新司法試験予備試験のサンプル問題発表。法科大学院崩壊が本格化? | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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新司法試験を受けるためには
・法科大学院(ロースクール)を卒業すること または
・予備試験に合格すること
という要件があります。
うち、予備試験というのは、来年からスタートする制度で、今はロースクールに行くしか
新司法試験を受ける手段はありません。

もっとも、予備試験が来年から始まるということで、ロースクールに行くのは面倒、行けないという人にとっては、新司法試験を受けるチャンスが巡ってくることになります。

ところが、予備試験がどんな試験なのか、ずっとわかりませんでした。
それが、昨日になって、法務省からようやく「こんな問題ですよ!」というサンプル問題が発表されました。
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji07_00005.html

さて、ここからが本題。
予備試験の合格者数はまだ決まっていません。

予備試験に受かればロースクールにわざわざ行く必要がなくなる。
ロースクール関係者としては、予備試験合格者が増えると、誰もロースクールに行かなくなる※1から、困る。予備試験合格者数をふやさないで欲しい、と主張します。
他方、予備試験の趣旨は、経済的社会的事情によってロースクールに行けない人にも新司法試験の門戸を広げることにある。この点を強調する勢力は、予備試験合格者数をふやすべき、と主張します。

さて。どっちが正しいか。僕なりの見解を示します。

ロースクール関係者(首領はS藤K治大先生)の多くは、新司法試験の合格者をふやせ!と主張してきました。
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-10509984335.html#main
他方で、新司法試験合格者増員論を主張する勢力は、「弁護士も自由競争しろ」という自由競争論を論拠としておられます。

そこまでおっしゃるのなら、ロースクールも、予備試験と競争すればいいと思われます。
もっといえば、「予備試験なんか受けるより、お金を払ってでもロースクールを経由したほうがいい!」と思わせればいいのではないでしょうか。
確かロースクールができた理由は、学生が大学の授業にでなくなり、予備校に通い詰めるようになったことを受けて「予備校※2ではダメだ!俺たち大学教授がちゃんと教える!」ということでした。

しかし、実態は・・・
ま、一言でいえば、大学(教授)が所管するロースクールでは、学生を教えきることはできなかった、ということになります。

ロースクール関係者は「お金を払ってでも行きたい」と思わせられるだけのコンテンツを持たないことを自覚しているようだから、予備試験との「自由競争」はしたくない、というのが本音でしょう。

弁護士には自由競争しろと言っておきながら、他方で儲からない仕事もしろという。そして自分たちはオイシイ金づるの学生を、予備試験の合格者数を少なくして門戸を狭めてできるだけ自分たちの根城のロースクールに流入させんとする。
このダブルスタンダードっぷり。
卑しいにもほどがある。節操があまりにもなさ過ぎる。ひどい。

だから私は節度を欠いた自由競争論が嫌です。
自由競争とは言わないから、予備試験の上述の趣旨を実現するべく、ロースクールがそれに従って頑張ってコンテンツを充実させたらどうなんでしょうか。

こういうことをいうと、大学教授で占められているロースクールは、また間違った方向で頑張っちゃうんだろうな。妙にアカデミックなレポートを書きまくれと言ったり(当然ろくに添削もしないし)、予備校本はダメで学者の基本書をひたすら読めとか、ロースクールの存在意義は試験科目以外のところにあるんだから試験科目以外を頑張れとか。
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※1 予備試験合格者が増えると誰もロースクールに行かなくなる…ロースクールはお金がかかるからです。1年間の学費は、国公立で約80万前後、私立で安くて120万から140万程度からです。一人暮らしをすると生活費がプラスされるため、すべてを奨学金(借金)で賄う人も珍しくありません。つまり、お金の心配があると行きにくいと思います。
※2 予備校…司法試験予備校(辰巳法律研究所、伊藤真の司法試験塾、Wセミナー、LECが代表的)。旧司法試験時代には、大学では試験に出ることをまともに教えてくれなかったので、司法試験に本気で受かりたい学生ほど、こうした予備校に通い詰めて、講義を受けて、論文を書く練習(答案練習)をしていました。ロースクールの学生もかなり予備校を利用しているようです。このことは後日。