その日の夜、琴子とようやく結ばれた。

「な、直樹さん、あたしでいいの?」と今更な事を聞いてくる。

お互いベッドに居るのだから、出来れば会話で長引かせたくない。

「ああ・・・」と返事をしたものの、それだけでは不十分なのは明白。

「よ、良かった・・・うん、あたしも頑張るから。じゃあ・・・お、おやすみ」と布団に潜ろうとする琴子を抱きしめて止めた。

「頑張るんだろ。寝るなよ」

そう伝えたら、「じゃ、じゃあ、起きて喋ろっか。今まで色々あったもんねー」と無駄に時間を引き伸ばす。

「ああ、色々あったから・・・今度こそ、きちんと夫婦になりたい」とようやく意思を伝えると、琴子は真剣な顔になって「こ、こちらこそ宜しくお願いします」と頭を下げた。

こうされると距離が遠くなる。

やはり、はっきり言おう。

「琴子、俺達は夫婦だ。子供を作って・・・あの玩具で遊ばせたい。協力してくれないか!?」

琴子は困った様な顔で俺を見つめた後、小さな声で「はい」と返事をした。

と、その流れで事に及んだ訳だが返事の声は小さかったのに「暗くして」や「胸は見ないで」、「お願い、嫌いにならないで」等、やっぱり大騒ぎしたのだった。



これが良かったのか、悪かったのか・・・琴子はこの一発で妊娠したらしい。

ようやく身体が俺に馴染んだ頃、琴子は体調を崩して病院に行き、妊娠が発覚した。

おふくろが騒いで、琴子のお義母さんの命日だというのにパーティーだから早く帰って来いと電話で告げられ、危うくキレそうになる。

勿論、親父にも同じ電話がいった為に社長室に呼び出された。

10月に出した企画の商品はクリスマス商戦の目玉品で今市場で馬鹿売れしている。

それのイメージモデルにしないかと言われたが、まだ生まれてもねーのに無理を言うなよ。

孫馬鹿極まれりだろ。

さっきおふくろから電話で聞いて知ったばかりで、全く実感がないのに社長室からデスクに戻ったら皆から口々にお祝いされた。

どっから漏れたっむかっ 

早すぎだろ、その情報!!

結局、精神的に疲れたのと、自分でも一刻も早く確かめたくて会社を早退し家に戻った。