送り、日本市場に関連するのは高性能タブレット「Xperia Z4 Tablet」のみとなったほか、他の主要スマートフォンメーカーも日本市場への投入を意識したモデルの投入は見られなかった。

 無論、MWCは世界的なイベントであることから、日本市場に限った展示だけがなされる訳ではない。だが今回の各社の発表を見ると、日本市場に大きな影響を与える発表や展示は、従来よりも確実に減少していると感じる。つまり、フィーチャーフォン時代は独自色が強く、スマートフォン時代になってようやく海外の動向と歩調を合わせるようになってきた日本の携帯電話市場が、再び離れつつあることを意味しているといえよう。

●高性能モデルの影響力が低下している

 しかしなぜ、日本と海外のマーケットに再び距離が生まれつつあるのだろうか。1つは、やはりスマートフォンの主要マーケットが、先進国から新興国に移ったことによる影響だ。

 iPhoneの登場からしばらくの間は、スマートフォンの開発にコストがかかっていたことから端末代が高く、それを購入できるのも先進国のユーザーに限られていた。だが既にiPhoneの発売から8年近くが経過しており、先進国にはある程度スマートフォンが行きわたっているのに加え、スマートフォン自体の品質改善も進んでいることから購入サイクルも長期化している。

 一方で、時間の経過とともにスマートフォンを構成するCPUやカメラなどのデバイスが高性能化し、量産が進んだことでコストも大幅に下がるなどして、特別な技術を持たなくてもスマートフォンを開発しやすくなった。そうしたことから安価なスマートフォンが多く誕生するようになり、現在はそうした比較的低価格な端末が、新興国で人気を博すようになってきている。

 一方、日本では、月額料金は高額ながら、販売奨励金で端末を安価に購入できる施策をとっていることから、iPhoneなど高額なハイエンドモデルがボリュームゾーンとなっている状況だ。だがハイエンドモデルばかりが売れる国というのは非常に少なく、海外の多くの市場では、2万円前後のミドル~ローエンドクラスのスマートフォンが主流となりつつあるのだ。

 メーカー各社も高性能なフラッグシップモデルは投入するものの、フラッグシップモデルでボリュームを獲得するのは難しくなっている。それゆえミドル・ローエンドクラスの端末を主軸として販売する戦略をとるようになってきており、それが日本市場に向けたモデルの減少につながる一因となっている。

●もてはやされた「グローバルモデル」の存在感も低下

 そしてもう1つは、いわゆる「グローバルモデル」の存在感の低下だ。これまでスマートフォンといえば、iPhoneに代表されるように、単一の機種を多くの地域に向けて投入し、効率よく販売量を増やす「グローバルモデル」が人気を博し、そのビジネスモデルがもてはやされていた。

 だが現在のスマートフォン市場を見ると、最近は急成長する中国市場のニーズを、シャオミやファーウェイ、レノボといった地場メーカーが獲得して急成長を遂げて高いシェアを獲得し、中国外のメーカーの存在感を低下させている。またインドのマイクロマックスのように、新興国でも現地ニーズを把握した地場メーカーが強みを発揮し、シェアを急拡大させている状況だ。

 つまり現在、スマートフォンのマーケットが成熟し、世界的な広がりを見せたことで、国によって人気やし好が細分化しつつあり、そうしたことからグローバルモデルで高いシェアを獲得するという、従来の成功法則は既に通用しづらくなっているのだ。実際、中国メーカーが世界的にシェアを拡大させているのも、単に安価なだけでなく、豊富なバリエーションの端末を揃えることで、特定地域のニーズに応えられることが大きい。

 売れ筋がミドルクラスに移行したことに加え、市場の細分化によって従来日本にも投入されていた単一のグローバルモデルの存在感が低下していること。そうした2つの要因が重なりあったことで、MWCで日本市場に影響を与える端末が発表されなくなったように見えるわけだ。

●日本のスマホ市場はどうなる?

 こうした動きから、海外の動向と離れつつある日本市場が、再び「ガラパゴス化」しているという懸念を示す向きもあるかもしれない。だが筆者は、その傾向があまり悪いことだとは感じていない。国によって市場の性格が異なるのは当然であり、市場に合わせた対応をしていかなければ販売が伸びないのは、本来当たり前のことだからだ。

 逆に、現在の日本市場の動向を受け、世界的に新しい取り組みが実現するケースも見られる。例えばFirefox OSを提供するMozillaは、今回のMWCに合わせてKDDIをはじめ、海外の4つの携帯電話事業者と提携し、新しいタイプのスマートフォン開発を実施することを発表している。この新しいタイプの端末とは、要するに折り畳み型など、フィーチャーフォンスタイルの端末のこと。Androidを採用した「AQUOS K」のような端末を、Firefox OSで開発しやすくする取り組みといえば分かりやすいだろうか。

 こうした取り組みが生まれているというのは、日本市場でフィーチャーフォンが今なお根強い人気を誇っているように、従来型の端末からスマートフォンへの乗り換えをしないユーザーが、海外でも一定数存在することを意味している。MozillaとKDDIらは、そうしたユーザーのニーズをくみ取りながら、Firefox OSで最新の技術に対応した端末を投入しやすくすることで、同OSの拡大につなげたい狙いがあるようだ。

 今回のMWCから見えてくる端末の変化は、スマートフォンの市場成熟とニーズの細分化、そして細分化した各国のニーズに応えるローカルな取り組みの重要性の高まりを、意味しているといえそうだ。スマートフォン市場の流れが世界的に大きく変化していることは、よく覚えておくべきだろう。

(文/佐野正弘)