2013年に発売されたモバイルWi-Fiルータの「ベスト3」を紹介しつつ、この1年間のポータブルルータ事情を振り返る。
2013年は、LTEの普及、WiMAX 2+の開始などモバイル通信サービスがグッと「広いエリア」に、かつ「高速化」されたことに加え、小型なタブレットの拡充、SIMロックフリー機器の増加、低価格SIMサービスの流行など、ユーザーは機器やサービスを「自由に選べる」ようになるほど市場が広がったといえる。
それでは、「これはよかった」と感じたポータブルルータを取り上げつつ、この1年のポータブルルータ事情を振り返っていこう。
●Xi通信10時間越えを実現「L-03E」(NTTドコモ/LG電子製)
2013年のベストバイは、NTTドコモのXi通信対応ポータブルルータ「L-03E」を挙げたい。
L-03Eは、NTTドコモのXi対応ルータとして初めて、標準バッテリーでLTE連続通信時間が10時間を超えた、Xi 12時間/FOMA 13時間動作の性能をまず評価する。
本機発売時の2013年1月時点、Xi対応ルータはWiMAXやイー・アクセスが販売するポータブルルータ各種と比べると動作時間の仕様が劣っており、「Xi通信は大食いだから仕方ないよね」などという感じだった。Xi対応ルータとして「L-09C」、「BF-01D」などを使用してきたが、ボディが大柄で重いわりに、Xi連続通信時間はL-09Cが最大6時間、BF-01Dが最大4時間と、いま思うと超短かかったのである。
それが「1日の活動時間まるごと電源入れっぱなしで大丈夫」と、Xiルータでもはじめて1日安心して使えるようになったのが本機だ。ボディサイズは約60(幅)×90(高さ)×19.5(厚さ)ミリと小型化したほか、連続通信時間はXi接続時で最大12時間、FOMA接続時で最大13時間とかなり長くなった(重量は約145グラムと、まぁ“そこそこ”のレベルだが、ボディのほとんどがバッテリーである)。
通信性能については、Xiルータでは初めて1.5GHz帯(LTE Band 21)を使用する下り最大100MbpsのLTE通信に対応し、下り最大100Mbps対応のXiエリアでこれまでのXiルータより高速に通信できる可能性が高まった。さらにGSM通信にも対応するので、国際ローミングやSIMロックを解除した上で、海外のGSMエリアでも使用できる点も他キャリアのポータブルータと比べたメリットになる。
もちろんパーフェクトではない。まず本体前面に備わるジョグキーの仕様に難があり、思ったように操作できない。さらに、2013年のポータブルルータに搭載例が増えた「公衆無線LANの自動ログイン」、Mac OSでのUSB接続(USB有線モデムとして使用するモード)、そしてXiの下り最大150Mbpsでの通信に対応しない点などが2013年年末時点でのデメリットだ。
これらは、次期モデルとなる2014年2月発売予定の「Wi-Fi STATION L-02F」にて改良されるようだ。L-03Eの後継として、このL-02Fにはより完成度の高い端末となることを期待したい。
●WiMAXルータとして、“完成形の近い”1台「AtermWM3800R」(UQコミュニケーションズ/NECアクセステクニカ製)
続いて、WiMAX対応ポータブルルータ「AtermWM3800R」である。
WiMAX対応ルータについては、すでに2012年より10時間超の長時間動作を実現するモデルが存在していた。当初、AtermWM3800Rは「これは!」と思う仕様ではなかった。同時期に登場した「URoad-Aero」が超薄8.4ミリのボディに12時間動作を実現していたのに対し、AtermWM3800Rは8時間動作と前モデルより動作時間が減ってしまっていたからだ。
ただ、実際に使用すると考え方が変わった。前モデルAtermWM3600Rよりとても小さく軽くなったボディは「やはりモバイル機器は小型軽量が正義」と思う。そしてバッテリー動作時間についても後日公開された新ファームウェアの機能「パワーセーブ通信」を有効にすることで、仕様上の動作時間が「10時間」に改善された。ポータブルルータの製品寿命はほんの数年と思うが、ユーザーの「バッテリー動作時間を望む(というか、嘆く)」声に応じ、それを反映・改善したNECアクセステクニカのユーザーに対する姿勢と意地がグッと伝わった対応だった。
もう1つ、本機は小型軽量化されたボディの中で、Bluetooth通信を用いたウルトラC的なリモート起動機能、さらにWiMAXルータでは初となるUSBモバイルバッテリー機能にも対応しており、「WiMAX対応ルータでやれることはやり尽くした」という感じだ。AtermWM3800Rは、(第一世代の)WiMAX対応機器の「1つの完成形」と言えるルータだと思う。
さて、WiMAXサービスは2013年10月に新世代の「WiMAX 2+」もはじまったが、対応機機は2013年12月現在もまだ「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」の1機種のみで少しさびしい状況である。今後はWiMAX 2+対応端末のラインアップ増加や進化にも期待したい。
●au 4G LTE対応の、“あまり知られていない”ルータ「Wi-Fi WALKER LTE HWD11」(KDDI/Huawei製)
最後に、KDDIのプラチナバンドLTE対応ルータ「Wi-Fi WALKER LTE HWD11」(以下、HWD11)を挙げよう。
HWD11は、実はKDDIが販売するポータブルルータとして初の「au 4G LTE」対応端末である。ただ、一般的にあまり知られていない製品であるのは、主に法人向けとして展開していたため。個人が契約できる店舗が極めて少なかった。
それでも筆者が無理して本機を入手したのは、当時、筆者はauの800MHz帯LTEエリアの広さと通信速度の快適さを好んでいたから。もちろん、あくまで筆者の使用環境や体験における感覚であることは断っておくが、他キャリアでLTEで接続できないエリアにおいてもHWD11はLTEで接続できることが多かった。例えば、九州・佐賀関から愛媛県・三崎へ向かうフェリー内でLTE通信が途切れなかったこと、他社が一部のみのカバーにとどまる石垣島でも幅広いエリアでLTE接続できたことなど、都市部以外でも高速なLTEサービスを使用するための機器としてとても重宝した。
端末としても大きな弱点はない。LTEエリアの広さと連続通信時間(LTE 9時間10分、3G 12時間30分)、動作の安定性の高さから、仮にHWD11が個人向けとして普通に販売してくれたら……もっと優位に立てたのではないかと思う。
なお、au 4G LTEが利用できるハイブリッドなポータブルルータとして、WiMAX 2+対応「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」はあるが、こちらはあくまでもWiMAX 2+が主となる機器で、au 4G LTEのみの契約はできない(WiMAX 2+の月額料3880円+au 4G LTEは使用した月のみプラス1050円となる)。
●ポータブルWi-Fiルータ、2014年はどうなる?
