「傍観者」

心に沁みる歌

 

 

 

 

 

 

 

イボ君がお気に入りだという映画を観た。

スウェーデン映画 邦題「さよなら、人類」

中国語題名「寒枝雀静」

イボ君が1ヶ月に100本観たという

映画の中に入っているかどうかは

知らない。

程耳監督お薦めなのか。

アマプラで観られるというので早速観た。

余計な先入観無しで観ようと思って

予備知識無しで鑑賞。

 

 

 

かなりシュールで玄人好み。

プロの人は絶対好きよね、という感じ。

素人の私は?と思いながら

だんだん引込まれていく。

主演の中年セールスマン2人はいつ出てくるの

と思いながら見ていくと、いつの間にか

その世界に入り込んでいる。

シーンがいくつもあって関連性が始めは分からないが

そのうち、全てが繋がっていくという。

出演者の男性達が白塗りで出てくるのも

異様ではあるが、それにも意味があるのだろう。

画面が絵画的な感じのアングルが多い。

日常の些細な出来事に見えることも

人生の中では大きな転換点だったりする。

歴史の中の皮肉なのか、悲観なのか

よく分からないが、心にグサッとくる場面もある。

中年セールスマンの二人は

劇中いろいろな出来事に対する

傍観者のようだ。

 

 

難しく考えることはないが

哲学的な志向の映画ではある。

最近のイボ君の舞台を観ていて

なるほどこういう映画から得るインスピレーションが

大切だし、実行しているのかと思った。

映画を観てから、「さよなら、人類」を調べた。

 

さよなら、人類」

原題は「En duva satt på en gren och funderade på tillvaron」

日本で最初に公開されたのは第27回東京国際映画祭

(2014年10月23日~31日開催)で

「実存を省みる枝の上の鳩」という哲学的な題名だった。

2014年スウェーデンのロイ・アンダーソン監督・脚本の映画。

「不条理のコメディ」と書かれている。

 

第71回ヴェネツィア国際映画祭

(2014年8月27日~9月6日開催)で最高賞である

金獅子賞を受賞した。

全39シーンを、固定キャメラ、1シーン1カットで撮影。

CG全盛の時代に、ロケーションはなく

巨大なスタジオにセットを組み、

マットペイントを多用し、膨大な数のエキストラ(馬も)を

登場させ、4年の歳月をかけて創り上げた。

         (ウィキペディアによる)

 

そうか、金獅子賞受賞の作品かと改めて思った。

 

 

あらすじは

面白グッズを売り歩く冴えないセールスマンコンビのサムとヨナタン。

面白グッズはなかなか売れないが、

その際に彼らは、様々な人生を目撃する。

臨終の床の老女は、天国に持って行くために

宝石の入ったカバンを死んでも放さない。

フェリーの船長は、船酔いするため理容師に転職。

現代のバーに突然現れるスウェーデン国王率いる18世紀の騎馬隊・・・。

何をやっても上手くいかない人たちの哀しくも

可笑しな人生模様を目の当たりにする。

    (TCエンタティメント 作品情報より)

 

 

シュールでグレイッシュな色彩。

出演者が中年か老年期の白塗り男性が多く

この白塗りは個別性を超越し、普遍的な人間性を

示すためのメイクだそう。

「元気そうでなにより」とか

「当然だが」とか繰り返し聞かされる台詞。

何をやっても上手くいかないが、妙に納得させられる

それぞれの人生。

18世紀のスウェーデン国王カール12世が

現代のバーに立ち寄るシーンや

 

アフリカ系の囚人(奴隷?)達が兵士によって

拷問器具に入れられるシーンなど

突拍子もないと思われる画面も出てくる。

 

この拷問器具は古代ギリシャの

「フェラリスの雄牛」といわれるのもを

もじったものらしい。

真鍮で鋳造した雄牛の中を空洞にして

囚人を入れて下から火を焚き

中でもだえ苦しむ声が雄牛の声に

似るように作られたという拷問器具。

作った者と作らせた者は共にこの

拷問器具の中に入れられた最初の人と

最後の人という話が伝わっているが、

実際にあったものかどうかは定かではない。

この映画で拷問器具に書かれている文字は

公害を発生したことのある鉱山会社を

意味しているともいわれている。

 

