ジャガーとマサル | 今のメラゾーマはない

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俺にとって思い入れの深い漫画の一つに「ピューと吹く!ジャガー」があります。
「マサルさん」で一躍有名になったうすた京介先生が週刊少年ジャンプで一昔前まで連載していた、
毎回9ページぐらいで巻末に掲載されているという特殊なギャグマンガでした。
俺がこの漫画の好きなところが、その芸風と世界観なのです。

ジャガーのギャグで多いのが「人間の汚い部分」や「人付き合いでよくある気まずいシーン」
などを取り入れた笑いです。
これはうすた氏本人もこの漫画のメインとしている要素なのではないかな、と思います。
で、これがわかるわかるあるあると、イヤに共感できてしまうところが面白いのです。

具体例を挙げると、どの巻のどの話とかは覚えてないのですが
ジャガーがある笛関連の道具を探していると言ったところ、高幡不動くんがそれに食いついてきて
話が盛り上がってきて「それ、うちにあるから是非見に来てください、家に招待しますよ!」
と、不動がテンション上がってジャガー達をマイホームに呼ぶ展開になる。
しかしその後のジャガーの一言「なんかめんどくさくなってきた…」
これがもう、見ててつらくなるぐらいわかりすぎて笑ってしまいました。
あるよね、なんか変に盛り上がっちゃって「じゃあ今から行くか!」っていうテンションになって
いざやるとなると急にめんどくさくなるっていう。

あとは、飲み会だか歓迎会だかの話で
ピヨ彦が座ったところがハズレで、向こうでワイワイ盛り上がってるところに混ざれない人の輪に
入っちゃって「陰気なとこ座っちゃったー!」っていうシーンとかもリアル。
飲み会って座る場所ミスると一気に楽しくなくなるからね。

で、自分がジャガーにかなり思い入れを深めるようになった大きな要因が
このマンガを読んでいる当時、自分が大学生だったからです。
ジャガーの舞台が専門学校(というかスター養成学校)だから
自分の生活に妙にシンクロしてしまう世界観だったんですね。
たぶん、リアルの専門学校に比べるとジャガー達の通うガリプロはかなりヒマそうなので
感覚は大学生に近いと思います(ギャグマンガだから細かい設定は無さそうだけど)。

なんか色々リアルなんですよね。あー暇な大学生ってこんな感じ、みたいな。
たとえば、ジャガーとピヨ彦が暇な時間があってとりあえずゲーセンに寄るシーンがあるんだけど
そこでUFOキャッチャーとかゲームコーナーとかなんとなく、それらのゲームをプレイするでもなく
見てまわってゲーセン内一周して「うん…」って感じで何もせずゲーセンを出る、
みたいなシーンがあったと思うんですがこことかすごい、あるあるだなあと思います。
大学生活の自由な感じとかなんかヒマな感じってのが自分はすごい好きだったから
この漫画の世界観と照らし合わせてしまうんですよね。
「飯、食ってく?」とか何気ない会話も結構出てくるんですが、そういうのも好き。

それに大学生って人間関係に多感な時期で、人間観察とかもよくするようになるから
そのへんをまた自分と照らし合わせてしまう。
この漫画を見た感じ、うすた先生もかなり人間観察が好きなのではないかなあと見受けられます。

個人的な話ですが、こういう風に、妙に自分の生活とか考えとシンクロする部分が多くて
大学生活が好きだったからジャガーを読むと大学のことを思い出すようになったりしちゃって
それで思い出の漫画となってしまったわけですね。
大学生の人にオススメしたい漫画です。


ところでジャガーのギャグは、はっきり言ってしまうと「すごいよ!マサルさん」に比べると弱いです。
というか、マサルの頃が凄すぎた。あの時のうすた先生はノリにノッてたんだと思います。
マサルはシュール、不条理系のギャグ漫画で、当時はその手のギャグ漫画が少なかったので
マジでマサルはギャグ漫画界に革命を起こした作品だったと本気で思ってます。
ってか実際そうだと思う。
たぶんだけど、マサルが世に出てからシュールなギャグ漫画が増えた気がする。
もう何から何まで面白い。意味不明でありながら綿密に笑いのツボを計算しつくされているギャグの数々。
言葉のチョイス、ボキャブラリーの豊富さも神がかっていて
マサルを読んでからしばらく、他のギャグ漫画が全てつまらなく見えてしまった時期があった。
そういう人は、もしかしたらけっこう多いんじゃないでしょうか。
余談ですがうすた京介短編集「チクサクコール」にマサル連載前の読切作品などが収録されていて
初期からもシュールギャグを中心にやっていました。どれもすごく面白い。
特に「男一匹セニョリータ」は見事。最初から最後までずっと笑える。

しかし俺が思うのは、ジャガーとマサルは比べちゃいけないんじゃないか、ということ。
同じ作者が描いてるからどうしても比較されてしまいがちですが
実際、この2作品の芸風はほとんど別物のような気がします。
ジャガーもベースとしては不条理ギャグとかシュールギャグ漫画ではあると思うんですが
どちらかといえば前述したように人間の汚い部分痛い部分を笑うテイストをメインにしてる感があって
マサルや武士沢レシーブなどと比べるとシュール要素はかなり抑えられています。
そもそも主人公のジャガーが、マサルや武士沢と違って普通にツッコミ入れたりするしね。
主人公がちょっと常識ある時点で(それでもジャガーはかなり変人だけどね)毛色が違いますよね。

だからジャガーのギャグにはジャガーのよさがあるんですね。
マサルとは違った楽しみ方がある。
それにジャガーの魅力はその個性的なキャラクター達にあります。
実際、キャラクターづけはマサルの頃に比べてすごく上手くなってると思います。
ここまでくると、マサルとジャガーはほぼ別人が描いてるようにさえ思えるんですよね。

もうだからいっそ、ジャガーとマサルは別の作者が描いてる、ぐらいに思ったほうが
どちらの作品も純粋に楽しめるでしょう。
むしろ、俺はそうしてます。
でも、どっちのうすた先生も好きです。