「うー、さっぶ」と言いながら廊下から戻ったあたしは「そういえば、そろそろなまはげの季節だ」と呟き、入江くんの目を点にさせた。


なんでも知ってる旦那様だけど、まだ知らない事もあるのねと思うと勝った気になってちょっと嬉しくなる。


「ふふ、なまはげは本物見た事ないでしょう」と言ったら、馬鹿にされたと思ったのか入江くんがあたしを睨む。


「本物、ねぇ。そりゃ無いな」


その言葉にあたしもムッとする。


「そ、そりゃ、本物の『なまはげ』は会った事ないけど? あたし、いい子だったし」と言ったら、入江くんは吹き出した。


ま、また、からかったわねぇむかっ


あたしが怒ったのを感じ取ったのか、入江くんが「そういや、お義母さんの実家は秋田だっけ」と聞いて来る。


「うん、そう。小さい頃は確か冬の時期に来てたんだって。ご馳走用意して待ってたってお父さんが言ってたな」


あたし自身はお母さんから聞いた覚えはない。


多分小さい頃に教えてもらったんだろうけど、お母さんが死んじゃったのも小さい頃だからあまり覚えてはいない。


そういう意味では少し寂しいと思う。


あと、せっかく思い出したのに、このまま忘れてしまうのも勿体ない。


「ねえ、入江くん。なまはげやってみない!?」


ふと思いついて口に出したら、入江くんはすごく嫌そうな顔をした。


「俺がやるのか!?」


言われて初めて気づく。


そういえば、誰宛に??


入江くんがなまはげになって、誰を怖がらせるの!?


あたし??


二人しかいないのに、一人はなまはげ、もう一人は??


「む、無理だね汗」と愛想笑いをすると、入江くんは今頃気づいたのかと言った顔で「バーカ」と言って部屋から出てしまった。


入江くんって前から思ってたけど、頭いい割には口が悪いわよね。


「なまはげに攫われちゃえばいいんだ」と言いながら、あたしも部屋を出て下に下りるとお義母さんが朝食を用意して待っていた。


「おはようございます」と挨拶をして自分の席に着く。


温かいお味噌汁を飲みながら、さっきの話をするとお義母さんは「楽しそうね」と言いながらも、やってみようとは言わなかった。


うちに居る未成年は裕樹くんだけだもんね。


「相原さんはお仕事忙しい月だし、パパは見た目福の神だから難しいわね」と言われ断念した。


「それに琴子ちゃん、もうすぐアレでしょ」と言われ、そろそろ生理が来そうなあたしはちょっと顔を赤くする。


「いや、確かに……ですけど


モゴモゴと口ごもってたら、裕樹くんから突っ込まれた。


「あ、あのなぁ、もうすぐバレンタインデー近いだろって事だ!!」

 

「ああ、そーゆー事」


急にお義母さんが伏字を使うから、何事かと。


「うーん、でも仕事も忙しいからやっぱり購入ですかね」


手作りには憧れるけど、そもそも入江くんは甘い物が好きじゃない。


「そーいえば贈り物ってチョコレートじゃなくても良いらしいんですよ。悩みますね」とあたしが言うと、何故か裕樹くんが「悩むな」と怒った。


「なによぉ、裕樹くんには関係ないでしょ」と怒り返すと、「お前の数々の失敗作を食べ続けた僕に言う言葉かむかっむかっ」ともっと怒られた。


そーいえば、そーかも!?


「じゃあ、安定のチョコで」と言ったら「チョコは食べ飽きた」と贅沢な事をぬかす。


「もうっ 飽きたとか、チョコ以外とか、注文おおいわねぇ。それなら、あっと言わせる物を作ればいいんでしょむかっ」と言って、出て来た案は『鬼』の面だった。


着替えて戻って来た入江くんが「まだなまはげの話引きずってたのか」とツッコんだのは言うまでもない。

 

* * *

お久しぶりです。ようやく子供の冬休みが終わりましたぼけー

受験生なのに勉強しないし、子供は夜更かしして遊ぶし、夫は久々の飲み会を楽しんだ挙句に風邪ひくしで、ぐったりですショック

そんな中、娘の宿題に付き合わされ冬の東北を調べてたら『なまはげ』出てきて、つい使っちゃいました。

誤用だったらごめんなさい。人生で一度もお会いした事ありません笑

冬の東北、美味しそうな物いっぱいあって(夫の地元なのに実家以外行かない我が家)いつか旅してみたいです。