時代は変わっても人間のやっていることは

ほとんど変わっていないということの示唆なんだろうか。

 

実はこの映画を観る前に

「シンドラーのリスト」を久し振りに観た。

 

 

 

1993年公開なので初めて観たのは随分前だった。

その時は映画の中の出来事として見ていたような気がする。

それが後にポーランドに行って

実際にアウシュヴィッツ収容所博物館を見てから

この映画を見ると、映画の中に出てきたことが

本当にあったことだと思い知らされる。

数部屋に山積みされた膨大な数の洋服、鞄、靴

髪の毛、眼鏡、歯ブラシなどなど全てが

ユダヤ人から剥ぎ取られたものだった。

ガス室もあった。

 

「さよなら、人類」で囚人達が拷問器具に

入れられるシーンを見たら

アウシュヴィッツのことを思い出した。

兵士達が囚人を追い詰めるために

猟犬を連れているのも重なる。

辛いと思いながら見ていくと

場面はやがて正装の老人達が

並んで出てくるところに変わる。

ワインを飲みながら、無表情でジッと

見ているのは拷問器具なのか。

ワインを注ぐウェイターはヨナタンだ。

 

場面が変わって自室でヨナタンは呆然としている。

今のことは現実なのか夢の中のことだったのか?

サムが訊ねると

「恐ろしいことが・・・。

私もその中に・・・。」

「夢の中だろう」とサムがいうと

ヨナタンは

「現実のような気がする。

とても恐ろしい。

恐ろしくて口に出せない。」

「誰も神の許しを請わない。」

 

最後はバス停なのか、皆何かを待っている。

水曜日なのに木曜日と勘違いしたおじさん。

周囲の人々に水曜日かと確認する。

鳥の声がして、映画は終わる。

 

 

原題の「実存を省みる枝の上の鳩」というのは

ブリューゲルの絵画がヒントになっているそう。

映画の最初に博物館で熱心に鳥の剥製を

見学するおじさんが出てくるが

その原題を示唆しているのか。

鳥を見ているようで実は鳥に観察されている

人間の話なのか。

原題がどうして「さよなら、人類」という

邦題になったのか興味の湧くところではある。

 

 

イボ君が映画は「精密に彫刻するもの」と

語ったというが、この映画は4年の歳月を

かけて綿密に構築されたシーンが

刻まれた傑作。

 

 

 

イボ君は「無名」撮影時、程耳監督から

「ゴッドファーザー」を含む多くの映画を観るように

勧められ、映画の見方や方法を教わったということだった。

「ゴッドファーザー」が中国語では「教父」と書くことを

知って、面白いと思った。

「無名」撮影時、「海上花」という映画の

食事シーンを見るようにいわれたことも話題になった。

 

「ゴッドファーザーⅠ、Ⅱ、Ⅲ」

 

 

 

 

「インクロリアス・バスターズ」

2009年

 

 

 

「パルプ・フィクション」

1994年

 

 

「バットマン」なども観たらしい。

 

バットマンは14作ありますからどれを観たんでしょうね。

ジョーカーの出てくる作品だったのかな。

 

「インクロリアス・バスターズ」と「パルプ・フィクション」は

クェンティン・タランティーノ監督の作品。

各種の賞を受賞している映画界の鬼才です。

 

 

 

最近観たらしいのは

「さよなら、人類」の他に

 

「裁かれるのは善人のみ」

題名の通り、善人だけが辛い思いをするロシア映画。

 

 

 

 

「オール・ザット・ジャズ」

 

 

「21グラム」

 

 

この映画でショーン・ペンはベネチア国際映画祭で

最優秀男優賞を受賞。

 

「デッドマンウオーキング」

 

 

 

など。

いずれも少し古い映画ですが、国際的な賞を

受賞した優れた作品。

若いイボ君がこれらの映画を見てどのように

感じたのだろうか。

そして、それをどう演技に活かしていくのか

今後の活躍が益々期待されます。

 

 

 

 

 

 

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