琴子が夜勤のローテに入ってから生活がすれ違うようになった。

とは言っても、俺は昨年神戸に居てすれ違いどころか単身赴任だったから、まだお互いの距離が近いだけマシと思っているが琴子はそうじゃない。

ようやく俺が帰って来たのに一緒に居れないなんて辛いと愚痴を零す。

せっかく看護師になったんだから一年は働いてほしいと思っている俺の意をくんでなのか、もう辞めたいと言わないのだけは感心しているが、それも時間の問題かもしれない。

上司と部下なら酒に誘うところだが・・・琴子は大トラになる。それも出来ない。

故に、西垣先生と二人きりで食事なんて絶対に行かせられない。

「そういえば、病院にも慰安旅行ってあるんだね」と唐突に話を振られ「ああ、前の職場でもあったな」と言ったら琴子に食いつかれた。

ど、どーしたの、その時!!」と凄い剣幕で言われたが「行ける訳ねーだろ。研修医の分際で。その日は当直した」と言ったらホッとした顔をした。

「あー、良かった。看護師さん達に襲われたらどうしようかと」と言われ、思わず吹き出す。

「バーカ、男の方が力強いんだから襲われるようなヘマするか」と言うと、「酔ったら分からないじゃない」と言い返してくる。

「俺はザル」と一言言ったら「あっ そっか」と納得された。

逆に「お前は飲むなよ」と釘を刺すと「分かってるってば~」と手を上下に振りながらヘラヘラと笑う。

「特に西垣先生とは」と念のために伝えると、「行かないよー。だいたい、西垣先生ってあんなの口だけでしょ。あたしの周りで実際に連れて行ってもらった子居ないよー」と呑気な事を言う。

それはみんながお前をガードしているだけだ!!

まあ、西垣先生の趣味から察するに、琴子達のメンバーで声をかけそうなのは小倉と品川。

品川に執着している船津のせいで品川は守られているし、小倉に関しては特定の誰かは居なさそうなので声をかけても問題ないだろう。

いちいち触れ回るヤツじゃないしな。

「それよりも、入江くん。大蛇森先生とは飲みに行かないでよ」と真剣な声で言われ、何故に大蛇森先生が!?と思ってしまった。

「課も違うから、サシでは行かないだろうな。でも学会で一緒になったら」

絶対にさせない!!」とこぶしを握って憤っている琴子の姿に吹いてしまった。

「お前は一体どんな権力持ってるんだよ」と聞くと、琴子は急に現実を見たらしく「そ、そーゆーのはないけど・・・」とモゴモゴと言葉を濁す。

まっ これくらいで許してやるか。

そろそろ、妻の口から他の男の名前が出るのはいい加減嫌だからな。

「ほら、そろそろ寝るぞ。お前は休みでも俺は仕事」と言ったら、琴子が「大変っ 入江くんを休ませてあげないと妻失格になっちゃうあせる」と慌て出す。

別に失格なんて思っちゃいねーよ。

やっと戻って来たのに、勝手にリタイヤを考えるなんて許せない。

俺は部屋の電気を消すと「夫婦の確認しようぜ。妻失格なんて、夫の俺がさせる訳にいかないから」と琴子の耳に囁いて同意を得た。

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大変、お久しぶりです。通常ですと、1週目に更新してるんですが今月は忙しかったあせる
うちの地域は短縮授業から入りまして、分散登校な上に午前授業。
昼以降は子供が家に居るので話を書くどころか考える暇もない日々でした。

まだまだ生活が安定しない中ですが、これから少しづつ新たな状況に慣れて行けたら病気も蔓延せずに済むのかなと微妙に自粛を引きずっています。
ご希望の秘蜜の再開も全くの手つかずなので、気長にお待ちくださいませ。
家に子供がいると、どうしても思考が中断してしまうので長い話が書けません。
やっぱり幸せな話は読みたいと思うので、いつか結婚までは書き上げたいと思っています。