では、2014年のポータブルルータはどうなるか。
WiMAX 2+対応「HWD14」や、イー・アクセス「Pocket WiFi GL10P」などすでにいくつか登場しているが、ルータにも「タッチ操作対応」が進んでくる動きがある。ルータもなんとなく“スマホっぽい外観”になってくる感じだ。
ルータのタッチ対応化は、モバイラーとしては「余計な機能はいらないので、その分を主機能の向上と小型、軽量、長時間動作に振ってほしい」と思わないことはないが、ルータも多くの一般層に普及している中、はやりより簡単に──の面も強く求められてくる。例えばこれまでのルータ機器の詳細設定はブラウザでのWeb設定ツールで行うスタイルだが、大きな画面とタッチUIがあれば機器単体でも比較的簡単にできてしまう。現時点の操作性としては完成度まだまだなモデルもあるが、操作性・使い勝手の改善が期待できるということだろう。また、機器の仕様や開発プラットフォームがスマートフォンに近くなるので、製造・開発コストを下げられる効果も大きいと思われる。こういったことで、低価格化やラインアップが増えることなども期待したい。
データ通信速度においては、やはり高速化と広エリア化がより進むのは想定通りだろう。NTTドコモは2014年春商戦向けモデルとして「Wi-Fi STARION L-02F」(2014年2月発売予定)と「Wi-Fi STARION HW-01F」(2014年3月発売予定)のリリースを予定しており、こちらは下り最大150MbpsのXi通信に対応する。WiMAX 2+も、ロードマップで現在の約2倍となる下り最大220Mbps対応機器を2014年中に投入することが予定されている。2013年は“100Mbps越え”対応まで進んだが、2014年はさらなる高速化と広エリア化により、モバイルデータ通信環境はより快適に、ただそれだけに“どれを選べばよいか”、そして複数年縛りがあるだけに“いつ契約するか”の決定はこれまでに増して難しくなるかもしれない。
もう1つ「Wi-Fiの5GHz帯対応/11ac対応」もポイントに挙げたい。前述した「L-02F」「HW-01F」は5GHz帯のみを使う無線LANの新規格「802.11ac」もサポートする。802.11acとは何か──の詳細は特集「ついにやってくるギガビット無線LAN」を参照いただくとして、2013年03月に国内でも家庭向け無線LANルータが登場し、クライアントとしても最近のスマートフォン、ノートPCなどに採用例がグッと増えてきている。
Wi-Fiは2.4GHz帯と5GHz帯、2つの周波数帯を使う仕様で展開されている。標準は2.4GHz帯で、現在購入できる“無線LAN対応”とある個人向け機器は100%こちらに対応している。そのため、ルータのほか、スマホのテザリング、タブレットとの複数台持ち、携帯ゲーム機、急増した公衆無線LANサービスなど……普及に応じて利用者が増えている標準の2.4GHz帯Wi-Fiは相当に混雑している。特に大都市圏では「Wi-Fiが込み過ぎで遅い」という状況を体験した人も多いと思う。
その対応策で特に効果的なのが、まだ利用者が少なく、2.4GHz帯比で利用可能なバンド幅も広い(利用者が増えても電波干渉しにくい)「5GHz帯Wi-Fi」を使うことだ。ルータとクライアント(PCやスマートフォンなど)、それぞれ5GHz帯(802.11a/n/ac)対応が進めば、この課題はスムーズに解消できる。せっかく高速化したLTEやWiMAX 2+など、親回線のパフォーマンスを阻害しないためにも重要な展開だ。
LTEが普及し、スマートフォンでの「テザリング」も当たり前の機能となった現在、モバイル機器のインターネット接続手段として「必ずルータを用意する」ではなくなったかもしれない。ただ、タブレットやPCを含め、複数台の機器を併用する層が手軽に使用する手段として、ポータブルルータは今後も一定のニーズは確保するはず。引き続き2014年もモバイルWi-Fiルータの動向に注目していきたい。