お義母さんが旬だからと夕食のデザートにさくらんぼを出してくれた。
みーちゃんと摘まみながら、なんか昔にさくらんぼの可愛い歌があった様な気がしたけど、歌詞が出て来ない。
こうやってママ業は女の子から遠ざけるのよねと思いつつ、みーちゃんにサクランボの飾りが似合いそうな気がしてみーちゃんの前にさくらんぼを掲げる。
「ママ、早く食べないとみーちゃん食べちゃうよ」と手を伸ばして、あたしが揺らしてるさくらんぼを狙う。
「はい、はい」と言いながら手に持っていたさくらんぼをみーちゃんに渡す。
ああ、子供ってなんて可愛いんだろう。
子供と言えば、もう一人。
生んだばかりの琴音はぐっすり寝てて、いつもはこんなに平和にしてないのに、奇跡的に今はみーちゃんと穏やかな時間が持てている。
パパ、早く帰ってこないかな~!?
そんな事思ってたら、みーちゃんにも通じたのか「これ、パパの分残そうか!?」と聞いて来る。
その顔には食べたいと書いてあり、あたしは笑いながら「いいよ、パパは甘い物嫌いだもん」と教えてあげる。
「でもママはパパと分け合いたんでしょ!?」と言われ、なんで通じちゃうのかなと顔を赤くした。
「でも入江くんはしないよ」と遠い目をして答えれば、いつの間に居たのか裕樹くんが「当たり前だろ」と当然の如く返事をする。
「あら、居たの!?」と嫌味を言ったら「母さんに呼ばれたんだよ。好美にさくらんぼ届けてやれってさ」と言いながら、お土産に包まれてるらしい包みを見せてくる。
「裕樹お兄ちゃんは好美お姉ちゃんとさくらんぼ分け合わないの!?」と純粋な琴美の返事に、うっと詰まっててザマーミロと思っちゃった。
「い、一緒に食べるけど・・・ね」と顔を赤くしながら答えている裕樹くんを見ると、入江くんもこんな素直だったらいいのになーとちょっと思った。
「好美ちゃんには優しくしなさいよ」と姉貴風を吹かせて言えば「そんなの、やってるし」とまるで小学生の様に言い訳している。
その様子ならやってないなとからかってやろうとしたら、玄関から「ただいま」と声がしたから裕樹は放っておいて玄関に走った。
「お帰りなさい、入江くん。あのね、さくらんぼがあるの」
そう言ったら、開口一番「要らない」とバッサリ切られた。
「あ、兄貴。お帰り・・・えーと、俺、帰るから」とそそくさと帰る裕樹を横目に見ながら、心の中でさっさと帰れと悪態をついた。
「パパ、ママはパパとさくらんぼ食べたいって」とみーちゃんが援護してくれるけど、入江くんは気にもせずうがいに行く。
寂しそうにサクランボを持って後ろを歩くみーちゃんに『大丈夫よ』と声をかけようとしたら、手を洗い終えた入江くんがみーちゃんを抱っこして「あーん」と言う。
え!?っと驚いている間に、笑顔のみーちゃんが入江くんの口にさくらんぼを押し込んだ。
二つ同時に。
分け合うんじゃなく!?と驚いている間に、入江くんは口をモゴモゴさせたかと思うと指で茎を摘まみだし、あたしの手のひらに乗せた。
それは伝説のサクランボの茎を結んでるヤツで・・・。
て、て、て、天才って!!!!!
なんか負けた気がして、廊下に蹲ったあたしだった。
* * *
5月になったので、書かないと・・・と思いつつ、何もネタが思い浮かばずあれこれ検索して旬の食べ物に落ち着きました
サクランボと言えばkissでしょと思ったものの、ネタが難航し、なんかこうなった
気温の高低差と、花粉にやられて調子がいまいちです。もう一本はまた月末に頑張ります。