むぎめんplus〔  〕×福岡女学院 金沢ゼミ -8ページ目

むぎめんplus〔  〕×福岡女学院 金沢ゼミ

「麺」をテーマにした小説・エッセイ集

by:yoon.gl

 

 

本文 

 

 

「ピコン♪」(着信音)

秋が終わりを告げ、陽がだんだんと短くなってきたこの頃。白くなり始めた息が冬の始まりを教えてくれる。足先から伝わる冷たさで目が覚めて、いつもの朝を迎える。

「こんな日は、布団から出るのが億劫だ...」。そう思いながらケータイで時間を確認する。一通のメッセージが入っていた。

「朝から誰だろう。」

かじかむ手でメッセージを開いてみる。送り主は母だった。

 

「おはよう。ちゃんと起きていますか。こちらの気温は20度です。まだまだ暖かくて家族みんな半袖で過ごしています。そっちはどう??寒いでしょう。風邪ひかないように温かくして過ごすんだよ。」

 

冬の太陽よりも暖かいメッセージが心に染みる。身体まで温まり、自然と布団から出ていた。カーテンを開け、身震いをしながら少し窓を開ける。外はやはり寒い。葉が散って寂しく立ち並ぶ木々を写真に撮り、母に送る。

「こっちはすっかり冬景色です。こんな寒い冬は初めてです。でもそれも楽しいよ。」と寂しい気持ちを抑えながら返信した。

するとすぐに通知音が鳴った。

 

「そっか。今日、そっちに荷物が届きます。受け取ってね。」

 

今年3度目の仕送り。次は何が入っているのだろうと考えながら身支度をする。

しばらくしてインターホンが鳴る音がした。宅配だった。中くらいの段ボール箱。早速開けてみると、地元の食品と母からの手紙が入っていた。手紙にはこう書かれていた。

 

「そっちでの生活は慣れましたか。母はたまに寂しくなります。でも、あなたが頑張っているから、お母さんも頑張ります。今回はあなたが大好きな麺料理が作れるように材料を全部揃えています。麺は茹でて、汁は作り方を書いているからそれを見ながら作ってみてね。これで身体を温めて。何かあったら連絡しなさい。次帰ってくるのを楽しみにしているよ。」

 

手紙にはレシピが添えられていた。実家に帰るといつも食べている母のお蕎麦。私の大好物だ。これを食べると、帰ってきたんだという安心感に包まれ心まで温まる。

 

母の手書きのレシピを見ながら作ってみる。なんとか完成し食べてみた。寒い部屋の中で食べるお蕎麦は、私の身体を芯から温めてくれた。

でも、母の味には何かが足りない。それはきっと、愛情だ。いつも、どんな時でも、どこにいても、私に無償の愛をそそいでくれる母。分かっていたはずだけれど、忘れがちな母の愛。このお蕎麦が教えてくれた。

 

離れていてもつながっている。まるでこの麺のように。

 

まだまだ未熟で不器用だけれど、応援してくれている母のためにも頑張ろう、頑張らなきゃいけない!と、強く強く思えた。

今度帰った時は、私がこのお蕎麦を作ってあげよう。さっきまで寒かったこの部屋が、柔らかな陽で照らされたように温かくなった。

 

 

作者の言葉 

 

 

こんにちは。皆さんは寒い冬をどうお過ごしですか?家族みんなで過ごしている人。仕事や学業に没頭している人。一人暮らしで寂しい気持ちを抱えながらそれでも楽しく過ごしている人。いろんな人がいると思います。ちなみに私は、後者です。15歳で親元を離れ、何度も涙を流しながら、1日1日を過ごしてきました。そんな私の人生のちょっとした瞬間をエッセイにしてみました。近くにいると忘れがちな愛情。感謝。離れてみると気付かされることばかりではないでしょうか。仕事がうまくいかない時。勉強に身が入らない時。友達や恋人との関係に悩んだ時。皆さんが辛い時に思い浮かべるのは誰ですか。そして、仕事で成功した時。成績が良かった時。幸せを感じた時。誰に話したくなるでしょうか。それは人ぞれぞれだと思います。今、頭の中にいるその人は、いつだってあなたの味方でいてくれる人でしょう。人は皆、誰かのおかげで生きることができていて、誰かのために生きています。そんな誰かの大切さに気づけていますか?当たり前だと思っていませんでしょうか?忙しい日々の中でも、ほんの少しその方に感謝を伝えてみませんか。