最近骨董市で探している目貫金具について
刀の鞘に2個一組でつけられる目貫金具
鞘の隙間からちっらっと見えるだけなのに凝った細工がされています。(江戸の職人のこだわりですね〜)
柄と刀身を外れないように入れてある茎(なかご)と柄を固定する釘そのものや、釘にかぶせる金具が目貫です
この目貫金具、柄の表裏に使うため方向があります。
このお猿も刀の頭に向かって同じほうにかぼちゃ?が来るように仕立てられています。
こちらは、鷺が飛んでるのと、川辺の一組
もちろん同じ形の金具でもことは足りるのですが、太平の世の江戸時代
見えないところに凝る「裏勝り」の気風はこうゆうところにも出ていたのかと思います。目貫が取引される時は2個一組なのですが
刀が実用品で亡くなった時点で、煙草入れの前金具に使われたり、カフスポタンに加工されたりしたものもあります。
そんな中で一つだけになったものを、骨董屋さんは「後家」(未亡人)と呼んでいます。
そんな後家のイノシシ ゆる〜いですね。
もっと毛の風合いがリアルなのも探せばあったのですが・
でもこれを選んだには訳があって、
歌舞伎の仮名手本忠臣蔵、5段目、ニつ玉
お軽の実家山科で猟師になった、勘平が、イノシシを追っているシーンに出てくるイノシシが緩いのです。
これ人が入って結構な速さで舞台を猪突猛進します。初めてこれを見た時は、What !ちょっと息をのみました。
文楽ではさらに緩くてこんな(右)イノシシです。
新しいリアルで、かわいい(左)イノシシを作ったのですが、舞台の雰囲気を壊すというところで、元に戻されたそうです。(笑)
今までは自分で下手な彫金で好きなものを作ってきましたが、
歌舞伎演目にちなんだものは、探せば目貫や前金具にあると気が付いたので、最近主に骨董市で探しています。金具だけ買って裏の帯留め金具を取り付けています。
歌舞伎にちなんだものとは言っても、完全な自己満足なので、これと決まったものではないのです。
舞台で見た小道具や、場所、役者の家紋や名前まで、自分の思い込みで選びます。
ただ、この演目にはこれ、と決めるのも楽しくて、
最近通っている歌舞伎好きの骨董屋さんでは、そんな話ばかりしています。
今回は、BSのドラマ「中村仲蔵出世階段」前半後半、
ニつ玉に出てくる悪役斧定九郎のスタイルを激変させた、役者中村仲蔵の話なので、放送日の夕方までに、彫金教室で何とか形に仕上げました。とても小さなイノシシですが、目と牙は銅と銀で象嵌されていました。これは小さいのが可愛いと思いました。
大きいと怖いでしょ?
出来上がりの金具は、ロウ付けの高温で変質する可能性が高いので、低温のハンダを使います。
イノシシにハンダでピンを立てて、作った裏金に穴を開けて位置をあわせ、合わない時はハンダを溶かして調整、ピンを切って頭を潰して固定しました。
(細かいところは問題有り)
そして、風呂上がりに、好きな女中ぽい着物で、お酒をいただきながらテレビを見ました。
ドラマの出だし、被り物のイノシシが道具として画面にチラッと映ってて、うれしかった!
さあ来週は後半が放送されます。
いよいよイノシシも舞台に出るかな