ムカイックシンドローム2 | ニートの極み ~neet-no-kiwami~

ニートの極み ~neet-no-kiwami~

ニートを続けて早26年。

ニートのプロが、にわかニートとの格の違いを見せ付けてやるさね。

またせたなお前ら…

とうとう俺の高校時代に隠された裏話を語る時が来たな…


話は前回のムカイックシンドロームから少し後のことやし。

女神に言われて6ムカエと戦い勝利を手にした俺は、束の間の平穏を楽しんどったし。

無事高校に受かり、バイトもはじめ、今度こそ青春を堪能しようとしよった。

しかし、それもある日音を立てて崩れてしまったし。

バイト中の俺のもとに、再び女神様が姿を現したさ。

そして女神はこういった…

「あなたが前回6ムカエを倒したことで、彼らに宿っていた力は無事宇宙に還元されました。しかし、一つ問題が発生したのです…。」
神妙な顔持ちの女神。
「本来ならその力は、各世界に平等に振り分けられるはずだったのですが、予期せぬ事態が発生しました。なんと6人分の力が1つとなり、新たな「世界」を造ってしまったのです。…8つ目の世界を…!」
「マジかよ…  ようわからんけど…」
「そして驚くべきことにその力は世界だけでなく、新たな「ムカエ」を生み出したのです。あなたにお願いします。その「ムカエ」を始末し、8つ目の世界を消してください。」
「…って言われてもなー。俺青春したいし…。そもそも、1人なら神様たちでどうにかなるレベルじゃないとや?」
「…それがそうもいかないのです。確かに1人相手なら数で攻めればどうにかなるかもしれません。しかし強力な結界により、私たちは近づけません。しかしあなたなら、やつと同一存在であるあなたならその結界を無視することができるはずです。」
「なるほどやし。」
「やつは近々、自分の世界以外の7つの宇宙に対し攻撃を宣言しています。他の世界を全て滅ぼし、自分の世界に力を凝縮しようと考えているのです。おそらく狙いは私たち神々を滅ぼし、この全宇宙を支配下に置くことでしょう。」
「マジかよ。」
「7つ分の宇宙の全パワーを手にされたらいくら神々でも太刀打ちできません。そうなる前に…お願いします。」
「…わかったし。正直嫌やけど、この世界が無くなったら元も子もないもんな…。」

俺は涙をのんだ。
俺1人が犠牲になれば、みんなが幸せに暮らせる。
それでいいじゃないかって、自分に言い聞かせたし。
…俺一人の犠牲でな。

「それでは、やつの世界の入り口に転送します。…いいですか? 敵は一人ですが決して油断は禁物ですよ?」
「任せロシアやし。」

次の瞬間、空間が歪み、俺は別世界の入り口の前にいた。
「…本当に大丈夫とかよ?」
入り口にゆっくり手を伸ばす。
…いけたし。
問題なく通行することができたし。

そして侵入した世界は…
「なんやここ…」

視界一面に広がる荒野。
吹き荒れる砂嵐。
まるで北斗の拳みたいな世界が目の前にひろがっとったし。

そんな景色に気を取られていた俺の背後に突如現れた殺気!

気づいた時には既に遅かったし。
俺の身体は激しい痛みに襲われ、宙に舞っていたし。

「やばすぎるぞなもし…!」

受け身を取ろうとした刹那、再び叩き込まれる打撃。

「…!?」

速い。速すぎる。
あの6ムカエすら軽く凌ぐ速度に、俺は度肝を抜かれたし。

「クク…その程度か!? ムカエ・ユージロウ!?」
そう言って俺の前にようやく姿を現したのは…
「俺はムカエ・ザ・クイックマスター。地獄の超特急に御招待だぜ!」
そう言い終るやいなや、眼に見えないほどの速度で急接近してくるムカエ・ザ・クイックマスター。
反応できず、俺は攻撃をモロに食らってしまったし。
「こんなもんか!? ムカエ・ユージロウ!」
吹き飛ばされる俺の耳に響く声。
悔しいが、見えなかったのは事実やし…。
数100メートル吹き飛ばされ岩に激突した。
…幸い思ったよりダメージは無いようだった。
体勢を立てなおし、反撃の糸口を考えていたその時だった。

「…弱いな。」
「なっ…?」
後ろから突然の声。
回り込んでいたというのか!? 既に!?
慌てて振り向き構えた俺が見た物は…
「…お前は!?」
そこにいたのは、先程のムカエとは明らかに違っていた。
そしてそいつは名乗った。
「…俺は、カラミティブラスタームカエ。」
「な…に…?」
敵は1人じゃなかったのか?
そう考え困惑する俺にそいつは言い放った。
「敵は1人のはず…。そう考えているな?」
「…俺はそう聞いていたし。」
「確かにそれは間違いではない…」
「なに?」
「実際に…1人なんだからな…!」
そういうと相手の身体が光に包まれる。
1人だと…? まさか…
そして光の消滅と共に現れたのは…
「これが俺の真の姿。エターナル・ムカエだ!」

「…なんだと?」
俺の眼の前に現れたそいつは、さっきまでの2人とはまた違う姿だった。
「7人分の力を持つ俺は、7つの姿に変身できるのさ!」
「マジかよ… チートみたいやな…」
「さて、デモンストレーションは終わりだ…お前には消えてもらう。そしてお前の力もこの俺が貰ってやるよ!」
「…なぜそんなことを?」
「…神を滅ぼすためさ」
「なんで神を滅ぼすとやって?」
「…話す必要はない。さあ! いくぞ!」

