問診票にはとりとめのない事を書いたので、嫌いなやつの事を、なるべく冷静にまとめて話した。
(嫌いなやつの事を冷静に話すのは、ちょっと無理があったけど。)
いくつかの質問のあと、今書き込んだばかりのカルテを見て先生が言った。
「これは、・・・うつだね。」
「えっ」
私は、予想外の診断に固まった。
「PTSDとかではないと思う。」
私はてっきりPTSDだと思っていた。
だからやつの事ばかり話したわけだけど。
先生は根拠として、
「まず、眠れないこと。
眠っても何度も目が覚めること。
休日、何も楽しみがないこと。
このふたつ。」
確かに、自分でも毎日つまんないと思って、以前好きだった事や趣味を無理やりやってみたが、ひとつも楽しいと思わなくなっていた。
なんか、そうかも・・・。
「嫌いなやつの事はひとつの要因ではあるけども、他にも、お母さんが亡くなった事や仕事が変わった事、目の事などが重なってうつになったんだろうね。」
先生が続けた。
「例えば、よそに異動して嫌なやつがいなくなっても、気持ちはスッキリしないよ。
うつを抜けば、そんなやつの事なんかどうでもよくなるから。」
そっかー。
そうなんだー。
「うつは治るから!」
そう言われて、すごく気が楽になった。