今、俺は夢を見ている・・・と認識している。


だってあの入江の態度がおかしいんだ。


「はあ、これから身体計測なんて面倒だな」と俺は入江に伝えた。


入江は俺に「毎年、数値なんて変わらないからやっても無駄だけどな」といつものニヤリとした笑いを浮かべながら、俺の前からいつの間にか消えた。


ほらな、おかしいだろ!?


どこが可笑しいか―――
と、セルフツッコミしか出来ないのも夢のせいだ。


もうすぐ起きなきゃいけない時間なのだろう。


俺がこんな事を思うのは・・・

 



そして、そんな事を思いながら目覚ましの音で目を覚ました俺はいの一番にカレンダーを確認した。


ほら、俺は間違えていない。


今は10月だ。身体計測なんか一学期にもう終わっている。


いや、可笑しいのはそこじゃなくて―――



自分の夢にどうしても納得がいかなく、入江と登校中にあった時に聞いた。


「なあ、今年の身体計測の数字ってさぁ」


俺の予想は、伸びたか、増えたか、減ったか、だ。


もしくは夢の通り『変わらない』だが・・・


入江の返答はそのどれでもなかった。


「俺だけ保健室で計測だから、渡辺にも教える訳にはいかない」だと。


「お前ってもしかして、アンドロ――」


ギロリと睨まれ、口を噤むと入江はため息を吐きながら事情を話してくれた。


「おふくろのせいだ。小学校の頃、俺の個人情報で学校を揺るがす騒ぎになって、身体計測の数字から誕生日まで個人情報が全て秘匿された」


それはいつだと聞いたら小学1年生の頃だと。


すごく納得した。


「だから、お前の誕生日が毎月噂に上るのか」


「ああ、毎月4と14と24が俺の誕生日と噂だ」


言ってる本人がニヤリと笑う。


これ、絶対に違うヤツだなと思いつつ「まさかバレンタインデーが誕生―」と言ったら、近くの生徒の目がギラつき、入江から不穏な雰囲気が漂った。


お、お、お、俺からは絶対に誕生日聞かないからなっ


そんな訳で、俺は付き合って10年近いが入江の誕生日を未だ知らない。