「あー、つかれたー」と机に突っ伏しながらも口は疲れてないのか止まらないのが琴子。


現在教生中の琴子は中間テストの監督で、普段の授業に比べれば疲れてるはずがないのだが、それでも慣れない環境に身を置くなら疲れるのも仕方がないかと少し納得する。


「ねぇ、入江くん。今日はトークの日なんだって」と他愛のない話題を振るのは疲れを癒す為なのだろうか。


『トークの日』だからと言って、好きに喋りたいと思わない俺は「じゃあ俺は書斎に帰るから、おふくろとでも」と逃げようとしたが、「あたしは入江くんと喋りたいの!!」と可愛い事を言われると無碍にも出来ない。


何だかんだ俺らは新婚で、意識してしまえば『好きになった方が負け』というヤツだ。


自分が無口なのも理解しているし、琴子と対話が足りてない事も理解している。


「じゃあ・・・付き合うが、話題はお前が出せよ」


相槌なら打ってやると言外に伝えれば、琴子は嬉しそうに頷く。


「あのね、今日中間テストだったでしょ。それでね、入江くんと初めて勉強した時の事を思い出したの」
・・・今すぐ逃げたくなった。


「あれは最悪だった」
「そー言わないでよーあせる」と困った顔で笑うが、こっちは困ったどころではない。


本気で首を絞めたくなるくらいイライラしたし、頭の中を割って見たくなるくらい酷かった。


あの時に医者を志していたら・・・解剖は確実に考えただろう。


一瞬、琴子の脳かと頭を見つめてしまったが、琴子は俺の視線に気づかないのか「あれがあっての今でしょ」と胸を張って言う。


「・・・おふくろの暴走があっての今だな」と元凶を思い浮かべると、琴子は「確かに―」と苦笑する。


「あの写真が無かったら・・・うん、無理だったね」


良くも悪くも、あの写真が――と考えて、良く無いと結論づけた。


本当に最悪だった。


女になりたいとは一度たりとも思っていない。


琴子を妻にしながらも、未だに女心は分からないままだ。


「あんな写真の子が・・・もしかしたら生まれるかもよ」と言われるが、まあ俺とお前の子なら50%の確率で生まれるだろうな。


「男だったら絶対に女物の服は買わせないからな」と言うと、琴子は「分かってるって」と笑い飛ばす。


あのおふくろの暴走に付き合える凄い妻だが、一線は守るらしい。


「でも・・・女の子だったら考えてもいいよね」と頬を染めながら言うので、「女なら問題ないだろ」と返事をしつつも今生理だよな?と先日の流血騒ぎを思い出す。


忙しかったからと言って「な、なんで血??」と大騒ぎし、自分が大人の女性だって事を忘れていた琴子に少し呆れた。


確かに直前は日曜日で遠慮なく夫婦の時間を過ごしたが、だからと言って流血するほど求めた訳じゃない。


時期的にも来るだろうと思っていた俺に対し、自分の身体の事なのにその周期を忘れる琴子の方がどうかしている。


本当に子供が欲しいのだろうか!?


トークの日だし聞くかと「おい」と声をかけると、「やっぱりコーヒー欲しいよね」と頓珍漢な返事が返ってくる。


「気分転換に淹れて来るよ」と腰を浮かした琴子に「書斎に行ってる」と声をかけ、琴子の背中を見送った。


まだ出来ない。


少なくとも、教育実習が終わるまでは。


後もう少しだなと思いつつ、何事も起こらないでくれよと願う俺の気持ちに反して、しっかりと翌日に大事件を起こされたのだった。

 

* * *

この翌日、モジモジ君スタイルな琴子が登場しますウインク

 

最近五月病なのか頭が回らなくて書くの遅くてすみませんあせる

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