少し冷えてしまったコーヒーを飲みながら琴子に何を言おうか考えていると、ドアがノックされておふくろが顔を出した。

「あっお義母さん」と琴子が真っ先に反応する。

コーヒーを口に含んでいた俺はそれを飲み込んでから喋ろうとしたら、琴子が「ちょうど良かった。インタビューしたいんです」と言って俺を笑わせた。

「インタビュー(笑)」

「直樹さん、そこ笑うところ!?」と琴子が頬を膨らませて怒るが、おふくろはそんな琴子を見てニコニコし、「いつでもいいわよ、インタビュー。でも、そろそろお腹空かない、二人共!?」と言って、食事を乗せたお盆を俺のデスクの上に置く。

「下にも軽くは用意あるから、これで足りなかったら言ってね」と笑顔のおふくろに、琴子が「十分ですよ。あたし、お母さんにこんな事してもらうの夢だったんです」と言っておふくろを感動させていた。

「琴子ちゃん」
「お義母さん」

俺を抜きに二人が抱擁しあっている。

いや、俺を間に入れられるとすごく迷惑だからいいんだが・・・。

なんで琴子はこんなにおふくろに懐いているのだろうかと思ったら、琴子の口から「お義母さんの温もりっていいですね。あたし覚えてないから、すごく嬉しい」と本音が漏れた。

ああ、だからか。

「7歳で亡くなったんだっけ」とうっかり歯に衣着せぬ物言いをしてしまったが、琴子は「うん、そう。物心ついた頃には入院してて、いっつも点滴してた。ウエディングドレス姿は知らないけど、病院の白いパジャマ着てたよ。そうそう、最後も白い服だったって。あっ着物か」と言うので死に装束だと分かった。

「琴子ちゃん、あたしを本当の母と思ってね」とおふくろが琴子の手を握り締めて泣いている。

「あたし、直樹さんと結婚して本当に良かったです」と言われると、俺はおまけかと言いたくなる。

なんだろうか、このムカツキは。

「後は、お兄ちゃんと本当の夫婦になるだけなんだけどねぇ」とおふくろにジト目で睨まれる。

そこで『じゃあ、なるか』とは言えないだろーが。

「あはは。そこは、まあ・・・諦めてるから」ってどーゆー事だ!!

「裕樹くんが言うには直樹さんと並ぶほどの美貌と頭と胸??」と言いながら、自分の胸を見て落ち込んでいた。

「確かに・・・俺と並ぶのはその胸くらいだな」と言うと「み、見たの!?」と驚かれた。

「キャー、お兄ちゃん見たの!?」と喜ばれると返答し辛い。

見てないが、見たとして夫婦なのに何が悪いと思う。

「俺は見てないが、俺の裸は見たろ、琴子」と言うと、琴子が真っ赤になる。

「キャー、期待してなかったけど、ヤル事はやってるのねぇ」とハイテンションなおふくろに琴子は「ち、違います、違います事故です偶然です!!」と必死に言い訳していた。