この「ズーム」の性能の数値はカメラマンはほとんど気にしない。なぜなら、よっぽどの事が無い限りはズーム機能を限定的にしか使用しないからだ。
それはなぜか。
理由は、ズームを使用して撮影すると、ズーム時にシビアな調整を要求されてしまうからに他ならない。
まず第一に、ズームすればする程ブレが大きくなるということだ。ズームしないような状態では全く気にならないブレであっても、ズームすると大きくブレが出てくる。
その原因として、人間である以上「呼吸」という行為を行うわけで、手持ちでの撮影の場合はこいつからは逃れられない。であるから、カメラマンがどうしても手持ちでズームしなければならない画を撮る場合には、大抵は「呼吸数を最低まで抑える」という手段を取る。
ただ、普通のご家庭使用するカメラとカメラマンが使用するカメラとでは、若干の違いがあるので、機能的に不可能な調整も多い事だけは了承願いたい。
通常ご家庭で使用するカメラの場合、ハンドグリップのやや上で、人差し指と中指が当たる場所にズームコントロールが付いている事と思う。ズームするスピードも、押し込みが深いか浅いかで2~3段階ぐらいが一般的で、大体の倍率が液晶モニタ上に表示されてるという感じだろうか。
これが、カメラマンが使用するカメラ(やや語弊があるのでハイエンド機や業務機)の場合、ズームに関してはレンズ前方に「リング」と呼ばれるアナログな輪っかが付いており、これを時計回りに回せば引き、反時計回りで回せばズームにといった具合(一眼レフカメラのレンズのズーム調整と似たようなもの)。又、リングには細かくレンズ倍率の「mm」が刻んであり(無いものもあるが)、より早いズームや引き、思い通りのタイミングなどを取れる。後々述べるが、同時にフォーカスも「リング」で調整する場合が多く、ズームリングに並んで設置されているケースが一般的。つまり、ズームリングをコントロールしながら、同時にフォーカスリングを別の指で回してやるわけだ。自然とカメラ自体をホールドする形になるので、比較的ズームしてもブレにくい利点がある。
もちろん、通常のカメラと同じようにズームコントロールも付いているが、設定でズームスピードを固定することができ、非常にゆっくりと一定スピードでズームしたい場合などに活躍する。この場合、カメラ自体の自重があれば安定した画が可能。
とはいえ、付いていない機能をあれこれ書いても始まらないので「どうすりゃいいのさ」の部分をお話しますと、
まず第一に、「極力ズームは多用しない」に限る。引きの画なら引きの画のカット、ズームならズームの画のカットを撮って、編集段階で繋ぎ合わせた方が無難である。手持ちカメラで子供などを遠い位置から狙ってズーム状態で追うなどというのは、本職のカメラマンでもキツい。特に対象物が移動する場合はフォーカスとの兼ね合いもあるので更に難易度は増す。補足だが、カット割をして撮る場合には、前後に何秒か余分に撮すようにしないと編集時に泣きます(録画ボタンを押す時に多少ブレるので、必要な画の直前直後にブレがあると厄介)。
第二に、「ズームするなら三脚を使用」。もう究極ではあるんだけれど、初心者なら絶対に三脚推奨。最近では持ち運びに便利なタイプや場所を取らないタイプなんかもあるんでだいぶ便利。三脚さえ使えばもうズームなんで怖くないってなもの。似たような物で一脚という脚が一本のものもあるが、使い慣れていないうちの使用は転倒させるだけなのでお勧めしない。どうしても手元に無い場合は、人工物の上にカメラを乗せて三脚がわりに使用する。
第三は、「感覚的にズームを多用しない」。初心者さんの映像を見ていて思うのは、撮影時に全てを液晶モニタの中だけで確認しているんだろうなということ。ことにズームに関しては通常の人体構造の中では起こり得ないものなので、様々な確認作業がズームを使用してになりがちである。
「あれ何だろう」「ここはどこです」「誰々がいました」ナドナド、物凄いスピードでフルズームして画面はブレまくりだわフォーカスはボケボケだわ、全くいいことなし。特に、視力の良く無い人は往々にしてズームを使って物を見ようとする傾向が見られる。
これを改善するには、液晶モニタ上で全てを確認するのではなく、まず眼球だけ動かして目線を液晶モニタから外し、肉眼で対象物を確認し、対象物との位置関係を把握する。もしそれがズームしてでも欲しい画なのであれば、ズームはゆっくりと。
撮影している側と視聴する側では根本的に感じる速度感覚が違う。そもそも、視聴する側はそんなに早いズームは見慣れていないので需要は無いし、何よりもオートフォーカスが絶対に追いつかないので画が不自然なるのだ。逆に言えば、高速ズームを成功させたいならリングによるマニュアルフォーカスをマスターしなければならない。又、ズームの速度に完全に遊ばれ、対象物が画から外れてしまう可能性も高く、良いことなどは何一つない。
最後にもう一つ付け加えるなら、ズームの深さはせいぜい液晶モニタのズームバーの三分の一程度にしておく事である。引の状態でカメラを1センチ動かしてもさほど影響しないが、フルズームでの1センチの動きはおそらく制御しきれない。自分の制御できるギリギリのラインまでにしておく事が大切だ。
商業用の撮影と違って、一般の人がビデオカメラで撮影するものはリテイクできない。写真とも違って、その画を取りこぼせば2度と撮影できない。だからこそ、確実なラインで撮るに越したことはないのだ。
