琴子は引き出しを開けると、そこにある服を全部床に投げ捨てる様に叩きつけた。
「もう、全部、全部、無かった事にするんだから!!」
そう叫んだが、「そこまでじゃないだろ」と諭す俺の言葉にハッとして振り返った。
「これとか、まだ着られるだろ。おふくろが最近買って来たヤツだし」と俺が花柄のカーディガンを手に取ると、琴子がそれを奪って「ご、ごめんね。なんかやりたくなっちゃって」と顔を赤らめた。
事の発端は、公園に行って遊んでたら近所の子とその母親に琴美の服装を笑われたらしい。
確かに琴美は成長期だから、服が小さくなってしまうのは否めない。
だからといって箪笥の中を総とっかえする程ではないのに、余程腹が立ったらしい。
「まあ、これは着ないだろうがな」と懐かしい?怪獣の着ぐるみを手にとってみれば、琴子は「うわー、懐かしい。よく着せてたな~」と目を細めて喜んだ。
そういや、一時期怪獣が当たり前になるくらい着せていたな。
これを着ると、不思議と大人しくなる琴美のせいで、怪獣でいる必要がなく、そーっと積み木を組み立てていた後ろ姿に哀愁を覚えたのも懐かしい。
「みーちゃん、これを着てると何故か大人しかったんだよね。だから一日中着せてたっけ」
今のフリルのスカートの方が翻して走り回ってるしな。
「だから砂場にあの格好を!?」
「いやぁ、あれは・・・」
ノリでウ〇ーリーを探せな縞々の服とズボンで行ったら目立ったらしく、みんなに指をさされ、居たたまれなくて帰って来たらしい。
いや、探すだろ、それは。
「しかもただ親子コーデにしただけなのに、あたしが色違いのズボンを履いてるのが悪いって勝手にキレられたし」と頬を膨らませて行く。
まあ、そんな恰好をした親子をみたらツッコミたくはなるだろうなと思う。
「琴美ももうすぐ3歳だしな。もう少し服装に拘っても・・・」と、新しく詰め替える用の服をみたら当の昔に拘っている様だった。
「お義母さんにお任せしてるんだけど、どうもみーちゃんの好みじゃないみたいでね」と困った顔で笑う琴子に同情の念を送った。
おふくろは俺が生まれた頃から女の子が欲しかったくらいだから、初孫で女孫の琴美を目に入れても痛くないほど溺愛している。
365日違う服を着ても大丈夫なくらい服はあるが、公園に毎日着せて行ける服はそう多くない。
思わずウォー〇ーにするくらいに、シンプルな服が少なすぎる。
「よく、アレあったな」と感想を言えば、琴子は「あれ、理美がくれたの。面白いからって」と言われ、流石悪友と頭の中で感想を述べた。
「普段、フリフリを見慣れているとあーいうシンプルもなんか新鮮でイイなって思ったけど、ナイわーとか言われちゃうとね」
〇ォーリーにさえしなければ問題なかった気もするが・・・。
「まあ、みーちゃんもお姉さんになって来た事だし」と言われ、そろそろ物理的にも『お姉さん』になってもらうかと思ったが・・・。
3歳児向けのこのパジャマ、可愛いと思わない!?とカッパジャマを見せられ、頭の中にチビカッパが2匹遊んでいる図に書き替えられたのだった。
* * *
そろそろ4月のネタを・・・と思ったのですが、日常のネタが特殊過ぎて使えず
自分で話書くより、我が子の方が面白すぎてネタが飛んだ~
子供の成長という面のみが一緒ですが、こんなに良い子じゃない我が子は・・・見ているだけでお腹いっぱいになれます。
新年度が始まりましたが、楽しい日々を過ごせる様願ってます(切実)
取り敢えず、花見でもしよう