おふくろの暴走のせいで、結婚式を21日に決められてしまい準備だけでも殺人的な忙しさなのに、新婚旅行へ行く日数分詰める為に更に時間を圧縮させている日々。

最早、短縮する時間を見いだせず力技で強引に押し通しているので、何か一つが弾けたらそれだけで今までの苦労が水の泡になるだろう。

だからこうしてゆっくりコーヒーを飲んでいる場合じゃないのに・・・そう思いつつも、朝食の席から立てずに居る。

今日は日曜日で、本来ならゆっくり寝過ごしても大丈夫な予定だったのに。

それもこれも結婚式の予定のせいで全てがパーだ。

だったら早く会社へ行って仕事をすれば良い―――そう思うのだが、俺の動力源が居ないと身体は動かない。

まさか自分がそんな自堕落なモノになり果てるとは、とため息をつきたくなるが、そもそもこんな無茶な状況でため息が出ない訳がない。

ただ、さあため息を出すかとため息を出せるなら、俺はもっと楽に生きられていただろう。

コーヒーを味わうフリをして吐き出す息の全てがため息だ。

それも、これも、琴子がまだ寝ているから!!

せめて休日の朝くらいは『行ってらっしゃい』と見送ってほしいのだが・・・琴子にそんなささやかな望みを抱く自分が居ると思っていなく、早い話頼めなかった。

日曜日の朝、早起きをして俺を見送れ――とは。

流石にコーヒー一杯に時間をかけるべきではないと判断し、琴子の代わりに時計を睨みながらブラックコーヒーを胃におさめる。

席を立ちあがるのと同時に、バタバタと激しい足音が聞こえて「待ってーーー、入江くーんあせる」と琴子がパジャマのままダイニングに飛び込んできた。

お・は・よ・う

腹立たしいのと、俺の為に起きてくれた根性に思ったよりも感情が揺り動かされて平静を保てない。

「もうっ お兄ちゃんはなんでいつも嫌味しか言えないのかしらプンプン」とブツブツ怒るおふくろを無視して、マグカップをシンクに置くと琴子に「じゃあ、俺。行ってくるから」と声をかけた。

琴子は「も、もう・・・!?」と泣きそうな顔をしながらも、俺について玄関へ移動する。

本当はここで行って来ますのキスでもしたいところだが、何故か家族みんなが俺と琴子を遠目から見守っている(&おふくろに至ってはビデオカメラで撮影)中では何かしたいとも思えない。

「平日は基本的に夜中。今日は休日出勤だから、まあ夕方・・・いや、夜には帰れるだろ。何かあったら遠慮なく言えよ」と連絡が欲しいという本音をオブラートに包んで言ってみたが、琴子は首を横に振って「あたしのせいで入江くんのお仕事増やしたら大変だもん。結婚式の方は任せて」と胸を叩くのでその言葉に甘えて任せる事にした。

俺の役割は琴子のエスコートだし、新郎はケーキ入刀にキャンドルサービスくらいしか出番がない。

結婚式の主役は花嫁と聞くし、琴子に任せておけば間違いない。

「ああ、任せた。悪いな、手伝ってやれなくて」と琴子の頬に手を添えて謝った。

本当は雨の日に怒りに任せて琴子を叩いてしまったので、その後の確認も含めて・・・。

俺がこうしてサインを出しているのに、気にしない家族&気付かない琴子は「大丈夫だよ、あたしには強い味方が居るんだから」とおふくろをチラ見する。

再びため息の発作に襲われた俺は、琴子の頬から手を離し「行ってきます」と挨拶をして、琴子の返事を待たずに家を出た。

琴子の「いってらっしゃーい」の元気な声が俺の背中をグンッと押す。

今日こそは早く帰って琴子とゆっくり話す時間を作ろう。

そう思いながら琴子に貰った時計を見つめ、一本早い電車の時刻に間に合うか確認し駅までダッシュした。

* * *
リクエストは『婚約期間中の甘い時期』でしたニコニコ

が、結果を知っているので、どうしてもその先のオチを書きたくて仕方がない。

これ、絶対に後悔するヤツーーー(爆)と笑いが止まりませんでしたにひひ

・・・おかしいなぁ、甘いのドコ??