むぎめんplus〔  〕×福岡女学院 金沢ゼミ -3ページ目

むぎめんplus〔  〕×福岡女学院 金沢ゼミ

「麺」をテーマにした小説・エッセイ集

by:ネギトロ

 

 

【本文】 

 

高校2年の3月、私は当時気になっていた同じクラスの男の子に、遊びに誘われた。いわゆるデートというものなのだろうか。普段から仲が良く、こまめに連絡も取り合っていたが、いざ2人で遊ぶとなると緊張して、夜も眠れなかった。

特に遊ぶ場所のないど田舎に住んでいた私たちは、隣町にある小さなショッピングモールに行くことになった。

 

小学校から高校までの入学式と卒業式は全て雨。修学旅行や集団宿泊でも1日は雨。それだけでなく、旅行や大事な予定の日でも雨。とにかく私は天候に恵まれない人間であり、おそらく雨女なのだろう。そしてやっぱり、楽しみにしていたこの日も雨だった。それも、風が強く、傘の意味がないくらい横殴りの雨。待ち合わせ場所まで行くのに濡れてしまった。でも、ショッピングモールの中は問題ない!

 

いろいろお店を回り、ちょっとお腹が空いてきた頃、私たちはショッピングモールのすぐそばにあるお蕎麦屋さんに入った。そこは、家族とよく訪れるという彼のお気に入りのお蕎麦屋さんだった。当時の私は、麺類にあまり興味がなく、好きなのはパスタくらい。お蕎麦は可もなく不可もなくという程度で、メニューの中にお蕎麦があっても、わざわざ選ぶほど好きな食べ物ではなかった。しかし、彼がこの店を選んだのだから、もちろん文句はない!

 

お店に入ると、入口から一番遠い窓側の2人席に案内された。お蕎麦の香りが漂う店内。席に座り、メニューを決めた。私はお蕎麦にこだわりもなく、さほど詳しくもなかったため、彼が決めたものと同じ、ざる蕎麦を注文した。

 

しばらくたって、ツヤツヤのざる蕎麦が到着し、一口食べてみた。

「あれ、こんなに美味しかったっけ」。

久しぶりに食べてすでに味覚が大人になっていたのか、それとも彼と食べたからなのかよくわからないが、お蕎麦の美味しさに気づいた。普段麺類をあまり食べない私はお蕎麦のすすり方も下手だったが、あっという間にペロリと完食。お腹も満たされて、ゆったりとした時間が私たちを包んだ。

 

そろそろ店を出る頃かなと、残っていたお冷やを飲み、ふと窓の外を眺めた。

すると、なんということだろう。ひどく降り続いていた雨がパッと止み、空模様が大きく変わった。さっきまでの雨が嘘だったかのように、青空が見え始めた。

 

その時だった。

「話したいことがある」。一言、彼が言った。私は少し姿勢を正して、彼をみつめた。

 

「僕たち付き合わない?」

 

お蕎麦の香りが漂う店内が一瞬で、甘い香りに変化した。口の中に残っていた蕎麦の香りも甘く変化した。窓の外は快晴! 私たちのことを天気も味方してくれているような気がした。私はもちろんその告白を受け入れ、私たちは友達ではない関係になった。

 

あの時から、私にとって蕎麦は「甘い」ものだ。蕎麦を食べると、今でもその時の情景がよみがえってくる。

 

 

 

【作者の言葉】 

 

みなさんには、その時の情景によって食べ物の味が変化した経験はありますか?私は一人暮らしを始めてから、一人で食べるご飯と、誰かと一緒に食べるご飯とでは味が全く違うと常々感じています。美味しいものを食べるのなら、誰かと一緒においしさを共有したいですよね。

このエッセイは、心の奥底にしまっていた私の高校時代の出来事です。小っ恥ずかしい思い出なので、テーマを変えようか悩みました。皆さんも高校時代を振り返りながら、ぜひ読んでみてください。

そして、早く雨女を卒業したいものです…。