この記事は孫娘が2歳4ヶ月当時の過去のお話です。
詳しくは、「はじめましてのごあいさつ」をお読み下さい。


午前3時頃、「痙攣!」という声でベッドから飛び起きた。
小児病棟と違い、ICUの看護師は医師が着く前に既にドルミカム(鎮静剤)を早送りし、アンビューバッグで換気し発作を止めた。

激しい痙攣で、熱は42℃まで上がり、血圧は50まで下がった。
血圧を正確に計るために、動脈にモニターをつけた。
既に静注で入っているドルミカムとフェンタニル(鎮痛剤)に、セルシン(鎮静剤)とアンヒバ(解熱剤)を追加する。
担当ではなかったが、その看護師はその後も何度もてのひらで胸を押し、換気をして呼吸を安定させた。

朝になり、熱は38.3℃まで下がって呼吸も落ち着いてきたので、酸素濃度を下げて行く。
しかし、血液が固まりにくくなっているので、血液製剤を輸血する同意書にサインした。
後日、診断書には「播種性血管内凝固症候群」と書いてあった。


お嫁は仕事を休んで、息子も午後から休みをとって病院に来たので、私は家に一度帰った。
昨晩は一睡もしていないが、全然眠くないので、いつものように掃除と洗濯と洗い物をしてシャワーを浴び、病院に戻ろうとした時、
遠く離れた所に住むお嫁の母親から電話があった。

ICUはスマホの電源を切らないといけないので、ラインの返事はなかなかできず、とても心配しているだろうと思い電話を取った。

「チャイルドシートを買いにきているのだが、いいベビーカーもあった。ベビーバスもあった方がいいか?」
4月に里帰り出産する予定の下の子の話だ。
呆気に取られたが、
「そうですね」そう返事をし、病院に戻らなければならないからと早々に電話を切った。

遠くに離れた重体の孫娘を、心配するか祈るかしかできないだろうと、
逐一様子も知らせているし、機内モードでこっそり撮影した、たくさんの機械やコードや点滴の管に囲まれて眠る孫娘の姿も送っている。


私は少し頭に来た。
「昨日から意識不明です。
自分で呼吸ができません。
口に呼吸器のチューブが入ってます。
鼻には薬を入れるチューブが入ってます。
輸血は
『血液の成分が悪くなっているので、感染症等のリスクはありますが、やらないと死んでしまうので、いざというときはやります。そのための同意書を書いてもらいます』
と、主治医から説明がありました。」
と、ほぼ脅しに近いラインを送った。
少し意地悪が過ぎたかもしれない。 

その後、妊娠中のお嫁の体調を聞くことも、お腹の子供のことも送って来なくなった。
遠くから、純粋に重体の孫娘の心配をする祖母のラインに変わった。

午後に予定していた脳波とMRIは呼吸が安定せず、危険と判断されて中止になった。
血液検査でRSウィルス感染が熱の原因と解ったが、ピークはまだこれかららしい。
咳と痰が増え、吸引のチューブに血が混じる。熱は39.7℃。

孫娘はまだ苦しまないといけないのか!
遠くのじいじ(私の主人)は神頼みしかできないと祈り続ける。