朝から琴子に疲れながらも会社に行き、ささっと仕事を終わらせて昼に家に戻った。

会社に行く前に琴子に言われたが、ふぐ吉は土曜日は昼営業をしていないので開店は6時からだそうだ。

仕込みの時間は4時頃から随時らしく、金之助はあの店の一番下っ端なので4時頃には店に居て掃除をしているだろうと。

「昨日小鉢割っちゃったから、その弁償も含めてあたしアルバイトしてくるよ」と言う琴子を説得して俺が支払いする事にした。

よく考えたら給料が入った通帳のみを琴子に渡していただけなので、琴子が使用しているかどうかなんてチェックしていなかった。

俺は結婚前から使用しているクレジットカードがあるから何かあればそれで引き落とししているし、独身時代の貯蓄もあるので給料口座はすべて琴子の生活費として使用権を譲渡していた。

キャッシュカードあるだろと聞いたら、俺の誕生日に設定しようとして銀行に止められたらしい。

「だって、11月12日なんだもん!! しかも、誕生日は設定しない方がいいって。あたし、覚えらんないよーあせる」と泣かれると慰める言葉が思い浮かばない。

他の男の誕生日にされるのはムカつくし、琴子だからどうでも良い番号は覚えられないだろう。

結婚記念日は役所に提出したのが月曜日なので、11月21日になった。

こっちも1121だしな。

「じゃあ、琴子の誕生日に近い9293は!?」

「何の語呂合わせ??」と聞かれ、そこは気付くのかと少し驚いた。

「苦肉の策(9293)」と言ったら、「なるほどー、929(苦肉)39(策)ね」と一桁増やした。

これは絶対に間違えるな、琴子なら絶対に!!

「じゃあ、俺と琴子の誕生日を足して20(9+11)40(28+12)は!?」と言ったら「いいね」と決まったが、おふくろから「お兄ちゃんが下ろして現金渡しなさい」と命令され生活費の件は決着がついた。

琴子の性格で勝手に下ろすのは無理だよな。

服や下着類は今までのがあるから良いと断るのを、無理やりおふくろが買い与えていたようだ。

今までかなり苦労していたらしい。

パンダイの社員になってしまったが為にアルバイトに行く訳にもいかず、お義父さんも結婚したのに実家から金だけやる訳にはいかないと援助も出来なかった様だ。

早く言えよっむかっ 

そりゃ遊びにも行けないだろ!!

「友達と出掛けてもいいし、好きに使えよ」と今までの詫びも含めて百万円を渡したら「み、見た事ない額」と手が震えていた。

この家の人間で誰も盗む奴は居ないが念のため、琴子用の金庫を買う事にした。

暗証番号はキャッシュカードの番号案の2040

金庫は明日見に行く事にして、時間になり二人でふぐ吉に向かった。

おふくろに笑顔で送り出されたのが怖い。

何か企んでないだろーな!?