「ふぁ~、こうも暑いと何も出来やしない」

高校3年の夏休みの最後の土曜日な今日。

本来なら受験真っ盛りで暑さも気にしていられない時期だろうが、もう進学先を決めてしまっている僕はとくに何かしなくてはいけない訳じゃない。

だったら彼女とデート・・・なんて平和な事も本来なら出来るんだろうけど、その彼女の方が忙しかったりする。

学校が違う僕らは土日しか会えない・・・いや、そんな訳でもないのでこうして土曜日も会えなくても問題ない。

高校は違うけれど、中学までは同じ学校だったし、何だかんだ家は割と近い。

ご近所ほどではないけど、歩いて30分圏内だ。

だから、学校へ行く時は同じ駅を使うし、帰る時も時間が合えば一緒に帰る。

なので土日会わないからと言って寂しくなんか全然ないとも言える。

「読書日和だな」と呟いて再びソファーに座り、本を開いたところでリビングのドアがガチャッと開いた。

「お兄ちゃん、お帰り」と僕が挨拶をすると、お兄ちゃんは「裕樹、ただいま」と挨拶を返してくれる。

時計を見るともう4時。本来なら勤務じゃなかったらしいお兄ちゃんだけど、医師という職業柄何だかんだ仕事で病院には行かねばならないらしい。

「遅かったね。琴子が心配してさっきまで煩かったよ」と教えると、お兄ちゃんは天井の方を見上げながら「ああ、どうせ今から上に行くから大丈夫だろ」と何でもないように言う。

今まで琴子の愚痴に付き合っていた僕に労いは無いのかと言いたくなるけど、それはお兄ちゃんのせいじゃない。

琴子に煩いと言ったら、だったら僕が出て行けば良いとはっきり言うあいつが憎たらしいけれど、それは実際そうなのだから『お前が出てけばいいだろ』とは言えない。

だって琴子はこれから勤務らしいからさ・・・。

だったら用事のない僕が出るべきだと頭では分かっているけれど、好美が居ない日にわざわざ外に出ていたいとも思えない。

だから今日の楽しみ?は食事くらいだけど・・・。

「あっ入江くん、お帰りー」と待ちきれなかったらしい琴子がリビングに入って来てお兄ちゃんに挨拶をした。

「ねえ、今日の夕食は」と琴子が言い出したので「さっぱりしたものがいい!」とお兄ちゃんの意見を聞く前に口を挟む。

すると発想が斜め上な琴子は「今日はとりの日なんだよね。だから、水炊きなんかどう!?」と聞いて来た。

はあ? この真夏に鍋??
暑さで頭イカレタか!?

僕が信じられないと琴子を凝視していたら、お兄ちゃんが「俺はそれでいい」とまさかの肯定をしてきた。

「え!? お兄ちゃん??」

慌ててお兄ちゃんを見つめるとお兄ちゃんはこともなげに財布を取り出し、僕にお金を握らせる。

「裕樹はこの季節に鍋なんて食べたくないだろ。外食になるだろうけど、好美ちゃんでも誘って何か食べて来いよ」と言われ、無言で頷いた。

お兄ちゃん、僕がいると都合が悪いんだね。

琴子が何を作ろうが構わないんだ。食べたい物と腹に収める物は別でも・・・いや、それ以上考えるまい。

好美と会う口実が出来たので、さっそく電話をかけると丁度帰って来ていた様で一緒に食事をするのは大丈夫との事だった。

その返事を聞いてさっと準備をして出かける。



夜9時に家に帰った時、キッチンで洗い物をしていたのは何故か兄だった。

・・・まあ、そうなる予想はついていたけどね。

一応、お兄ちゃんに感想を聞く。

「良かったの? 琴子(の水炊き)」



「・・・ああ」

兄からの返事は何故か遅かったが、気にしない事にし、僕は冷蔵庫から麦茶を取り出して飲んだ。

リビングで読みかけの本を手に取った時、自分の失言に気付いたが今更訂正は出来なかった。

・・・明日は激辛料理も覚悟しておこう。

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とうとうPC壊れましたドクロ 取りあえず、応急処置?で動いています。
買い替えして、手に馴染むまで新しい話はお待ちくださいませ。
良いのか悪いのか、ブログの整理していなかったのであまり話は増えていません。
データの引継ぎ等色々時間をかけてやらねばならない事が増えたので、3月に話を書けるか分かりませんが何とか頑張りたいと思います。

因みにこの話、一度消えたので書き直しました。
何とか今日に間に合ってホッとしています。