…そして戦い始めた俺達。
しかし明らかに俺の方が劣っていて、気がついたらぼっこんぼっこんにされてたし…。
7つの形態をころころ変えやがって、ふざけたやつやったし。ずるすぎやろ…。

戦いから一時間くらい経った時。俺の命の灯はまさに消えようとしていたし。

「ふん、やはりその程度だったか。さあ、トドメといこうか!」
ああ、俺もう死ぬとかよ…。短い人生やったし…。
走馬灯が俺の頭を駆け巡る。
…エリブ…  お前に会いたかっ… た…
エリブの事を考えたとき、自然に涙がちょちょぎれたし…。
泣いてるのか… 俺…

「さよならだ」
そしてまさにトドメを刺されようとしたとき!
「…なんだこれは!?」
俺の身体が虹色の光に包まれとったし…。
何が起こってるのかわからねーと思うが俺にだってわからんし。
その時、俺の頭の中に懐かしい声が響いてきたし。

「エリブ…?」
まるでエリブが呼んでいるかのような…そんな感じやった。
「…そうだ、俺には俺の帰りを待っているエリブがいるんだ…」
不思議と体が軽い。立てる。いける。
「馬鹿な!? 何故立てる!?」
「…俺はまだ死ぬわけにはいかねえんだぞなもし!!!!!」

「くっ… この俺が… ビビってるだと!?」
「…終わらせてやろう。喰らえ。『ムカエンド』」
「この力は… まさか… ぐあああああああっ!!!!!!!」

次の瞬間、エターナル・ムカエは上半身だけの存在になっていた。
なんて素晴らしい力だろうか。
「…まさか…この俺がやられるとはな…」
「…終わった。これでこの世界も消滅するだろう。」
「待て、俺の話を聞いてくれ…」

そして頼んでもいないのに語りだすエターナル・ムカエ。
しかし奴の口から語られたのは驚きの事実だった。
神々が俺達ムカエを消そうと計画していること。
前回の戦いは、潰し合わせて弱らせたとこを攻める計画だったこと。
しかし前回の戦いでは、俺が圧倒的に強すぎたために手を出せずにいたこと…
そして… 今回のこの戦いは、仕組まれたモノだったという事。

「奴らはお前をつぶすため、この世界と俺を造り出した…。しかし、この俺が従順な傀儡にならなったことは計算外だったようだ…」
「つまり、俺を消すためだけに仕組んだという事か…」
「そういう事だ…。しかし俺はそんな奴らが許せなかった…。命を道具のように扱うやつらが…! だから俺はお前から力を奪い、奴らに復讐しようとしたのさ」
「…なんてことだ。俺は利用されてたのかよ…」
「ムカエ・ユージロウ… お前に俺の力を託す。これで… 奴らを…」
そう言って俺に触れたエターナル・ムカエから力が流れ込んでくるのを感じた。
「力が溢れてくるのを感じる…」
「ああ… それこそ俺の望んでいた力… オーバー… へヴ…ン…」
最後の力を振り絞ったのだろうか。
俺に力を渡し切るとエターナル・ムカエは息絶えてしまった。
「…天を超える力、オーバー・ヘヴン…か…」
そう呟き俺は天を見つめる。
「…いくぞ。」

場所は変わって天界。
光の速度を超えた俺は、一瞬で天界へと移動していた。
そしてそこで俺を待っていたのは…

「ムカエ・ユージロウ。奴を倒したのですね。」
「ああ…」
「…話を、聞いてしまったのですね」
「…ああ」
「…そう、本来ならあなたは奴に負け、そしてあなたを倒したエターナル・ムカエを分解し、全ての力を返してもらうつもりでした。しかし、奴が反逆を起こすことは想定外でした」
「それで、どうするとよ? 俺を、消すとか? しかし女神様。今の俺にはあんたでさえ…」

「…これでもですか?」

そう言った女神様の背後に出現した無数の兵たち。

「…それは…?」
「今度のは成功ですよ。エターナル・ムカエの劣化クローンです。オリジナルほどの力はありませんが、これほど揃えばいくらあなたでも…」
「…これだけか?」

そう言って俺は、究極の技、ムカエンドを発動させる。

「…終わったようだが」
「な… そんな… まさか…!?」
「…手を引け、さもないと…」
「くっ…  いきますよみなさん!!」
突如として奥から押し寄せる人の群れ。
恐らくあれが神々なのだろう。
だが…
「…残念だよ、女神様。」

次の瞬間、世界は静寂に包まれていた。

「こんな形でお別れだなんてね…」


こうして神々を倒した俺は、元通り平穏な時間を取り戻した。
しかし驚いたことに、地上に戻った俺を待っていたのは3年の月日の流れだった。

「天界か、8つ目の世界か… どっちかの時間の流れが速かったみたいやな…」
俺はまたしても青春を逃してしまった。
高校も退学扱いになっていた。ショックやし。

しかしそれでも俺の得た物はとてつもなく大きかったし。
「そうだ、エリブとN村辺りに電話してみっか! 飯食いに行きたいし。」
そう、俺のいるこの世界を、みんなのいるこの世界を守れたのだから。



『お客様のおかけになった番号は、現在、使われておりません…  番号をお確かめのうえ…』



…これが俺の高校時代の事の真相やし。
ま、色々犠牲になったし、辛かったけど、お前らが幸せなら俺はそれでいいとさね!

しやわせ!!!!!  


…しやわせ…


だけん俺は別に引きこもりよったわけじゃないとぞ?
お前らが知らないとこで、俺はいつも戦い続けよることば忘れんで欲しいし。
今も、そしてこれからも…し。

あ、勘の良い俺のファンは気づいたかもしれんけど、この体験をもとにして書いたのがムカエ戦記さね!!!!