書評無情の響きあり。 -4ページ目

常に諸子の先頭に在り―陸軍中將栗林忠道と硫黄島戰

留守 晴夫
常に諸子の先頭に在り―陸軍中將栗林忠道と硫黄島戰

先日のこちら を経て読。


題名は、硫黄島の戦いで総司令官を務めた陸軍中将栗林忠道が

約一ヶ月間の孤島での激しい戦闘の後、陥落が決定的な状況で

自身の率いる軍に出した最後の命令

「一、戦局ハ最後ノ関頭ニ直面セリ。

二、兵団ハ本十七日夜、総攻撃ヲ決行シ敵ヲ撃摧セントス。

三、各部隊ハ本夜正子ヲ期シ各當面ノ敵ヲ攻撃 最後ノ一兵トナルモ

飽ク迄決死敢闘スベシ 大君×××(不明)テ 顧ミルヲ許サズ

四、予ハ常ニ諸子ノ先頭ニ在リ。」

のフレーズより引用されている。


本書は、硫黄島の戦いについて というよりも

栗林忠道という「品格ある日本人」を通じて、

 日本人&日本文化とは?

 リーダーとは?

といったテーマを鋭く抉っており、現代の日本人においても大変深い

示唆を与えてくれるものとなっている。


印象に残ったのは

在米経験も長く「アメリカとだけは戦うな」主張し続けた帝國陸軍屈指の

知米派の栗林が、任務が命ぜられると 米国軍人に“太平洋戦争に於ける

最も優秀な日本人指揮官”(先日も記したが硫黄島は米軍の死傷者数が

日本軍のそれを上回った唯一の戦闘)と評されるほど、徹底的に戦い抜いた

日本人男前的サムライ魂である(カッコよし!)。


本書からも窺い知れるが

とにかく硫黄島の戦いは相当壮絶なモノであったようなので

その点にスポットをあてたものも映画 封切の前に読んでみたいと思う。



地下鉄(メトロ)に乗って

浅田 次郎
地下鉄(メトロ)に乗って

浅田次郎と言っても正直「鉄道員(ぽっぽや)」しか接したことなかったが、

キッカケをもらい読。

“すべての地下鉄通勤者に捧ぐ”(ワタシは違いますが、、、)という言葉で

はじまり、地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景、、、 

という展開の作品。

読後感は

父と息子の確執、母と娘の愛、家族のあり方、結末が見えない恋愛、と

重いテーマばかり盛り込まれているにも関らず、

何となく爽やかで、かつ ほんのり温かい。

“タイムスリップ”というファンタジックな要素と 人の心が通った古きよき

“ニホン”とそんな時代の心を持った登場人物を巧みに描いている故?

これが浅田ワールドなのだろうか。

読み手により心に残るものも大きく違う作品と思うが

ワタクシの場合は クライマックス?で この曲  がバックに(アタマの中で)

流れてきた(少しロマンティック過ぎるか、、、)、

とにかくすっかり感情移入させられてしまい、

本作映画 はもちろん著者の他の作品も是非読んでみたいと思うものであった。


以上。

父親たちの星条旗

父親たちの星条旗1


クリント・イーストウッド監督による硫黄島2部作の1作目、

米国サイドの「父親たちの星条旗」。


ストーリーは、太平洋戦争での激戦の一つであった硫黄島の戦いにおいて

米国勝利の証として星条旗を掲げたアメリカ兵に纏わるエピソードについて。



一応、戦争映画というジャンルになるのであろうが、

むしろヒューマンドラマという色合いが濃い。

終始何とも物悲しい展開ではあるが、実話を元にした話だけに

受入れるしかない、、、まさにこれこそ人間ドラマ。

同監督の前作が「ミスティック・リバー」と言われて作調頷ける部分あり。



映画終了後、日本側作品「硫黄島からの手紙」の予告編が

流れたが、こちらは期待高まる。

渡辺謙の力のこもった「予ハ常ニ諸子ノ先頭ニ在リ」というセリフ、

カッコイイ!

ちなみに硫黄島戦は 米軍の死傷者数が日本軍のそれを上回った

唯一の戦闘とのこと、これを機に少し深追いしてみたい。




MOVIX六甲にて観賞。





きらきら研修医

織田 うさこ
きらきら研修医

我らが(?)アメーバブログ から書籍化された一冊、

1月からTBS系でのドラマ化も決定 とのこと。


これから病院に行く際は先生(医者)を見る目が少し

変わりそう(良い意味でも、悪い意味でも)。


何はともあれ 

一素人(プロの物書き ではないという意味です)の

書いたものが、人気ブログ→書籍化→ドラマ化 と

なっていくのは ブログ誕生以前では考えれられないこと、

何度考えてもやっぱりスゴイですね。


理屈はいつも死んでいる

高原 慶一朗
理屈はいつも死んでいる

ユニ・チャームの創業者で現会長の高原 慶一朗の著書。

題名に魅かれて購入。


「仕事ほど、自分を磨き、人間性を高める手段として格好のものはない」

とのこと、必ずしもそうとは言えないこともあるかも分からないが、

仕事に没頭して身を投じれば大きく自己成長できるというのはその通り。


・二元論ではなく多面性を大切にする

・臆病な人ほどリスクに強い

などは大いに共感。


仕事をする上での原理原則が書かれており

新入社員からマネジメント層まで幅広く読める一冊。
 


マーケティング2.0

マーケティング2.0

積読していたものをようやく読む。


「Web2.0に代表される技術を含む環境変化で企業のマーケティング手法全体への

影響を俯瞰的に整理して、最適化モデルの構築を目指す。」という テーマではあるが

特段新しい発見なし。


同時に購入した「Mobile2.0 」も早く読まないと

“2.1”とか“2.2”になってしまいそう、、、?


