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読書感想文をのせていくブログ。感動した作品は一生懸命お勧めしていきます!

書名 死にがいを求めて生きているの
著者 朝井リョウ
感想 ( ゚д゚)ハァ?

 

 

前情報なしに読み進めると、終盤で意味不明になる。

 

本作品は2019年に始まった螺旋プロジェクトというイベントの一環で、複数の作家が一つの大きなテーマをもとに執筆したいくつかの物語の一つだったようだ。それぞれの作家が綴る物語は時系列でつながっており、紀元前3000年から西暦2100年頃まで幅がある。本作品はその時系列のなかで現代を切り取っている。

 

最初にわかっていれば見方も変わったのだが、上記の事前情報無しに読み進めていると終盤の展開が意味不明になる。ラブコメ青春だった作品が最終回で突然、世界滅亡をかけて昨日までの親友と闘うみたいな流れだ。

 

序盤~中盤は、承認欲求をこじらせて苦悩する若者たちの苦悩を描かれている。SNSで容易に他者の情報わかる時代に自分はいったい何をしているのか?と焦燥感にかられる登場人物たちが学生運動やNPO活動に勤しむ姿にはリアル感がある。

 

主人公はパート毎にわかれており、それぞれ微妙に関係性を持っている群像劇のような構成になっている。登場人物の関連性がわかってくると最初の方で描写されたシーンの意味もわかるようになり構成の奥深さを感じる。

 

しかし!だがしかし…途中からでてくる「海山伝説」の設定が後半で主張を始めてきて終盤では、若者たちの苦悩はなんだったのか?といいたくなくなるような展開になる。最後はもはや意味不明だ。

 

そして、本書の最後に上記の螺旋プロジェクトの説明が載っていて、初めて全体像を知り、意味不明な展開が理解できる。

 

作品としては、あらかじめ用意されたテーマに沿っていると思うのだが、本作だけでいえば中途半端な内容と言わざるを得ない。

 

最初にでてきた若者たちの苦悩は現代のリアル感を表現されており興味を惹かれる。主人公たちがどのような変遷で大人になっていくのか気になるが、海山伝説のせいで描かれることはない。

 

海山伝説は日本神話の海幸彦と山幸彦をモチーフにしていると思うのだが、螺旋プロジェクトの説明資料によると壮大な設定が用意されているようでやはり気になる。しかし本作品では深く掘り下げられることなく、登場人物たちの関係性を明確にしただけだ。

 

あくまでもテーマに沿うなら、若者たちの苦悩などは省略して、最初から海山伝説を軸に登場人物たちの闘い?を描いたほうが楽しめたと思う。

 

正直、海山伝説関係なく本作の登場人物たちが、どのようにしてありがちな悩みを乗り越えて成長していくのか読みたかった。残念である。