食堂で船津に捕まり「琴子さんにクリスマスプレゼント買いましたか?」と、皆の前で聞かれた。

こういう時は『買った』と嘘をつくべきだと直感が騒ぐが、偽るのが好きではない俺は正直に「買ってない」と告げた。

船津は「何故ですか? それは愛してないからですか!? 普通、買いますよね」と余計な事を言う。

みんなの前で、しかも琴子が居ない場所で、わざわざ愛の告白などしたくない。

俺は「普通って何だ? それはお前の尺度だろ、船津」とやり返す。

船津は「いーえ、世間の尺度です。僕は真里奈さんの為ならどんな望みだって叶えますよ」と胸を張って答える。

俺はため息を吐きながら「琴子が俺に対してそうだからと言って、俺が琴子にそうするとは限らない。品川・・・じゃなかった、船津の奥さんだってお前の為にどんな望みも叶える訳じゃねーだろ」と言うと泣き出した。

「そーなんですよー。今年は何も要らないから、顔見なくてもいいかと言われてしまったんです。僕はもうどうしたらいいのか・・・はっ もしや、仮面なら!?」と突拍子もない事を思いつく。

船津と会話をしていると、琴子と会話をしている気分になる。

それが、いまいち船津を嫌えない原因なのかもしれない。

だが、普通に「それは止めておけ。一生仮面付けておけくらい言われるぞ」と言うと、船津は「何で入江さんは真里奈さんの事をそんなに詳しいんですかっ も、もしや、好きなのでは!?」と更に鬱陶しい絡まれ方をする。

「呼び方が面倒だから品川って呼ぶけど、品川は琴子の同期だから琴子から色々聞いている。興味は無くても情報は所持しているんだから、言いそうな言動くらい想像つくだろ。ましてや今は妊娠中なんだから」と言うと、船津は俺の白衣の袖を握りしめて「お願いします、入江さん。妊婦が欲しがる物を是非、僕に伝授してください」と顔を近づけて頼んだ。

お前、目が血走ってるぞ・・・。

そこは頭を下げるところだろうに、何を血迷ってるんだか。

「妊婦とクリスマスプレゼントはイコールじゃないだろ!?」と言ったが、船津は聞く耳を持たない。

「何でもいいんです!!」と言われたので、「腹が重くなると家事をするのが辛くなるって琴子がこぼしてたな」と教えてやると、船津は「分かりました。掃除便利グッズですね」と手帳にメモを取り始めた。

これは出産前に離婚案件か!?

「クリスマスなら、ケータリングでもして、料理の手間を減らしてやれよ。レストランに行くのもしんどいだろ」と言うと、船津は「分かりました。料理の手配ですね。でもそれなら、クリスマスだけとは限りませんよね。そうだ非常食をセットで贈るなんていいんじゃないですかね」と頭を抱えたくなる答えが返ってくる。

もうこいつの相手はしたくないと携帯をチェックするフリでもしてやり過ごそうと、携帯を取り出すと丁度メールが来ている事を知った。

無言でメールを開くと、危機を察したらしい品川から船津への注文メールだった。

琴子経由で送る辺り、本当俺と船津の仲を熟知している。

「船津、正解を教えてやる」と言って船津にメールを見せた。

船津は高速でメモを取っていたが、メールの転送機能の知らないのだろうか!?

船津がメモを取り終えた頃、船津のアドレスに転送しておいた。

「買う物、間違えるなよ。うちが巻き込まれるのは迷惑だ」と言って、ようやく食べ終えた食器を返し、食堂を後にした。

俺も琴子に何か買ってやらないとなと思いながら・・・。

そうじゃないと、おふくろから琴子の欲しい物を画像付きで送られて来そうだから。

* * *
クリスマスの話を考えてましたが、こっちが浮かんだので早めに発表させてもらいました。
多分、クリスマスには何も書かない気がします。
子供達の終業式&冬休み時期で、ちょっとバタバタしそうです。

年末にはチャットありそうなので、その頃にGo To話を予定しています(まだ白紙シラー
お楽しみにどうぞー。