「エレベーターには最初に乗って 人が乗ってくる間 開 を押し続ける」
「降りる時には最初に降りて扉を手で開けておく」
「お客様は見えなくなるまで見送る」
「電話は相手が切った音が聞こえたらこちらが切る」
「自分のつむじが見えるように相手にお辞儀する」
「メールやSNSのラリーは自分で終える」
「PDCAよりはDPCA。まず「やること」が大事」
どこかで聞いたことがあるマナー。ルール?
そうそう、よく新入社員の時にマナー講座で聞いたなあとか、昔、やらなくて先輩に怒られたなあなどと思いながら、読みました。
おもしろかった。
後田良輔(うしろだりょうすけ)さんという方の「今こそ使える昭和の仕事術」(かんき出版)という本に書かれている内容です。
挿絵が昭和的で、一つひとつのマナーにポイントと効果が書かれているのがおもしろい。たぶんこれが書かれていないと、若者はやらないからでしょう。
私はこれを上司が直接教えず、この本を若者に渡すことをお勧めします。
「不適切にもほどがある」で昭和という時代の良さとイマイチさが世の中に広がったのですが、私はどちらかと言うと、「やっぱり昭和ってなかなかいいよね」派なので、昭和の時代の良さを見直す動きがでてきていることはうれしいのです。
おそらくそんな流れを踏まえてつけられたタイトルだと思いますが、昭和時代の営業マンや若手が必死でやっていたことがひたすら書かれています。
この著者は大手広告代理店の営業マン。
30年以上、代理店で営業をやり続けているそうです。
私はこの方は存じ上げないのですが、その役職(副部長)から、ああ、この代理店の営業の方だとわかりました。
泥臭い営業をすることで有名な代理店。
そこで30年以上、いわゆるVIPの応対をしてきたというのがこの本の売り。
昭和がすごいというタテツケではありません。
世の中のVIPと言われる方々はこんなことをやっているのですよ というように紹介しています。
このフレーズであれば、若者も否定できません。
昭和のスパルタ的モーレツ主義を批判したくなりますが、昭和を賛美する内容ではなく、すごい人たちは昔からこんな基本的なことを共通してやっているのですよ という表現がされています。
うまいなあと思いながら読みました。
「ふてほど」の宮藤官九郎さんの今の時代の行き過ぎたガバナンスへの警告も上手でしたが、この本もなかなかです。
最近はエレベーターに乗っても、後から乗ってきた若者が同じフロアで降りる際に、後ろを振り返ることなく、ありがとうございますと言うこともなく、真っ先にフロアに降りていく姿を何度となく見かけます。
「えっ、どうぞとか何もないんだ」
といちいち驚くことはなくなりましたが、エレベータールールを知らないのだなあと思いながらそのような若者を見ていました。
そうなのです。
教わったことがないのです。
特にこの4年くらいはコロナ禍で会社に行くことも少なくなったため、会社でのルールやマナーなど教わっていない人も多い。
ましてや宴会でのマナー。
たとえばお酒を注ぐのは知っていても、どこに座るべきかなど、宴会そのものがなかったのですから知らないわけです。
一番いい席に新人が座って社長が末席なんてこともままあります。
と言うより、最近では「社長も社員も対等で、ピラミッド型ではなくフラットな組織づくりをしているから、どこが上座でなど気にしないでいいよ」と上司が言うので、そんなこと気にしないわけです。
しかしきちんとした方、ちゃんとした方々と付き合っている方ほど、宴席での座席位置、配置にはこだわります。
そのほうが気持ちがいいからです。
お互いに気持ちよく過ごすためにどうすべきか。
それがここに書かれているマナーやルールです。
これが行き過ぎると問題になり、昭和のモーレツ主義が批判されるわけですが、行き過ぎと強制にさえ気を付ければ昭和のマナーはなかなか気持ちがいいものです。
最近ではこうした基本的な社会人としてのマナー的なものはどちらかと言うと避けられていたと思います。
しかし同著者は、こうしたことを次の世代に伝えていくことが大事で、このタスキを次につなぐのが私たちの役目であると説いています。
私もそう思います。
とは言いつつ、私もつむじが相手に見えるほどお辞儀はしないし、名刺を必ず両手でもらうなどはあまりやっていません。
でもエレベーターはできるだけ押しますし、新幹線の座席は使う前の状態に戻して降りるようにしています。
舩井幸雄会長に直接教わったこともありますし、お客様に教わったこと、先輩に同行して教わったこと。
その中でこれは大事だなあと思ったことは今も続けているだけです。
こうしたことは古臭いと言われがちですが、私のような普通の人こそやるべきだと思っています。
しかしとんでもなく偉い人が普通にやっていることを見ると、やはり大切なことだと思います。
大切なことは時代が変わっても大切なのです。
今日も昭和の仕事術を大事にしていけるいける!!