シャトレーゼがいよいよ農産物の生産に入るようです。
子会社の農業生産法人が第一弾として、家畜のストレスを減らすアニマルウェルフェアを意識した平飼い卵の生産を始めたそうです。
山梨県北杜市にシャトレーゼファームが平飼い牧場を新設。
4400平米の敷地で放牧場を備えた鶏舎の1棟で1100羽ほどの養鶏を始めたのです。
年内には3000羽以上、最大で4500羽を育てる見込みということで、同社はかなり力を入れて卵を生産していくようです。
お菓子屋さんが自社で農業生産法人を作る ということだけでも取り組みとしては素晴らしいですが、放牧や餌にもこだわって鶏を育てるというこだわりはなかなか普通はできません。
同社の展開する「ヤツドキ」という高付加価値業態が存在するからこそできることと言えるかもしれません。
なぜならここまでこだわった卵を量産するのは難しいからです。
この養鶏場で供給できる卵は、シャトレーゼで使用する卵全体の1%程度だそう。
ですから全体をカバーするまでにはいきません。
つまり、原価を抑えるためにやるというよりは、本当にいいものをお客様にお届けしたいという価値づくりのために行うのです。
そこで同社が取り入れるのが「アニマルウェルフェア」の考え方。
動物福祉と言われるものです。
アニマルウェルフェアとは農水省では次のように定義しています。
(以下、同省HPより抜粋)
「世界の動物衛生の向上を目的とする国際機関で、我が国も加盟している国際獣疫事務局(WOAH)の勧告において、「アニマルウェルフェアとは、動物が生きて死ぬ状態に関連した、動物の身体的及び心的状態をいう」と定義されています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としては、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。」
(以上、ここまで農林水産省HPより抜粋)
これは世界的な流れとしてでてきています。
海外のスーパーなどに行くと、そこでの品揃えの半分程度は、アニマルウェルフェアのマークがついていて、平飼い卵を品揃えしている売り場が多いです。
ニューヨークのあるスーパーではおいてあるすべての卵がアニマルウェルフェアの卵という店もありました。
もちろん卵の値段は高く、20個入りで15ドルなど、卵の値段とは思えないほどの価格がついています。
しかしお客さんはその高い卵から買っていく という店もありました。
海外では鶏の育て方、環境、餌のあげかた、餌の中身こそが重要で、安くておいしいということ以上に大切にしているのです。
日本では卵と言えば、年中安くて、いつでも買える大量生産品という意識がまだまだ強いと思います。そのような物価の優等生的卵がないと、今の日本の食生活が保てないという現状もあるでしょう。
一方で日本でももっとアニマルウェルフェアを意識しようという流れも強まってきたのです。
どうせいただくなら、その原料にもこだわって作られたおいしいものをいただきたい。
そこにこだわると、お菓子屋さんも農業をはじめざるをえないのです。
(写真 黒富士農場のアニマルウェルフェア 山梨で有名な農場
シャトレーゼとは関係ありません)
この農場のように、牛は山に放ち、鶏は広大な野原の中で自由に動き回り、豚は森林の中をうろうろして過ごしたほうが動物にとっても幸せで、ストレスがなく、病気にもかかりづらいのです。
動物の心的、肉体的ストレスをできるだけ軽減していくように考えることは、今後の飼育の中ではかなり求められるようになるでしょう。
このようなところで大切に育てられた動植物のほうが、人間の身体にとってもいいものになるわけです。
結果的に人手はかかりコストもかかります。生産性という点では低くなる面もあるでしょう。
しかしその分、価値ある商品として認識してもらいやすくなるので、高く販売することも可能です。
結果、さらに飼育環境を整える投資にまわせるので、動物たちにとってもよりいい環境が提供できるようになります。
シャトレーゼがこうした取り組みをする理由は、海外を意識しているからです。
海外に商品を販売する際に、その原料はどうやって作られたものなのかを問われるケースが増えているからだそうです。
まだまだ日本にはアニマルウェルフェアで作られた卵は生産量が限られていてほとんど入手できない状況でもありますが、需要は高まるはずです。
これからはますます生産の原点に立ち返るような取り組みが増えてくるでしょう。
シャトレーゼの取り組みにも注目したいと思います。
原料にこだわり生産にこだわっていけるいける!!