俺はおふくろにそそのかされ、今琴子の部屋のドアを開けようとしている。

俺が言った「キスしたぐらいで赤ん坊ができるのかよ」の台詞に

「じゃ、早く赤ん坊ができるようなことしてちょーだい」と力強く言い返したおふくろ。。。

しかも「チャンスはいっぱいあったでしょ!! んもー、お兄ちゃん奥手なんだから」などと言いやがる。

確かに琴子は部屋に鍵をかけていない。

いつだって襲おうと思えば襲える。

しかし・・・それをするには俺のプライドが許さない。

あいつなんて全く色気もないし・・・でも須藤が押し倒してたか。

という事は、だ。

あいつにもそれなりに男を惹きつける魅力みたいなもんが無いとは限らない。

ここで襲っておかないとおふくろも五月蝿いし・・・

金之助だって結婚を考えてるくらいだし・・・

アニメ部とかいうやつらだってわざわざ琴子を見るために合宿してたし・・・

俺はノックもせず琴子の部屋のドアを開けた。


琴子は机に突っ伏して寝ていた。

その机には俺宛のラブレターが置いてあり、琴子はそれを手で押さえるように寝ている。

俺はその手紙を手に取って読んだ。

『はじめまして入江くん。わたしはF組の相原琴子といいます。
あなたは私のこと、知らないでしょう。けれど私は知っています。
入学式のあいさつをした入江くんの知性とカッコ良さにあこがれて2年間同じクラスになる望みもないので、思い切って私のきもち、手紙に書きました。 入江くんのことが好きです』

俺は懐かしいと思いながら、その文章をスラスラと読む。

これは一度目の同居で琴子が机で寝てる時に、たまたま部屋に入った俺が偶然見つけたものだった。

俺に渡す予定だったラブレターを琴子が持ったまま寝てて、それを見た俺は初めてラブレターの中身を見てみる気になったんだっけ。

想像していたラブレターの内容とは違い、慎ましく「好きです」以外の要求が書かれていなかった。

こいつは俺にこの気持ちを伝えたかったのかと、不思議と心に【納得がいく答え】を伝えられた気がした。

ああ、分かったよ。お前の気持ちは・・・

じゃあ、俺たちは『その関係』になっても大丈夫だよな。

俺は寝ている琴子をベッドに運ぶと、そのパジャマに手をかけた。

ひとつずつ丁寧にボタンを外す。

琴子は魔法にかかったように起きない。

全部外れた。

しかし・・・何故か、こいつの肌が見えない(夢なので)

パジャマをめくればいいんだ。

俺は琴子の寝顔を見ながら、とりあえずその唇にkissを落とした。

琴子が寝ているので、重ねるだけのkiss

すると琴子が目を見開いた。

ああ、驚いている。

そして俺は口を放すと・・・ザマーミロって違う!!

「琴子」

そう呼びかけて琴子を抱き起こすとパジャマを脱がせて・・・

――自主規制――
(直樹氏、想像の限界を超えた模様)

気付けば琴子は裸で俺の上に乗っていた。

何だろう、何故こいつはこんな積極的なんだ?

まるでA○のような・・・そして思い出す。

昔須藤に見せられた下らない○Vの内容を。

そういえば琴子にしては胸もでかいし、くびれもある。

俺が抱きたいのは琴子、お前だ。

誰だよ、俺の上に乗っているヤツは!!

こんなの琴子じゃない。

俺は体勢を変えて琴子を下にしようとしたが、何故かこいつは俺の上に乗ったまま。

そんな馬鹿な。

この俺の上に乗るだと!?

琴子のくせに!!

お前がなんで上なんだよむかっ

琴子!!
 お前は俺ので、な(啼)いてりゃいいんだむかっ

そう言って飛び起きたら、ビックリした顔で俺を眺めている裕樹と目があった。

「お、お、お・・・お兄ちゃん。こ、琴子と喧嘩する夢見たの??」

―――俺は、裕樹に本当のことは言えなかった。

「ああ」とだけ返事をして、ため息をつく。

裕樹に「起こして済まなかった」と声をかけ、またベッドに寝転んだ。

「いいよ、お兄ちゃん。おやすみ」

裕樹もそう言ってベッドに寝る。

「お兄ちゃんの方が強いんだから、琴子をやっつけられるに決まってるよ」

と、応援までされた。

俺は・・・どうすればいいのだろうか。

体にベッタリ嫌な汗をまとったまま、布団の中でまんじりとしない朝を迎える羽目になった。