さすがにベビーカーごとは乗れないのでベビーカーを預け、料金を支払って乗り込む。

並んでいる人達の情報に拠ると昨夜は長蛇の列だったらしいが、今は5分もかからずに乗り込めた。

「空いてて良かったね」と喜ぶ琴子を見つめながら「そうだな」としか返せない俺。

多分昨夜だったら本当に1~2時間待ちしていただろう。それを思えば夜に子供に風邪を引かせてまで乗せなかったかもしれない。

今で良かった・・・とは親目線では思えるのだが、昔の約束を果たせなかったという意味では負けた気になってしまう。

あれから5年の歳月か・・・。

ここから見る景色は然程変わりなく見えるのに、俺達は結婚してもうすぐ8年で子供まで居る。

今日また増やすとなると、しばらくは夫婦だけの時間は取れないだろう。

いや、今でもここに琴美が居るのだから厳密にいうと夫婦だけではない。

「人の願いを叶えるって・・・」
「すっごく素敵な夢だよね」

俺の懺悔に被せて、琴子がまたもや斜め上の発言をする。

「素敵な夢か」

俺が復唱すると、琴子は目を輝かせて「昔は叶わないけど夢みてた事が今は現実なんだよ、信じられる? 入江くん」と力説する。

因みに琴美は俺が抱いているので、琴子は手ぶら。

従って、今本気でガッツポーズを決めている。

全然色気がないのに、琴子らしくて良いと思えてしまうのは・・・もう全部をひっくるめて愛しく思えるからなんだろうな。

「なあ、琴美」

「え!? みーちゃんに、何??」と琴子が怪訝そうに聞く。

「お前もいつか好きな奴と乗りたいって思うのかな」とわざと聞くと、琴子が「とーぜんじゃない」と胸を張った。

それを見て「絶対にダメだぞ」と琴美を抱きしめながら言ったら、琴美がギャン泣きした。

慌てて琴子が琴美を奪いあやしだす。

「いけないパパですねぇ。みーちゃんだって好きな子と乗りたいもんねー」と言うと、琴美は琴子の胸に頭を乗せて俺にジト目を向けた。

「ただ単に眠くなっただけじゃないか!?」としれっと嘘をつくと「ほら、琴美。もうすぐ頂上だぞ」と言いながら俺が琴子の隣に移動した。

この中で一番体重のある俺が移動するという事は観覧車内の比重が変わる。

琴子の座っていた方が重くなり、俺が座っていた場所が少し上に傾いた。

琴子が「うひゃっ」と色気のない叫び声を漏らす。

ちょうど頂上でお約束のkiss

「うー、うー」と琴美に邪魔をされ、深くは出来なかったが琴美の頬にもkissをしてやると琴美も上機嫌になった。

観覧車は時間にして15分しか乗れないので、頂上を過ぎたらもう終点が見えてくる。

頂上からキスをした事もあり、折り返しからの時間が異常に短く感じてしまった。

・・・まあ、また乗ればいいさ。

琴美をしっかりと抱え、軽いキスだったのに足腰が覚束ない琴子を観覧車から引っ張って出し、もう地上に戻ってしまった。

「ねえ、入江くん・・・あたし、休憩したい」という琴子のワガママを叶えるべく、早めにホテルに戻った俺達だった。

* * *
やっぱり月曜日書けなかったショック! そしてとうとう本日がチャットの日です!!
直樹の誕生日ネタないよー。
これの最終話(とも限らない・・・終わりは決めてないけど、ホテルが山場よね)書いて誤魔化すかもです。

では、本日こちらでお待ちしております。私は9時くらいから大体いるかな?
盛り上がり出すのが10時過ぎ。
カウントダウンしてすぐに撤収するので、お時間ある方は一瞬だけでも遊びに来ていただけると嬉しいです。

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イタキス期間2020