舞台『裁判長!ここは懲役4年でどうすか2016』御来場感謝 | 塩田泰造オフィシャルブログ「塩田泰造のムギムギデイズ」Powered by Ameba

舞台『裁判長!ここは懲役4年でどうすか2016』御来場感謝

舞台『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
@全労済ホール/スペースゼロ

無事、大好評で幕となりました。
御来場いただいた方々、気にかけて応援してくださった方々、
どうも有り難うございました
全力で座組を牽引してくれた座長の中村優一さんはじめ
この公演に関わってくれたスタッフ・キャストの皆に
感謝を込めて…

いろいろ書きたいのですが、またすごい時間かかっちゃうので
公演パンフレットに書いた挨拶文を記念に載せておきます

 

本日は御来場、まことにありがとうございます。
この挨拶文、ネタバレしますのでぜひ、帰り道にお読みください。

去年の今ごろ、いつも会うたび何ともイイ気分になるプロデューサー藤﨑淳さんに
この舞台のお話をいただいて、こころが浮き浮きしました。
原作は、北尾トロさんのベストセラー『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
気軽に読めて、裁判傍聴の多彩な面白さをリアルに臨場感たっぷりに伝えてくれる。
こんな面白い原作をもらえて、しかもなんの制約もなく好きに書いていいなんて、
さらに浮き浮きがつのりました。

早速、裁判所に通うと、トロさんが「100の空論より一度のナマ傍聴」と仰る通り
めちゃくちゃ面白い。日日、裁判所で過ごす朝から夕方はほんとうにアッという間で
その時に感じたあれこれは脚本のいたるところに散りばめました。

同じ原作を漫画化している松橋犬輔さんの同名コミックを拝読すると、北尾トロさんの
エッセイのエッセンスを実に巧くドラマチックな物語にまで昇華していて、唸りました。
そして、松橋さんの覚え書き「裁判長!が他のマンガと大きく違うところは、主人公が
まったく危機に陥らないところだと思います。いつも安全な場所から観てるだけの主人公」
に、たら〜っと冷や汗が流れました。なぜって…なにか目的に向かって「行動」するのが
主人公、その情熱の魅力こそがお客さんの心を掴む。というのは物語の鉄則だからです。

裁判傍聴は確かに面白い。しかし、主演に中村優一さん、ヒロインに石田晴香さんと
素晴らしい俳優さんをお迎えするのに、飾りみたいな主人公には絶対にしたくない。
さてどうしたもんか、と案じつつ打開策もないまま、北尾トロさんの続編を手に取ると
『裁判長!これで執行猶予は甘くないすか』 『裁判長!おもいっきり悩んでもいいすか』
『ぼくに死刑と言えるのか』と読み進めるうちに、ある変化に気がつきました。
作を重ねるたびに「気軽に」読めなくなっていくのです。軽妙な筆致で綴られながらも
一作めにあった(言葉は悪いんですけど)覗き見的な野次馬精神がなりを潜めていき、
他人事の裁判に、自分事のように真面目に向き合ってしまうトロさんを発見しました。
それで決めました。中村優一さんに演じていただく主人公「北尾」には、この原作者の
無意識の成長を重ねてみよう。そして、男が成長するには、やっぱり恋が必須だろう、
そう思ったら、石田晴香さんに演じてもらうヒロイン「日向」が浮かんでいました。

もうひとりのプロデューサー、静かな怪人 はやしきよしさんはひと言だけ呟きました。
「藤田玲くんには多重人格者を演じてもらいたいんです。理由は観てみたいから」
最後に登場したプロデューサー、静かじゃない怪人 中﨑裕介さんは、綺羅星のような
素敵な俳優さんをキャスティングしてくれ、百万言以上の風林火山な言葉を作家に浴びせ、
おかげで非常に刺激的で楽しい執筆の時間を過ごしました。

美術の島川とおる先生に「こんな品格に満ちた意匠を凝らした舞台の使い方があるのか」と
胸踊る舞台美術をご提案いただき、林清さん、柴田新之助さんの渾身の劇伴にのせて
稽古が始まりました。

座組の俳優さん、ひとりひとりほんとうに力があり、目を瞠る方ばかりで驚きます。
中村優一さんの真っ直ぐな情熱に打たれ、石田晴香さんの声と眼差しにきゅんっとなり、
宮原将護さんのしなやかさが心強く、宮下雄也さんの嘘のなさにおののき、水木ゆうなさんの
言葉力を堪能し、仁藤萌乃さんの切実さに鷲掴みにされ、佐藤すみれさんの瞬発力に魅了され、
高﨑俊吾さんの涼やかさに惹かれ、上田堪大さんの独特の存在感に刮目し、浅倉一男さんの
溢れ出る人柄に脱帽し、林田航平さんのド迫力に圧倒され、田村和也さんのしぶとさが嬉しく、
帆世雄一さんの表現力に舌を巻き、渡辺瞳さんの懐の深さにじ〜んとなり、柚木美咲さんの
男勝りな根性に爆笑し、並木秀介さんの人を食った証言にも爆笑し、高田舟さんの誠実さが
沁み、細谷レナさんの不思議さに唖然とし、浦坂佳佑さんの責任感を頼もしく思い、
大野愛さんの新鮮さが眩しく、浜辺マル子さんの佇まいにホッとし、
嶋村太一さんのユーモアに深呼吸し、藤田玲さんの怪演に過呼吸になり涙が噴き出し、…と
稽古場の全方向に目を奪われながら、たいへん楽しく芝居をつくっている今です。

願わくば、この楽しい気持ちがひとりよがりでなく、本日「傍聴」にお越しいただいた
お客さまに、楽しんでいただけたらとても嬉しいです。
長々すみません。御観劇、有り難うございます。
                             脚本・演出 塩田泰造