『無名』パンフレット

 

5月3日『無名』日本公開決定!

それを聞いた時は大喜びしました。

だが、待てよ、何故、ゴールデンウィークなんだ?

私のように地方に住む者にとって

ゴールデンウィークは

人が混む

交通費が高くなる

宿泊費も高くなる

更に家族や親戚が里帰りしてくるウイーク。

里帰りがなくても仕事や学校が休みで家族が家に居る。

3人の孫はそれぞれ塾があったり、部活があったりで

息子一家が揃って出掛けることもなく

孫の誰かが家に居る。

食事係は私なのでゴールデンウィークは

いつも留守番ウイークなのだ。

コロナ前だったら、簡単に新幹線で東京に行って

映画を観ようとなったけど、今は違う。

交通費も値上がりし、というか、割引無しで割り増しあり。

宿泊費といったら、1泊シングルで2万円。

息子が東京は宿泊費が高くて、出張に行きたがらない

同僚が増えたと話してたのを実感。

ホテルの満室が多くて、空いてないし。

それなら仙台ならどうだ。

私の住んでるところから1日何往復かバスが出ている。

連休明けに予約しようと地元のバス会社のHPを調べた。

な、な、なんと仙台行きのバスが消えてる。

令和5年のバス時刻表には載っていたのに。

乗客が減ったのか、運転士がいないのか

理由は分からないけれどとにかく仙台行きのバスが

なくなっていた。

もっと調べたら、地元のバス会社の運行はなくなって

土日だけは他のバス会社が運行していた。

でも、全然映画の上映時間とかみ合わない。

比較的近い上映館は5月24日からと5月31日から。

どちらも同じくらいの距離だがそれまで待っているのが辛い。

やはり新幹線で仙台に行くしかない。

ゴールデンウィークが終わってもすぐに出発できるわけではない。

姑の検査入院があって、それが終わらないと出掛けられない。

土地勘のある東京と違って仙台は全くわからない。

何度も行ったことはあるけれど、家族や友達との

旅行で自動車移動だったので歩いたことがない。

映画館の場所は分かるだろうか?

せっかく行くのだから、最低2回は観たい。

5月10日以降は1日1回か2回しか上映がない。

泊まるしかない。

泊まるホテルは駅近がいいか、映画館に近い方がいいか?

あれこれ悩んでしまった。

出発の日は天気も良く行楽日和だった。

観光する訳ではないのでお天気は関係ないけど

それでも晴れていると気分は良い。

新幹線でいざ仙台へ。

 

地下鉄も分かりやすくて、すぐ乗れた。

北四番丁駅で降りて、そのままフォーラム仙台へ。

フォーラム仙台は100席未満の小規模スクリーンが三会場

あって、『無名』は50席ほどの小規模スクリーンだった。

 

 

 

映画は午後1時40分から始まるので

その前に昼食を。

昼食を食べて映画館に戻り、『無名』の説明文や

写真を見ていると、若い女性が写真を撮っている。

 

邪魔になるといけないので

「どうぞ、ゆっくり写真を撮ってね」と

声を掛けると彼女は

「ありがとうございます。」と言った。

発音を聞いて中国人かなと思って

「私、王一博のファンです。あなたは?」と

聞いたら、彼女も陳情令からファンになったという。

二人でいろいろ話をしていたら

他の年配の女性も

「私も陳情令からよ」と声を掛けてくれた。

日本語勉強中だと言う中国人の若い女性と

私たち年配の日本人で話が弾んだ。

陳情令を観なければ、王一博のファンにならなければ

中国人に声をかけることもなく、

映画館で知らない日本人とおしゃべりすることも

なかった。

そう考えると推しの力は偉大だ。

 

キラキラキラキラキラキラ

 

 

映画が始まった。

ミニシアターだったので日本語が聞き取り難いと

いうこともなかった。

中国語から日本語になってもクリアでハッキリ聞えた。

俳優の話す言語が普段使っている言語ではないのも

興味深かった。

普段、広東語(香港語)で話すトニー・レオンが標準中国語や

上海語で話し、イボ君のように上海語、日本語と複数の言語を

話している人もいる。

※香港で話されている言葉は広東語といっているが

広州本来の広東語とは多少違い、広東語の方言となっている。

 

 

大抵の俳優は中国語と言っても普段は話すこともない

方言でも会話している。

母国語だけで話しているのは日本人俳優で渡部を演じている

森博之だけではなかろうか。

 

 

渡部の話している日本語は誰が翻訳しているのだろう。

程耳監督は中国語で脚本を書いているので

日本語に精通した人が翻訳しているのだろう。

日本語として変だと思えば、演じている森博之が直しているのだろうか。

イボ君の日本語を現場で教えていたのも森さんだ。

佐々木さんという日本語指導された方がいたようだった。

中国の監督、特に香港の監督は

中国語しかも各地の方言、日本語、タイ語、英語、ドイツ語

などを区別することなく会話の中に盛り込んでくる。

中国語字幕が付くので観る方は何の問題もない。

演じる方も脚本やシーンの説明があるので言葉が通じなくても

問題はないのだ。

国内にいればほぼ日本語だけで通用する日本人とは大違い。

通訳云々問題など考えることもないのだ。

 

