俺のシャツと下着、琴子のサマーニットのワンピースを購入してホテルに戻るともう夕食の時間になっていた。
部屋に戻り、待っていると俺達の膳と琴美の離乳食が運ばれる。
事前にアレルギーの有無を聞かれたのみだったので、こんなに離乳食に幅があるなんて思いもしなかった。
琴子が「みーちゃんのも美味しそう」と喜び、ようやく携帯についたカメラでパシャパシャと料理を取る。
琴子の写真フォルダの中身の90%は琴美だ。
残りの5%は料理で、更に残りは俺の寝顔らしく、前に見た時消そうとして凄い抵抗にあった。
「お義母さんに見せるんだー」と写メを送ろうとするので、「待て」と言って止め「琴美に食べさせているところでいいだろ」と言ったら凄く納得していた。
「じゃあ入江くん撮ってね」と携帯を渡され、琴子が琴美に『あーん』させている写真を2~3枚撮る。
背景に離乳食が写っているし、さっき琴子が単独で撮ったものもあるので、多分再現は可能だろう。
どうせ送られるなら琴美が食べている写真の方が嬉しいに決まってる。琴子に携帯を返して、琴美の離乳食あげの役割を替わる。
「琴美、あーん」とやると、琴美は昨日とは打って変わって欲しそうに口を大きく開けてくれた。
スプーンで離乳食をあげた後、自分の手に少々離乳食を落として舐めてみると、結構出汁が効いてて美味い。
琴美はおふくろとお義父さんの離乳食を食べている上、うちは素材にも拘っている。
「お前は食通だな、琴美」と言うと、琴美は嬉しそうに「んまーっ」と返事をした。
メールの送信が終わった様で、琴子が「入江くん、替わるよ」と言ってくれたが「お前が先に食べろよ。食後に琴美が母乳欲しがったら俺はあげられないんだから」と言うと、「確かに」と笑って食べ始めた。
夜も和食だが琴子は気にせず「美味しい」と声を上げて喜んで食べていた。
「次は洋食にするか?」と独身の頃の好みで誘うと、琴子は首を横に振って「まだみーちゃんが食べられないから和食がいいよ」と言う。
やっぱり琴子はもうしっかりと一児の母だった。
その後、俺も食事を終えて琴美と二人で部屋についた風呂に入る。
横浜の中心街なので温泉地ではないし、大浴場はあるけど行かなかった。
何故なら、琴美と琴子がセットで爆睡しそうだから。
琴美は寝ていい!!
しかし、琴子に寝られたら困る。
琴子が風呂に入っている間に琴美を寝かしつけ、俺は琴子を待つ間に缶ビールを開ける。
テレビはつけておらず、俺は夜景をサカナにチビチビとビールを流し込んでいた。
「入江くん、お待たせ」と湯上りの琴子が来て、ビールを飲み干すと琴子の前に敢えて立つ。
「待った。で、もう待てない」
琴子をベッドに誘いながらハワイで迎えた初夜の事を思い出す。
予想より早くする事になった結婚式に、勝手に手配されていたハワイへの新婚旅行。
大学1年で琴子がミス斗南になった時に取った旅券がまさかそこに繋がるとは・・・。
いつも琴子に感情を乱されてきた。何度も怒り、呆れ、動揺し、そして苦しんだ。
でも、嫉妬だって乗り越えた。
俺は鴨狩を通して自分の負の感情から逃げなかった。
そして、琴子は俺が自分に向く事を諦めなかった。
俺達は繋がっている・・・どこまでも。
何故なら、お互い誰よりも愛してきたから。
だからこれは自明の理。俺達は二人で一つで、生みだす未来は無限の可能性に満ちている。
もう待つ事なんてしない。未来は自分の手で作る。
「いいな、琴子」
俺は琴子に許可を求め、琴子は俺を受け入れる。
今の俺達に相応しいのは微かに煌めくネオンの灯のみで、夜明けの光ではなかった。
そして翌朝、琴美のボディアタックで激しく目を覚ましたのだった。
待っても起きない親には琴美からむかって来るか。
上等だ!!
「おはよう、琴美」
俺は楽しそうにペチンペチンと俺を叩く琴美に、特上の笑顔で挨拶をし、その頬にkissをした。
* * *
危うく、やっちゃえ〇〇が入りかけた(元ネタ 今回のテーマです)
そして終わらなかったので、さあ行くぞもう一話(笑)
次でラストの予定(ほら、旅行は帰るまで旅行なので)
さて、本日は結婚記念日カウントダウンチャットの日です。こちら
でお待ちしてますね。