昨日、テニスで優勝したからお祝いという話だったが、お盆が近くて親父の都合がつかなかった。

おふくろも付き合いで行く事になったので、子供3人で飯を食う事になった。

相原のおじさんは夜店に行くが、その前におふくろの代わりに飯を作ってくれるという事だったから特に問題はないはずだった。

だが、子供3人中大人なのは俺だけで、裕樹と琴子は親が居ないというだけで騒ぐ。

琴子が友人に借りたビデオがあるから見たいと言い出し・・・俺は裕樹と共にそれを見る羽目になった。

これは一昨年アメリカで制作され、昨年日本で公開された映画だが、R-15指定がついている。
(※『チャイルド・プレイ』)

裕樹には見せたくない作品だったが、タイトルを見て「見るな」とは言えなかった。

裕樹なら・・・まぁ、大丈夫だろう。

そう思った通りに琴子の方が叫び声をあげてクッションに隠れたり・・・最終的には俺の背中に張り付いていた。

そこまでするなら見るなっと何度怒鳴ったか知らないが、琴子は俺とこのビデオを見るという条件で借り受けたのだそうだ。

だから、今まで出してなかったのかよっと思ったが、夏休みじゃなければこんな酔狂な事には確かに付き合わなかっただろう。

けれど・・・人にくっつかれるというのは、クーラーをかけていても暑苦しい。

しかも・・・何故か、涙目の琴子を見ているとすごく変な気分になる。

もっと泣かせたいとか・・・どこまで心拍数があがっているのか気になるとか・・・これ以上密着して何をする気だとか・・・。

きっと琴子は考えてないのだろう。

これを貸した悪友が、こうなる事を予測した上で俺たちの仲の進展を促進させたい狙いが見え隠れどころか見え透いているのだが・・・借りた当の琴子はそんな裏の思惑をとことんまで無視して映画に入り込んでいる。

俺という壁があって助かったという感情がダダ洩れなのが非常にムカつくむかっ

ビデオを見終わった後、雑魚寝でいいから一緒に寝たいと訴える琴子を居間に残して部屋に帰った。

誰が女を自分の部屋に泊めるかっむかっ 彼女でもないクセに!!


その日の夜は怖くて自室で寝られないからと親父さんの布団で寝たらしく、意外にも琴子は翌朝スッキリしていた。

夢に母さんが出てきて・・・琴子曰く、一緒に映画の感想を言い合ったんだと。

そこは抱きしめてヨシヨシじゃねーのか!?と思ったが、琴子は共感してほしかったようだ。

高校生ならそれで良いのかもしれないが・・・だったら友達でいーじゃねーかっと思ってしまう。

いまいち、琴子の話を聞いてもおふくろさんがどういう人でどういう役割を担っているのか分からない。

まあ・・・どーせ、その内この家を出るのだから俺が理解する必要は無さそうだが・・・昔から分からない事は自ら調べるクセがついているので、気になる事を残しておけない性質だ。

俺はそれとなくおじさんにおばさんの話を振った。

だが、家の事があるから墓参りは冬にまとめて行くだろう事を聞き、まとめるって何だ!?と思いつつも自分が興味あると思われるのは癪なのでそれ以上の質問は控えた。


それから4年後、琴子と結婚し3作まで増えた続編を二人で見る。

今度は裕樹という邪魔者はなく、俺は琴子を好きなだけこの身体に張り付かせていた。

壁になった礼として、涙目の琴子を思い切り貪る楽しみの為だけに・・・。