珍しく俺の書斎が賑やかなので、裕樹もやってきて大所帯になったため、下におりて夜食を食べた。

その後リビングでおふくろにインタビューと、その輪に加わった裕樹のアイデアも参考にする事になった。

琴子が俺に『いいの?』という不審な目を向けるが、ここで裕樹だけ排除というのは逆に悪いだろと言いたい。

こういうのは臨機応変なんだ。

琴子がおふくろ担当で、俺が裕樹担当になり、それぞれの意見を繋ぎ合わせるとこうなった。

男はやっぱりロボットで戦いたいし、変形させて遊びたい。

女は可愛らしいもの、柔らかいもの、当たっても傷がつかないものが理想。

これは母親の意見だからだろう。

でも、そうなると超合金ロボの欠点が見えてくる。確かに当たると痛いな。

「ありがとう、参考になった」と礼を言うと、おふくろは琴子の手を握り締めて喜んだ。

「琴子ちゃんのお陰よ。あのお兄ちゃんがお礼を自発的に言うなんて」だと。

「そんな事ないよね、お兄ちゃん」と裕樹が必死に俺を擁護するが、こんな光景も琴子が来てからだとふと気づく。

もう少し琴子を観察したくなり「琴子、俺の書斎でまとめるから、またコーヒー持って来てくれ」と頼む。

琴子は笑顔で「はーい」と返事をしてキッチンへ向かった。

「琴子ちゃん、ワシのお茶も頼んでいいかい?」と何故か親父も頼んでいる。

琴子は「わかりましたー」と快く返事をしていた。



親父のお茶を先に淹れたからなのか、琴子は少し遅れて書斎にやってきた。

その間にまとめた企画書は7割ほど出来ていて、後は琴子の意見(感想)を入れてまとめたら完成だ。

「はい、直樹さんお待たせー」と俺の机にコーヒーを置くと、斜め後ろから俺が書いている企画書を眺めた。

これから渡して読ませるつもりだったのに、こいつは・・・。

「すっご。あたし必要なかったね。あたしってば馬鹿だから、つい自分のコーヒーまで持ってきちゃった」とお盆を抱えながら、器用にも自分の頭をかく。

そのお盆の上に自分のコーヒー乗せてるんだから、そんな不安定な体勢取るなよ。

「・・・必要だよ。そのコーヒー、そこに置いて早くこれ読んで」と企画書をペラペラと振ると、琴子は慌ててコーヒーをドンと置き、俺の手から企画書を受け取る。

サッと目を通したみたいで「凄いよ、直樹さん。完璧」とのたまった。

お前は俺の上司かっ

「へー、この企画がすごいってわかんの」と嫌味を言ったら、琴子がブンブンと勢いよく首を縦に振る。

「うん!! 絶対、一位だよ。だって直樹さんは負けなしなんでしょ」と輝くような笑顔で言った。

「誰がそんな事言ってた!?」と琴子に聞くと「裕樹くん」と即答された。

・・・確かに。

弟は俺が一位しか取った事ない事をよく知っている。

「琴子がそう言うならそーかもな」と投げやりに言うと、琴子は「うん、そうだよ。あーあたしもその瞬間見たいなー」と夢見るように言った。

それくらいなら叶えられるかもしれない。

「会議に出るか!? まあ、お茶くみくらいだけど」と提案すると、琴子は「行きたーーーい」と言って喜び、その拍子に机の端に置いていたコーヒーを床に落としぶちまけた。

俺の好意で琴子を喜ばせるはずが、逆に怒りに満ちなければならないんだ!?

二人で(無言で)掃除したのは言うまでもない。