暑い暑い真夏の7月。

こっちも夏休みが欲しいわーと恨めしい目で裕樹くんを眺めていると「なんだよ、琴子。気色悪い」と嫌味たっぷりに返してきた。

「べっつにー。恋人も居るのに、日がな一日家に居るってどーしてかしらね?」と聞いたら、好美ちゃんは学校の友達と勉強会があるからだと怒られた。

「裕樹くんが教えればいいじゃない」と言ったら、お兄ちゃんの二の舞なんて嫌だと即座に返す。

は!? 入江くん??

「えー!? 入江くんなんて高校時代に勉強を教えてくれた事なんて・・・」
「あるだろ!! 目一杯っ お前のせいでF組のみんなをこの家に招いて特別講義してたろーが」と言われてようやく思い出す。

あー、ありましたね。
そんな事も・・・いやー、懐かしい。

「それでこうして看護師になれたんだから、本当入江くんって天才よね」と言うと、裕樹くんが白目で睨んで来た。

「僕は好美に勉強を教えるのは・・・べ、別に頼まれたら嫌じゃないけどさ」

じゃあ、いいじゃない。何を悩んでるんだろ?

「だ、だからと言って、あいつの友達にまで無償で教えるとかは無しだ!!」

「え!? お金とるの??」と聞き返すと、「だから教えたくないって言ってるだろ」と怒ってリビングを出てしまった。

はぁ~、夏の暑さって人を短気にさせるのね。

「どーせなら、入江くんと過ごしたかったな」と呟いていると、お義母さんが「分かるわー。もうすぐお盆だし、旅行計画立ててみない!?」と優しく言ってくれた。

わー、すごくいいかもっ

なんて喜んだけど、ダメだ!!

「あー、お義母さん。それなんですけどぉ、入江くんきっと怒るんでダメです」

「あら、お兄ちゃんが怒るのはいつもの事じゃない」とあっさり言われ、それもそうかと納得した。

「じゃあ、行けないですけど夢を見るのはいいですよね。あたしは夏だし北海道に行きたいかな」と言ったら、お義母さんがあたしの手を握って「分かるわー。ラベンダー畑で愛の告白。沈む夕日をバックに二人きりの抱擁。そして夜は星空の下で愛の語らい」とうっとりしながら言う。

妄想はあたしの専売特許だと思ってたけど、お義母さんも負けてないかな。

「いいですね、いいですね。夕日をバックに・・・」とその情景に浸ろうとしたら、海で似たような事をやって抱擁からすっごく先に進んだ事までを思い出して顔が赤くなった。

だ、ダメだ。この妄想は危険!!

海から遠くて人がいっぱい居るところは、えーと・・・。

「そうだ!! 佐賀のおじいちゃんとか、元気ですか!?」

夏と言えばお盆。お盆と言えば墓参りよ!!

なんて思い出して聞いてみれば、あの元気な頑固―もとい、入江くん大好きなお祖父ちゃんが腰を痛めて動けないらしい。

「だから心配だし、お盆には向こうに顔を出そうかなって思ってるのよ。お兄ちゃんと琴子ちゃんは勤務もあるし無理よね!?」と言われて頷く。

昔のように連泊出来たら会いに行くのは別に嫌じゃないけど、でも仕事忙しいしなぁ・・・。

「入江くんは行けないでしょうね。しばらく入院しちゃったから、その埋め合わせでまた倒れちゃうんじゃないかってくらい仕事入ってて」とため息をつきながら言うと、お義母さんが困った顔で頷いてくれる。

「もうっ 退院したら元通りなんて考えが甘いわよ」と怒るけど、あれはきっと休んで仕事場に迷惑かけてしまった事が許せないんだと思う。

「だからせめて夏休みでもとって、ゆっくりして欲しいんですけどねぇ」と言うと、お義母さんは再びあたしの手を握り締めて「琴子ちゃんって、本当に妻の鏡ね」と感激してくれた。

尊敬するお義母さんからそう言われると、あたしもなんかそんな気がして嬉しい。



って事で張り切って入江くんの夕ご飯を作ったら・・・深夜に帰宅した入江くんに盛大にため息を吐かれましたとさ。

「こんなにスタミナ付けて・・・琴子、この後覚悟しろよ」と真顔で言われ、あたしは自分の腕を抱えてちょっと震えた。

真顔の入江くん、超クール雪の結晶

* * *
ご無沙汰しております。うっかり新年の挨拶も忘れていましたショック!
今年はコロナの影響で新年の挨拶も時期をずらしたり、コロナの影響で子供がずっと家に居たりであれこれ口だけ出して妙に落ち着きません。
しかも、これだけ口出ししているのに、冬休みの宿題が終わらない不思議を体験しておりますえっ
子供のスルー技術の向上が凄まじ過ぎて、これ以上押すのか引くのかに迷い、迷走中です。
一応、今年も月2本の更新は守りたいので、良かったら遊びに来てくださいませ。
色々考えていたら、季節真逆な夏の話となりました。こちらも迷走中です得意げ
では、今年も宜しくお願い致します。