会館規模アンケート結果がでました~個人的な雑感 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

福岡の中心部・天神駅真上の場所にある法律事務所の弁護士です!
日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

1 はじめに
昨日、県弁全体MLに、「新会館の建物規模に関する全福岡部会員向けアンケート」の結果が流れてきました。私も回答しました。
回答結果は、(修習)期別と、希望する建物規模の項目に分かれていました。

アンケート前の予想は、
・若手ほど小さな会館を求めている
・大きな会館を求めるのはベテランに多い
というものでしたが、その結果は、予想とちょっと違っていました。

その結果をエクセルでまとめるとこういうふうになっています。
左端の列の「A案以上」がもっとも大きい規模、「C案以下」がもっとも小さい規模を示すもので、上から順に大きい規模の会館案を示します。

というものです。
つまり、期が上でも、必ずしも大規模会館を求めているものではない、という結果が出ています。
なお、右下の「合計」はアンケート有効回答数ですが、福岡部会員が800名弱(アンケート時点で)であることに照らすと、161名という回答数は少ないものではなく、このアンケート結果は、統計上、相当性を持ちうると考えます。

2 結果内容と基本的な考え方
さて、結果内容ですが、期別にかかわらず、明らかに、「推進本部①案」以下を求める声が圧倒的に大きいことがわかります。絶対数でいえば「推進本部①案」が最も多く、「C案」もしくは「C案以下」も相当に多いので、政治的な落とし所としては「推進本部①」案(69票)と「C案+C案以下」(77票)のあたりではないかと思われます。

もっとも、これはあくまでも数値上の政治的な落とし所であって、必要な会館規模の問題については、推進本部が長時間かけて検討・議論してきたという点(言い換えれば「技術的な面」)を尊重すべきとの考えもあると思います。
その意味では、政治的な落とし所とは別に、技術的な面としての正当性を持つ「推進本部①案」に一日の長があるともいえます。
※「推進本部①」案は、純然たる推進本部の答申です。「推進本部②案」は、「推進本部①案」の答申後に執行部の考えを付加したものと考えていただければわかりやすいと思います。

3 上記基本的な考え方に対する個人的な雑感
しかしながら、「推進本部①案」については、個人的に、「技術的な面」からのいくつかの疑問を抱いています。
(1) 需要予測に精緻さを欠いている。
 たとえば、大規模ホールの定員について、現在の100人というのは小さすぎるとしても、「推進本部案①」の270名というのが、果たして必要相当な規模なのかという問題は、
 ア それだけの規模の会合がどの程度開かれるか
 イ それを超える規模の会合について外部会場をレンタルした場合、どのくらいのコストが必要か
を検討した上で、ラインを引くという作業が必要です。
しかしながら、こうした検討が推進本部でされた形跡はありません。
また、必要な部屋の規模については、もっぱらの会館の用途である委員会開催頻度や出席者数をリストアップして検討する(委員会別の出席者数や出席率は、弁護士会にデータがあるはず)ことで、ある程度の予想は付くはずで、それにより、必要な部屋数等が決まるものであるところ、それがなされていません。

つまり、需要予測らしい需要予測がされていません。
私がこのことを総会で指摘したところ、執行部は、「調査する必要がない」旨の発言をしました。
が、会館規模を決めるにあたっては、資金が無尽蔵であれば格別、そうではないので、需要予測作業は不可欠だし精緻になされるべきところ、ほとんどしていない・する必要がないという考えであることに愕然とした記憶があります(思えば、弁護士激増政策も、こうやってきまっていったんだろうなーと思います)。

(2) 資金スキームに疑いがある。
 会館建設には、我々の会費が使われます。
 そこで資金スキームを立てなくてはならないのですが、その前提となる命題がいくつかあり、そのうち私が疑問を持つのは
 ア 会内の別会計から流用される金員のうち「新リーガル基金」という、当番弁護等の原資となる金員のプール金のうち相当額が流用されること
 イ 会員増加が毎年20名とみつもられているが、疑問であること
 です。
アについては、
「新リーガル基金」のために私たちは毎月5000円を会費として納入しているところ、これが用途通り当番弁護等に使われるのであれば、弁護士としてはやむを得ないと思っていますが(本来は国費でやるべきとは思いますが)、それが、会館の大規模化に充当されるというのでは、目的外使用です(だから私は抗議の意味で当番も国選も降りることにしたのですが)。
会員が営々として働いた対価をこのような形で、目的に沿わない形で費消されて黙っていることはできません。
イについては、
・法曹養成制度改革は頓挫しており、法曹志願者数が激減していること
・その元凶であると私が考えるLS中心の法曹養成制度を維持しつづけるということは、志願者をさらに減らすことを容認するということにつながる
・就職難はあいかわらず
・65期からスタートした貸与金の返還スタートは4年後からであり、そのほとんどはLSの奨学金債務の返済もしている。そこに貸与金返還が加わると、ちょうどその頃には独立・結婚等金のかかるイベントが控えていることから、会費支払困難となる会員が続出する可能性が高いと考えられ、会費値下げ圧力が高まると見られること
・法曹有資格者・任期付公務員などの、「登録していないが弁護士として扱われる人」が、登録を求めてくるが、日弁連や単位会がこれを相当強力に推進していることからして、「会費を払わず(あるいは安く)して登録させろ」という圧力が出てきたときに、抗しきれなくなるであろうこと
・法テラスの跳梁により単価がさがり売上が下がるであろうこと
・要するには、会員は増えるが、会費負担力が下がることにより、会員増加と会費収入(もっといえば会館建設負担金収入)が必ずしも比例しない事態が生じうることが懸念されること

・・・ということで、会館の規模をむやみに大きくすると、もう後戻りはできなくなるので、あとは破綻するか、会費値上げしてさらに会員を苦しめることになると思います。

なにより、上記アンケート結果を見る限り、これでデカイ会館を作ってしまうと、会員の会に対する「シラケ」は、「憎しみ」に昇華し、誰も会務に参加しないだけならまだしも、

「こんな金食い虫のくせに何の福利厚生にもつながらない弁護士会など、つぶしてしまえ。」

という意見が続出することは火を見るより明らかであり、弁護士自治崩壊の端緒を生み出すことになりかねないことを、私は強く危惧します。

よって、私は、特に(技術面の話になりますが)資金スキームの問題に鑑みてもなお、会館の規模は極限まで小さくし、会の負う有利子負債を極小にまで抑制する必要があると思います。
したがって、まだC案ないしはC案以下という意見を、今日この時点では、崩せずにいます。