混沌 新・金融腐蝕列島&上・下

  
高杉 良
混沌 新・金融腐蝕列島<上>
混沌 新・金融腐蝕列島<下>

経済小説の巨匠 高杉良 著。
映画化された 金融腐蝕列島 呪縛 の続編。
文庫本化されてたので購入。

長らく大蔵省の護送船団方式により守られてきた金融機関が
金融ビッグバンの本格化に伴い提携・再編を余儀無くされた。
本書はその時代の大手銀行同士の合併の裏側に潜む組織間の

権力闘争、サラリーマン社会を一人の銀行員の主人公を通じて
リアリティ溢れる内容で描いている。

Amazonのレビュー では酷評されているものの、
この小説の舞台となっている当時に 銀行員(本書にも登場する
合併メガバンクの一つに勤務)であったワタクシとしては、
その いかにも “銀行”といった 何とも言えぬカルチャーが
リアルに思い出され、昔(?)を懐かしむ意味でも面白かった。
(きっと“元”銀行員という立場でないといろんな意味で
面白く読めなかったであろう)。

しかし、いつもながらの著者の取材力は圧巻
経済小説の面白さはそれに基づいて成り立っていると言える。


本書とは直接関係は無いが、読み進めるにつれて

元ラグビー日本代表監督で三井住友銀行の取締役だった

宿沢広朗 (先日急逝)の言葉

「『私はサラリーマンが嫌だ』という人は多い。その理由は疲れる割に

自分の存在感が薄いことだろう。サラリーマンの醍醐味(だいごみ)は

『組織の長として自分の思うように組織を動かせる』ことに尽きる。

それを経験せずにサラリーマンを論ずることはできないと思う。」


が思い出された。 

率直に言うと、

サラリーマンの醍醐味としては宿沢氏の言葉に同感できる部分もあり、

そういう意味では本書に登場する各人の行動、発言は頷けるところ

ありか、、、。


クライマーズ・ハイ

横山 秀夫
クライマーズ・ハイ
先日NHKでドラマ化 されてたので紹介。
社内研修旅行で 本書の題材の地である
群馬に行く際に、旅の友として購入。
1985年、群馬県御巣鷹山で日航ジャンボ機墜落事故が発生。
この未曾有の大事件に対した地元新聞記者たちの興奮と混乱の
一週間を描いた小説。
著者の横山秀夫 (御存知の通り映画化された「半落ち」などの著者)は
当時、群馬県の上毛新聞の記者であり、実際に真夏の御巣鷹山に登り、
約1ヶ月半にわたり事故現場を取材したらしい。
実在した事故をテーマとした小説ではあるが、この事実を
聞くと、さらにノンフィクションの色が濃く思わず引き込まれる。
事故の発生した新聞社の様子と、主人公その他周辺人物の人間ドラマ、
それぞれ臨場感豊かに書かれており飽きない。
キーワードは「下りるために登る」、読後感は暗さだけでなくむしろさわやか。
個人的には、少し間を置いてからまた読んでみたい、と思えるとても良い作品だった
話は本書からズレるが、
この事故が起こる一週間前、夏休みの子供旅行でこの年に開催された
つくば科学万博に行き、その帰りに事故機と同様の羽田→大阪の
日航ジャンボ機(便は分からず)を利用したということもあり、本事故は
小学生ながら大変ショッキングな出来事だった。
ということもあり、山崎豊子著「沈まぬ太陽 」も自分の中の繰り返し読む一作品。

農! 黄金のスモールビジネス

杉山 経昌
農!黄金のスモールビジネス

日経新聞の日曜書評で紹介されていた一冊。
田畑に囲まれて育ったワタクシとしては、農業ビジネスに
大いに興味あり ということで 購入。

先端外資系企業の管理職であった著者が

過去のビジネス経験を生かし農業経営を17年間やると

どうなるか?という内容。


大規模農場経営をイメージしていただけに
スモールビジネス(著者は夫婦2名でブドウ農園を経営)
として取組むことが成功するミソとあったのは新鮮。

著者曰く、
農業で成功するためのベストミックスは


経営管理:マーケティング:モノつくり=40:40:20

この40の部分で著者のビジネスマンとしての

経験が生きていると。


そうは言っても本書の内容はブドウ作りの専門的(?)なコトも
多く書かれており(20のモノつくりの部分、20がこんなに深いの

であれば、、、)、農業の奥の深さを感じざるを得ない。
でもだからこそビジネスとしてチャンスありということですね。


農業ビジネスに興味のある人にはおすすめ。


経営パワーの危機


三枝 匡 経営パワーの危機―熱き心を失っていないか



社内幹部研修の課題図書としてノミネートされる。
著者はミスミグループCEOの三枝匡氏。

「戦略プロフェッショナル」

「V字回復の経営」  

も読みましたが、
ワタクシ的には 「V字回復の経営」  が一番オモシロく
読み応えがあった。

とはいえ、本書からも学ぶべき点あり。
現在の自分の考えを一つ拡げてくれました。
 ・新しい分野に取り組みつつも、足下の軸をぶらさず。
 ・何が大切か(競争優位性を保つモトとなっているか)をしっかり共有しながら

といったところです。

拡大するときは新しい分野に目が行きがちですがその順番を

間違えたらダメですね。勿論勝負する場面もアリですが。
(↑後から読んで自分でも何のことか分からなさそう)