琴子ちゃん、ハッピーバースディ
もうすぐ体育祭、とかじゃなく明日は金曜日。
でもドキドキする事はそんな事じゃない!!
今日にあたしの運命がかかってる・・・と思って一日隙あらばA組の前をウロウロしたけど、入江くんの姿は見られなかった。
入江くんって保健室の常連って噂があって、あたしも必死に通ってみたけど会った試しがない。
毎月毎月生理痛って嘘つくのも、風邪っぽいって言うのも大変だし、そもそもあたしは病気一つした事がない。
理美が教えてくれた話では生理痛の重い人って入院するっぽいし、あたしはお腹おさえてたらいつの間にか終わってるくらい?
これが軽いのか重いのかさっぱりだけど、って今は生理痛の事なんかどーでもいいのよっ
入江くん、入江くん、入江くん。
どこを探したらいいのー!?
「はぁ、やっぱりダメかも。見つからない・・・」
落ち込んでたあたしに「何を探してるの?」と声をかけてくれる優しい男性の声。
顔を上げると「め、眼鏡!!(の男性)」
「眼鏡は無くすと厳しいよねぇ」と相槌を打ってくれるけど、あたしは頭は悪くても目はいいの。
一度も眼鏡なんかかけた事はない・・・いや、友達のって、い、い、い、入江くん!!
眼鏡の向こうに入江くんが居た。
あれだけ探してた入江くんが(眼鏡の向こうだけど)目の前に。
ああ、神様。今日もありがとうございます!!
「み、見つかった・・・」
「そう? 良かったね」とその人は言って、入江くんと一緒に行ってしまった。
ありがとう、眼鏡の親切そうな人。
名前も顔も(どーでもいいから)よく分からなかったけど、入江くんを見られただけで幸せ。
あたしは慌てて手帳を開いてハートを書いた。今日は二重ハートかな。
本当はあたしじゃなく入江くんがあたしを探して、抱きしめてkiss―――キャーーー
薔薇の花束なんかもらっちゃったり~♪ なんて、想像しながら楽しく帰ろうとしたら金ちゃんに捕まってタコ焼きを奢ってもらえる事になった。
なんであたしの誕生日知ってるの?って聞いたら、理美とじん子が教えたって。
あいつら~~~
俺は琴子の事なら忘れないって・・・はぁー、そんな台詞入江くんに言われたいなぁ
と嘆いてから10年後。
その入江直樹と結婚し、誕生日に夫をやきもきさせ、夜景の見えるホテルの一室で欲しかった言葉と花束をプレゼントされ、翌日には指輪を貰うのである。
その間には語りつくせない数々のドラマ(山から谷へバンジーな勢いの逸話多数)がこれでもかとあるという事を、まだ彼女は知らない。
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予約投稿です。多分、チャット中ですね。
後日チャットのお礼と、その時のネタで何か書けたら嬉しいです。
では、楽しい一日をお過ごしください