「ねえ、お姉ちゃん。何してるの!?」と琴音に聞かれ「バースデーカード書いてる」と答えたら「誰の!?」と聞かれた。
いや、宛名書いているし・・・。
「見て分かるでしょ」と見せたら「いいなー」と悔しそうに言う。
・・・琴音が欲しがるとは思わなかった。
家族って意外と身近な様で遠いかもしれない。
「そっか、琴音も欲しかった!?」と遠慮なく聞いたら「違うよ」と拗ねる。
まあ、琴音の誕生日から2ヶ月も経ってるもんね。
4月の琴音の誕生日は新学期という事もあり、毎回おざなりになってしまう事が多い。
特にお母さんが妊娠や出産をしていると・・・。
今年は俊樹が生まれているから、琴音の誕生日は・・・私も記憶が曖昧だわ。
きちんと祝ったけど、なんというか・・・ソワソワ??
うちは多すぎるけど、私の友達も兄弟多い子が多いから、身近に誕生日の子が多いしなぁー。
そんなこんなで、その友達の一人にこうしてバースデーカードを書く羽目になってる訳だけど。
「琴音はどんなバースデーカードが欲しい!?」と念のため聞いたら「短冊」と答えられた。
当てつけか!?
それとも、七夕が誕生日の智樹のせいかな!?
智樹はお父さんの従姉妹の理加さんの息子で木村智樹という、顔だけはとっても良いうちのお父さん似のモデルだったりする。
その智樹の誕生日は七夕とこれまた出来すぎな中学3年の不登校児・・・は言い過ぎか。
同じクラスの祐二曰くは仕事が忙しすぎて学校に行ってる暇がないらしい。
それなら芸能人専門の学校に転籍すれば良いのに、斗南に拘ってるっぽく夏休に補習でなんとかするらしい。
先生って大変。いや、そんな事は良くて・・・。
「ねえ、琴音。本当に短冊でいいの!? だったらお姉ちゃんが作ってあげるよ」と珍しく姉風を吹かせたら「自分で作るもん」ともっと拗ねられた。
可愛くない・・・と思いつつも、顔はとっても可愛い父似の妹の泣きそうな顔に弱い私は「嘘だよ。バースデーカード、琴音も書きたいんでしょ」と隠された本音を読み取ってあげる。
琴音は小さく「うん」と頷いた。
「じゃあ、一緒に買いに行こうか」
まだ小学生の琴音は一人で都心で買物をするのを禁止されている。
お祖母ちゃんに頼むとか、お母さんに頼むとか、他の大人と一緒に行けば良いんだけど、うちは兄弟が多すぎてなかなか大人の手が空かない。
それにあまりにも美しすぎて、琴音一人だとナンパや事務所の勧誘が凄すぎてとにかく歩かせられない。
正樹なら良いんだろうけど、そもそも正樹は服とか頓着なくて都心に出たいとか言わないしなぁ。
その正樹も近所の渡辺宅に遊びに行ってるし、たまには姉妹で出掛けるのもありか。
「じゃあ、琴音。着替えて出かけよう」と言ったら、琴音はきょとんとして「この格好はダメなの!?」とTシャツとジーパンの格好を確認する。
この何を着ても完璧な美少女め!!
これと一緒に歩かなきゃダメな私の方がダメージ大きい。
そこ等辺、母似の自分が悔しいけど、この見た目だからこその良さもあるしと納得させてたら、琴音から「お姉ちゃんはいいな」と羨ましがられた。
「あたしは智樹と年齢も離れてるし、頭も良くないし・・・」
そっか、琴音は琴音で辛いか。
「いつも妹にしか見られてないし・・・」
顔が似ているのも考え物ね。
「だからギャフンと言わせてやるの!!」
・・・なんだろう、この母のミニチュアみたいな思考回路。
私の頭の中で智樹がすっごく嬉しそうな顔で『ぎゃっふーん』と言ってるのが浮かんだ。
ああ、凄く遣りそう。
「きっと言ってくれるよ。で、どんなの買いたいの!?」と聞いたら「ギャフンと書いてるヤツ!!」と、とっても素直な言葉が返ってきた。
今すぐ、私が鳴きたくなった。
・・・それ、売ってるかなぁとスマホで文房具専門店の場所を調べたのだった。
* * *
本当は直樹さんが琴子のラブレターを思い出す話を考えてたのですが・・・かすりもしなかった
親二人とも出て来ません(笑)
題名が全く思い浮かばず適当です。