なかなか琴子が起きないので今日話すのは諦め、シャワーを浴びて書斎でお義父さんが帰宅するのを待った。

定休日なのにお店の大将だからか営業時と同じ時間に帰宅したようだ。

その音を聞いて二階から降り、お義父さんに挨拶するとお義父さんは「うおっ」と驚いた。

「お話があります。今日の事できっと分かってるでしょうが」と言うと、お義父さんが使っている部屋に案内してくれた。

うちであってうちじゃない相原重雄さんの自室。

琴子がお嫁に来る際に、親子二人きりならお義父さんも是非とこの家に呼んだ。

勿論俺も賛成した。

孫を見せられない代わりの罪滅ぼしをしたくて。

お義父さんの部屋に入ると正座して今までの非礼を詫びようとしたが、お義父さんは「本当に直樹くんは後悔しないかい?」と的外れな事を聞いて来た。

「後悔しません」

「あいつはね」と言われ、叱られる覚悟をしたら「何にも出来ない奴なんですよ」と言われた。

分かってます

うっかり、否定するより先に即答してしまった。

「頭も悪いし」
「分かってます」

「料理もできないし」
「分かってます」

おっちょこちょいの早合点で、失敗ばかりで」
「分かってます」

「だけど」と言われ、再び緊張する。

「明るくて根性あるし、一途でかわいい奴なんですよ」
「分かってます」

琴子の良さは、もう完全に・・・。お義父さんが大事に育てていた事も、分かっています。

「結婚して、今更かもしれません。でもけじめとして・・・琴子さんを僕にください。必ず、幸せにします」

お義父さんは俯いて袖口で顔を拭った後「琴子をよろしくな、直樹くん」と俺を見つめて一言、そう言った。

その後「おーい、母さん」と仏壇に呼び掛けてしまったので、仏壇にお辞儀をして部屋を出た。

琴子が起きている事を期待して寝室に戻ったが、起きるどころか床に落ちても爆睡中の琴子に苦笑し、悪いと思ったが俺のベッドに回収して抱きかかえて眠った。

明日、驚けよ。

そう思ったが、明日まで俺が持たず、今までの腹いせとばかりに何度も琴子に蹴られたのだった。