程耳監督の言語に対するこだわりはどういうことだろうと

思った。

トニー・レオンが今回の撮影で苦労したのは

標準中国語を話さなければいけないことだったと

パンフレットに書いてあった。

 

広東語は独特のイントネーションがあるし

トニー・レオンの話す広東語(香港語)は響きが軽快で人懐こい。

親近感が湧く話し方だ。

トニーが話す標準中国語も

イボ君が話す上海語、日本語もよどみなく話しているが

本人達が普段話している言語よりも

多少温かみが少ないように思えた。

感情を相手に悟らせないようにしているのか。

クールというか、非情というか、スパイという役柄に

似合っている。

 

 

配音ができるはずなのに、わざわざ本人達に会話させたのは

そういうことだったのかもしれないとふと思った。

監督は標準中国語以外に方言を使用した理由について

「言語も非常に強みのある表現方法で観客を

すばやくシーンの中に引込むことができる」と

話している。

私は中国語そのものはよくわからないが

今、方言で話しているとか、標準中国語になったとかは

わかるので、その状況で言語を使い分けている意味は

理解できた。

※標準中国語は中国では普通話(北京語)といわれているが

パンフレットは標準中国語と表記しているのでそれに従った。

 

『無名』を初めて観た感想は「意外と分かりやすい」だった。

話がプレイバックするやり方は程耳監督を初めて観る方は

難しいと、そう思うかもしれない。

私は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』(2016年)が

面白くて繰り返し観ていたせいか、

程耳監督の手法に慣れていた。

前作よりも理解しやすい作りになっていると思う。

そして、ここ数ヶ月、月に10本ずつ映画を観てきたことで

映画の見方が少し分かってきたような気がする。

 

 

トニー・レオン演じる何(ホー)主任は

1年にわたる日本軍による広州爆撃を生き延びたと語った。

映画は重慶爆撃作戦中の様子も伝えている。

「奇妙之城」でジャンジャンの地元重慶の防空壕の

様子が映っていた。

 

 

日本軍の爆撃によって甚大な被害が出ていた訳で

私たちが習った教科書には日中戦争の詳細は載っていない。

戦争の残酷さを他国の映画で

知ることになるとは皮肉なものだ。

そういう意味でも日本でこの映画を公開する意義は

深いと思う。

どこを非難するわけでもないが、愚かな歴史を

繰り返さないためにも知ることは大切だと思う。

 

この映画をプロパガンダと書いた人もいた。

中国でプロパガンダでないものは審査を通らない。

公開できない。

公開されているものはプロパガンダと言えるかもしれない。

自由で開かれた日本とは違う社会体制の国が

中国だということを理解して欲しいと思う。

プロパガンダを含みつつも文学性や芸術性の高い

映画を提供しようとしている人達がいることを

しっかり覚えておこう。

 

私がこの映画を観た一番の理由は

トニー・レオンとワン・イーボーの演技を

絶賛したいためだった。

ところが映画を観たら、描かれている

世界が重く深く心に刺さってくる。

台湾との関係で蒋介石の国民党の

ダメさ加減を話してはいるものの

やはり日本への怒りは凄まじい。

やりたい放題の渡部を日本に返してしまうことなど

出来るはずもない。

 

 

この映画が日本で公開出来たのは

やはり歳月が過ぎたからだろう。

戦争によって人生に影響を受けた私たちの

祖父母や親世代が少なくなり、

辛い思いをする人が減ったからだと思う。

中国の人々も客観的に見られるようになり

日本人もそうだと思う。

この映画によって日中交流が深まってくることを

期待している。

 

 

映画の最後に出てくる『無名』の主題歌。

優しいイボ君の歌声が響く。

日本語字幕を付けて!という要望を見た。

でも映画館で中国語字幕を見ながらこの歌を

聞くと中国語と歌がマッチして、とても心地良い。

イボ君が伝えようとする歌の意味を感じ取ることが出来た。

 

 

 

 

 

私は中国語も分からないし、全てを理解できたとも

思っていない。

最初は感想といってもそれ程書くことはないと

思っていた。

でも書き始めたら、次々に書くことが湧いてきた。

 

ワン・イーボーの背中が大きく見えた。

正面から見ると小顔なのでスマートだが

後ろから見ると背が高くて肩幅がガッシリして

大地をしっかり踏みしめて歩いている。

こんなに頼もしかったっけ。

いつの間にこんなに大人になったんだろう。

 

中国で『無名』が公開された頃

日本のファンにとって『無名』への道は

遠く険しいものに感じられた。

この映画を国を超えて芸術作品として鑑賞したいという夢が

叶えられる日が来るとは思っていなかった。

中国映画は日本の大都市の映画館でしか見ることが

出来ないものという概念を吹き飛ばしてくれた『無名』。

 

イボ君が演じた役、叶(イエ)先生

「叶」は簡体字で日本語では「葉」なのだが

叶は日本語では「かなう」の意。

夢は強く望むと叶うのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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