出掛けた当初は電話する気は0だったが、現在反射的に自宅に電話をかけている。
ありがたい事に圏外とはならなかった様で、スムーズに自宅に繋がり呼び出すまでもなくおふくろが出た。
「俺」と名乗ると、おふくろは分かっているとばかりに『迷惑だった?』と聞いて来た。
はっきり言えば迷惑だが、それを言ってしまうとおふくろと琴子の仲が拗れかねない。
「その前にはっきりさせたいんだが、俺は別なホテルを予約しているし、ここに泊まる様な施設もなかったからまさかそんな手配がされているというのも寝耳に水な話だ。どうやって、どこを予約したんだ!?」と聞いたら話は簡単。
相も変わらずパンダイの名前を出して視察という形で借り受けたのだそうだ。
じゃあ、断る訳にはいかないな。
おふくろは断ると簡単に言うが、パンダイの名前に傷を付けるのは俺が許せない。
「いや、いい。こっちの予定を変更する。琴美も疲れているし、まだ遊び足りてないようだから琴美に合わせてこっちに泊まる事にする。ホテルの方はキャンセルす・・・」と言おうとしたら、おふくろがどこのホテルか聞いてきた。
そっちも親父の名前で何とかしてみるそうだ。
何でもかんでも、親父、親父・・・。
「いいよ、俺の名前で取ったんだし」と苛ついて少し声を強めたら寝ていた琴美が「ふえっ」と泣き出し、琴子が無言であやしていた。
隣で聞き耳を立てて静かにしていたので、琴美をあやす際に言葉を出せずにいるようだ。
多分緊張して琴美を不用意に抱きしめたのだろう。
若干パニくってる琴子を見ながら俺が冷静になった。
「なあ、親父の名前出すなら・・・今日じゃなく明日の宿泊に変更できるか?」と聞き直すとおふくろは『任せて』と嬉しそうに請け負い、軽く支配人に電話をすると言ってのけた。
実は俺が予約した時も実家の住所で取ったものだから、支配人が気付いて俺に直接連絡して来た。
自宅にかけるのは不都合があると判断したのか、俺が予約時に伝えた携帯電話の方に連絡をくれたので琴子やおふくろには内緒に出来たのだが、それが仇となった。
まあ、不倫旅行ではないから自宅に連絡を入れてもらっても問題なかったが、おふくろに行先を知られたくないとまるで未成年男子のような思考が悪かったのかもしれない。
この辺は刷り込みに等しいと思う。
避けて失敗するのなら、利用するまでだ。
「それと、本来は素泊まりで予約していたが、琴美の事もあるし夕食を部屋で取る事にする。俺は病院の方へ明日も外出するから休日当番の順位を下げてもらう様に交渉する。ホテルの方を全面的におふくろに任せたいけど・・・ああ、悪いな」
隣で琴子がホッと息をつく。
お前も緊張させて悪かったよ。
今度からきちんと予定は告げないとなと反省した。
その後 病院にも連絡し、元々2日間は旅行と論文執筆の為に緊急性がない場合は呼び出さない様に根回しは済んでいたので、あっさりとOKを取れた。
上司の弱みは握っておくもんだ。
まあ、お盆には遠出せず自宅待機及び勤務日数を増やす事で元々調整していたから、想定内なトラブルとも言える。
やっぱり琴子と旅行をする際は混雑時は避けるのが鉄則だ。
愛しい娘も居るし・・・と、琴子にジェスチャーで琴美を渡す様に指示し、琴子はクスッと笑いながらも無言で琴美をゆっくり手渡してきた。
* * *
お待たせしましたー。チャットに意識を向けすぎて、事前予約をしなかったのが失敗
コテージと書いたのに、コテージがなかったという(笑) 衝撃の調査ミス
色々やらかしましたが、何とか書き終えました(というか、元々このくだりの予定がなかった 笑)
こどもの国の宿泊施設は自然研修センターかキャンプ場の様です。
流石にテントは積んでないしなーと悩みました。買ったのはファミリーカーであってキャンピングカーでもない。
捏造で書いているけれど、実際にある施設の変更はなるべく避けたいのでこんな感じに落ち着きました。
ご都合主義ですみません。