慣れない二人寝に悪戦苦闘しながらようやく微睡んでいたら、琴子の悲鳴で目が覚めた。

寝不足で頭がすっきりしない時に、その悲鳴を聞いておふくろと裕樹の二人が飛んで来た。

お前ら、夫婦の寝室にノックもせず飛び込んでくんじゃねーよっむかっ

「どーしたの、琴子ちゃん!!」とおふくろが琴子に駆け寄り心配する。

「あ、あ、あ、あたし・・・とうとう、直樹さんのベッドにまで転がって飛び乗ってしまったんです!!」と叫び、裕樹を爆笑させた。

俺は寝不足もあり、頭を抱える。

どこのサーカスだよむかっ」と呟くと、裕樹はうずくまって咽ていた。

昨日の件を知っているおふくろの目がキラーンと光り、良からぬ事を考えているなと思ったが、俺は今日やらなければならない仕事もあり、この際起きる事にした。

「土曜日は半日業務だけど・・・ちょっと寄りたいところあるから、夕方に帰宅する」とベッドから起き上がって皆に伝えると、おふくろが怒り口調で「どこに行くのよむかっ」と問い詰めて来た。

言いたくはないが、また拗れるのはごめんだと思い「ふぐ吉」と答える。

琴子が「何しに!?」と真顔で聞くのが堪えた。

「・・・昨日、お前をバイクに乗せた奴に」
「金ちゃん?? なら、あたしが払うから大丈夫よ。直樹さん、お仕事だから早く行ってね」と笑顔で言われ、寝不足なのでキレた。

「金は俺が払う。琴子に恥をかかせたのは夫の俺なんだから。それとあいつに話がある」と言うと、察しが良すぎるおふくろに「お兄ちゃん、負けちゃダメよ」と応援された。

「え!? 金ちゃん、ケンカ慣れしてるよ!! 大阪でブイブイ言わせて来たって。どーしよ、直樹さんの顔変わっちゃう」と言われ、どんだけ殴られる想像してんだよと心の中で悪態をついた。

「話合いだ。誰がいきなり殴るか」と言うと、琴子は「えー!? マンガだと、女性を賭けて戦うんだよ。そして勝った方が持ってちゃうの」と良く分からない持論を力説した。

「どこの原始人だ」と言うと、裕樹が床を叩いて笑う。

裕樹、笑いすぎだろ・・・。

琴子は不服そうに「手袋投げて決闘だもん」と頬を膨らませていた。

それもいつの時代だよ・・・。

おふくろが「ベルサイユのバラね」と目を輝かせて琴子の手を握っている。

この分だと、俺は西洋の剣で貫かれそうだ。

「手袋ねーし」と言ったら、琴子がクローゼットを勢いよく開けて「はい、誕生日プレゼントに買っておいたの」と興奮しながら渡してきた。

誰が決闘するかっむかっ