クロスマーケティングがネット上で調べたアンケート結果がありました。

それが「スーツを持っている人の着用頻度」というアンケート調査。

1100人の回答結果です。(20~69歳)

 

それによると、今も着られるスーツを1着以上持っている人は90%。

ほぼほぼすべての人がスーツを持っている結果です。

スーツはもともと持っていないという人が昔も1割程度はいたと思われますので、この結果はまあそうだろうというもの。

しかし保有しているスーツの着用頻度はどれくらいかという質問には、半分以上の人が「年に1回以下」と答えているのです。

割合は56%。

これは驚きました。

 

最近お会いする方々のほとんどはスーツを確かに着ていません。

どの場面でもスーツに身を固めた人を見る方が少なくなっています。

特にコロナ禍以降、それが加速して、それまでスーツを着ていた方も、スーツを着なくなりました。

コロナ禍が明けてスーツはどうなるかと思いましたが、やはり戻らない。

 

アンケート調査では40~50代の男性や20代の男女で比較的目立ちますが、それでも2割程度です。

女性の30代は3年に1回以下。

もはや、スーツというアイテムそのものが前時代的なファッションになっているのです。(海外のちゃんとした方々は今もスーツで仕事をされていますが・・・)

 

この仕事をする時の洋服の変化はこの30年の中でもっとも大きな変化の一つと言えるのではないでしょうか。

ここまで一気にスーツを着なくなるようになるとは、私も想像していませんでした。

 

私は今もスーツを10着以上持っています。

しかしそんな私も着用頻度は年に5~6回程度です。

 

株主総会の時。

結婚式や公式なパーティーのような場。

はじめての講演の時。

 

これくらいです。

私でもスーツを着る機会が激減しています。

 

したがってスーツの購入頻度も落ちました。

この5年間で1着も購入していません。

 

着用頻度が落ちると購入頻度も落ちます。

結果、その商品をとりまく市場は縮小していきます。

それが今のスーツ市場。

もうこの流れはしばらく変わらないでしょう。

 

この流れを加速させたのは、カジュアルフライデーが始まり、職場のカジュアル化が徐々に広がっていったこと。

最初は金曜日だけだったのが、少しずつカジュアル化が増え、毎日カジュアルでOKになり、ついにはなんでもOKになっていったのです。

 

これにコロナ禍が拍車をかけました。

自宅でのリモートワークが認められるようになると、もうパジャマでもOKになり、完全に服装が自由化されました。

 

スーツでもパジャマスーツなんていうふざけた商品(?)も紳士服のアオキが開発し大ヒットしました。

 

もう一つの理由は、日本の気温が上昇していることです。

今年も暑いと言われていますが、夏の暑さが尋常ではなくなってきました。

40℃を超えるような日が全国各地で見られるようになっています。

さすがにこの暑さの中でネクタイを絞めて、スーツを着ていることはできません。

来客がある時でも、上着は脱いでくださいと言うのが普通になっていますし、そもそも上着は来ていないし、シャツすら着なくてもよくなり始めています。

 

昔は海外のビジネスマンくらいしかしていなかった着崩しが日本でも普通になりました。

結果として日本のビジネスマンのファッションは大きく変化したのです。

 

スーツを着るとクリーニング代もかさみます。

その点でスーツを着なくなってクリーニング代が減ったという家庭も多いです。

一方でクリーニング屋さんの売り上げは減りました。

クリーニング屋さんはシャツやふとん、靴など、さまざまな商品のクリーニングをとらないとやっていけません。

一方でコインランドリーは増えています。

 

また、スーツを販売していた郊外型紳士服店は売り上げを伸ばしづらくなりました。

リクルートスーツは今も市場がありますので、どちからと言うと大学の入学式、成人式、就活用、新入社員をめがけて各社はスーツを売り込みます。

それ以外は、着用頻度が低い商品になってしまったので、ここぞと言う時に必要なオーダー、セミオーダースーツの販売に力を入れるようになりました。

 

数年に一度であれば、ここで一着いいスーツを作っておこうという人も多いのです。

たまに着るスーツが「サイズがあわず着れない」といものが多くなっているです。

だからオーダーは需要があります。

(写真 伊勢丹メンズ館のオーダースーツ)

 

今ではリクルート用のオーダースーツ需要も高くなっているようで、オーダースーツ専門店が続々出店しています。既成のつるしスーツは需要が減少。

その人の身体にフィットしたスーツに需要がシフトしています。

 

その意味では、スーツも余分な在庫をもたずに、オーダーで勝負する方向にもっていけば、独占できる可能性もあります。

 

世の中の需要の変化をどうとらえるか。

スーツは着なくなったからもうスーツ商売をやめるのか。

なくなってきたからこそ、スーツで勝負して独占していくのか。

 

このあたりに経営者の決断力が問われます。

今日もスーツから市場を考えていけるいける!!