さっき怒鳴り込んだ店で、現在パーティーをしているというのは異常事態ではなかろうか?

俺と琴子はあわや離婚というところまで行った感があったが、お互いの気持ちを確認したら両想いだったという結論に落ち着いた。

それが何故パーティーになるのか理解できないが、レストランの食事をキャンセルした以上は別なところで食べないといけない。

それが店であっても家であっても構わないのだが・・・怒鳴り込んだ店―しかも定休日―に、店の大将自らを働かせて、予約もしていない息子の年齢の男とその家族が和気あいあいと飯を食うのは異常だろう。

琴子なんか抱きしめた時潰してしまった様で、キスというよりは人工呼吸に近い気分だった。

さっきまで座敷の隅に転がっていて、飯が出た途端起き上がって食べ始めるって・・・お前は子供かっ

いや、大将の子供なんだが。

今の状況にすごく納得が行かない。

「もう、お兄ちゃんってば」と日本酒をクイクイと飲みながら俺に絡んで来るおふくろはいたく上機嫌だ。

店の前に緊急停車させたという、あの車をどうする気なのか。

飲酒運転はさせられないから、俺が運転して帰るしかなさそうだな。

おふくろが煩く言うから、運転免許を取っておいて良かったぜ。

男が自動車免許持たなくてどうするのと呪詛のように毎日言い続けるものだから、頭にきて大学生になる直前の春休みに一発試験で取って来た。

自動車学校なんか通ってられるか。

金持ちの息子云々と言われるのも嫌で、自分の貯蓄から出して保証人欄にだけ親父に署名してもらった。

迷惑・・・ほどではないな。手間をかけたのはそれくらいだろう。

「ねえ、お兄ちゃんっ」とグイグイ肩を掴んでくるおふくろの手を払いのけ「何だよ」と返事をしたら「絶対に琴子ちゃんを幸せにしなさいよ」と座った目で言われた。

「分かってるよ」と返事をすると、琴子が滝の涙を流す。

「嬉しいですー、お義母さーんあせる
うわーっあせる 僕は裕樹だ、琴子!!」

琴子も酔っぱらってるのか、裕樹に抱きついて号泣している。

なんでお前は裕樹の隣に座ってるんだよっむかっ

因みに俺の左隣にはこれから来る予定の親父、俺の右にはおふくろが座って絡んでる。

向かえに裕樹で、さっき起きた琴子は余っていた裕樹の隣に座っていた。

本当は俺の隣に座らせたかったんだが、おふくろが席を移動しようとしない。

いや、おふくろに真向いに座られて説教くらうよりは全然良いのだが・・・。

「具体的に語ってちょうだい」としつこく絡んで来るおふくろを黙らせるのには本当に苦労した。

ここで語れるかっむかっ 

裕樹と琴子にちょっかいかけてた男の前で、ヤリまくって子供作る計画だとは。

「おふくろが素面になって、琴子も冷静になったらな」と一言言ったら、裕樹が「無理じゃない?」と即返事をした。

「母さんが素面に戻っても、琴子が冷静だった日は一度も無いよ」と失礼な事を言う。

そんなまさか・・・じゃない!!

「それは俺の判断ミスだ。悪かった」

「ねえ、ちょっと。二人して酷い事言ってない!?」

奇跡的に今、琴子が冷静にツッコミした。

何でこのタイミングなんだよっむかっ

冷静になれ自分と念じながら、運転する為に烏龍茶を煽った俺だった。