入江くん、ハッピーバースデー
こちらに来て半年が過ぎ、半人前ながらも一人前以上の仕事を熟さなければならない日々。
東京に残して来た琴子は毎日会えないと涙ながらの留守電を入れる。
一時は留守電にすら腹が立って女性アナウンスの機能を使ってみたが、琴子にいたく不評で初期機能に戻した。
琴子が安定しているのが一番だと夜食なのか、朝食なのか分からないものを胃に収めながら留守電を再生する。
『留守電くん、ねえ入江くんがいつ出れるか教えてよ』
そんな出だしから始まる留守電を俺は食事のBGMとして聴く。
俺にかけているんだから俺に聞けと言いたくなるが、相手は留守電だ。
返事をするはずがない。
琴子は留守電に吹き込んだ事で満足したのか、それ以上は・・・ああ喋っていたな。
ついBGMとして流してしまうから、内容がどうでもよくなるだけで。
それでも記念日を忘れない様に釘を刺す琴子が可愛いと思うくらいで、内容は薄っぺらいから折り返す気になれない。
しかも早朝という時間では睡眠を邪魔するだろう。
主に琴子じゃない家族の・・・
「留守電くんか」
食事を終えて留守電の内容を消去しながら思わず呟く。
来年の今頃は一緒に暮らしているだろうか。
あいつが神戸に来られるのか・・・琴子の事だから、何かしらのミラクルは起こしそうだから手は出さずにおく。
今から行動を起こしてすれ違いになるのはごめんだ。
ただ・・・寒くなれば人肌が恋しくなり、遠くにいる妻の横に潜り込みたくなる。
そういえば前に琴子が言っていたなと思い出す。
ポケットサイズになればどこへでもついて行けると。
ドヤ顔で言われたが、出来るはずもなく、その発想力にいつも驚かされる。
その時聞いたっけな。
『それで、看護師になる勉強は諦めてただ俺の側に居れば良いのか!?』と・・・。
琴子は涙目になって「そーゆー訳じゃないけどぉ」と言い訳をする。
未来は未来、希望は希望なのだと。
「留守電、琴子の声を聞かせてくれよ」
冗談でそう言ったら、いきなり電話が鳴って驚く。
そのまま留守電が対応し、病院へコールバックする様に伝えられた。
半人前でも呼び出しか・・・。
医者という職業は暇になる事がない。
せっかく帰って来たのだからと着替えを鞄に詰めて、留守電を消去する。
一度だけ電話を撫で、戻って来たらたくさん声を聴かせろよと望みを込めて電話を見つめる。
この思いが琴子に伝わる訳ない事を知りながら、俺も無茶だなと自嘲して病院に戻った。
後日、やっぱり琴子は留守電に会えない愚痴を散々吹き込んだのだった。
* * *
直樹さん、病院のピッチ持ってるんじゃ!?と書きながら思いましたがご都合主義です
昨日はチャットお疲れ様でした。
書く時間は作ろうと思えばあるんですが、一人だとネタを考える余裕がありません。
誕生日という縛りを取っ払って書いたら、あら不思議。やれば出来るもんだと自画自賛してます(笑)
因みに昨日リクエスト頼んだら、留守電の話と言われたのでこんな感じとなりました。
多分イメージはこうじゃないけど、1時間クオリティなのですみません。
次回のチャットは結婚記念日カウントダウンで11月20日を予定しております。
是非是非参加してくださいませ~
追記
本日チャット開催されます。
私は夜8時くらいから常駐してますので、声かけてくださいませ。
コチラでお待ちしております。