火の呼吸で一生負けない脳をつくる無敗脳ヨガ道場の辻です.
テニスは非常に選手層が厚いので,100以内の選手であれば,トップの選手に勝つ実力はあります.
ただトップの選手がトップである所以は,ここ一番での勝負強さ,全てここにつきると思います.
特に,緊迫している状況下で自分がリードしていたり,ポイントを落とせず,
どうしても守りに入ってしまうような場面で,思い切って勝負に出て来ます.
セカンドサーブでもエースを狙ってきたりします.
レシーブであればリターンエースですね.
この姿勢が相手にとっては脅威になってくるのですね.
ただ頭では分かっていても実際に勝負に出られる選手はトップ10以内の選手に限られてくると思います.
錦織選手の最近の強さの秘密はその「修正力」にあるといえます.
今回の試合であれば,セカンドセットで5-2リードした場面でメダルを意識し始めた為か,
それまでの調子とは打って変わってパフォーマンスが下がりました.
少しでも狂いがあると,トップ10の選手には追いつかれてしまいます.
案の定,そこからナダルに追い上げられ,このセットを落としてしまいました.
しかし第三セットになり,調子を取り戻した錦織選手は,5-2リードとセカンドセットと全く同じ状況になり,
嫌な記憶が蘇りそうでしたが淡々とプレーに集中していました.
もう錦織選手の表情には迷いはなく,メダルへの過剰な意識は薄れていました.
それよりも悔いなく思いっきり戦おうという姿勢が感じられました.
テニスは本当にメンタルのスポーツで,勝利の女神がちょっとしたことで流動的に入れ替わります.
サッカーや格闘技のようなコンタクトスポーツの要素と,サーブに見受けられるアーチェリーのような静的スポーツの要素を併せ持ち,
その静と動の緊張と集中が3,4時間近く続くので本当にタフなスポーツなのです.
今回の試合からも勝利ではなく,いかに目の前のプレーに集中できるかが重要だということが再認識されました.
以前はテレビでのコメンテーターや解説者も「何が何でも勝つという気迫が必要だ!」と語っていましたが,
最近では「勝利をなるべく意識しないで平常心でいかに戦えるかどうか」ということが語られるようになりました.
ここ一番で気合いが入らない方が本来不自然であり,
逆に気合いが入りすぎているために脳が興奮しすぎて,結果身体も硬直してしまっているのです.
ようやく,この「扁桃体-交感神経-筋緊張」の緊急システムの共通認識が持たれるようになってきました.
メダル獲得など未来への予期不安が強まると脳の「扁桃体」が興奮し,筋肉が硬直し,パフォーマンスが低下します.
それは全身性に及びますので,選手の表情を見れば扁桃体が興奮しているか否かが分かります.
錦織選手も非常に表情にメンタルの状況が表れます.
そこに気づけば選手自ら緩めることも可能なのですが,本人は必死ですからなかなか気づけないのですね.
それほど,ストレス状況下では「今」に集中することは困難なのです.
通常のメンタルヘルス向上であればヨガスタジオや禅寺でのマインドフルネスで足りますが,
それを試合で使えるようにするにはあらゆるストレス状況下を想定した実践的マインドフルネス・トレーニングが必要になってきます.
P.S.
“錦織の宮本武蔵戦術が完全にハマった”
…ヤフーニュースで上記の文言が載っていたが,全くの謎である.
確かに錦織選手のトイレブレークは長かったが,案内役が遠い方のトイレに誤って連れて行ってしまったと言われており,
吉川英治の小説「宮本武蔵」に照らし合わせるなら,武蔵は小次郎をいらだたせるためにわざと遅れていったことになっている.
当然,超努力型人間の錦織選手がそんな手段に頼るわけがない.
さらに非常に多く持たれている誤解だが,武蔵が小次郎との決闘に遅れていったというのも全くのフィクションである.
実際は定刻通り居合わせている.
詳しくは続く…
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