先日、東京の明治神宮にある明治神宮ミュージアムに行ってきました。

いま開催中の「正倉院宝物を受け継ぐ」を見るためです。

(2月25日まで開催中)

 

 

先日、明治神宮職員の方からこの展示のことを伺いました。

「これは明治神宮が主催しているものではなく正倉院の企画ですが、とても素晴らしい企画展です」

ということでした。

そして「おいてあるものはすべて模造品なのですが」という言葉も気になりました。

 

(写真 展示品の写真はとれないため入り口の看板のみ)

 

模造品だけを並べているのに、なぜ素晴らしい企画展なのか??

これは行ってみてみようと思ったのです。

 

行ってみるとそこには正倉院宝物の「模造品」が並んでいました。

どれも素晴らしい一品ばかりでしたが、すべて模造です。

なぜ模造を展示しているのか。

そこにこの展示の意味がありました。

 

正倉院は「シルクロードの終着点」と呼ばれ、数々の貴重な物が収められてきたそうです。

そもそもは光明皇后が聖武天皇の御遺愛品を東大寺の盧舎那仏に捧げられたことから始まっています。

しかし1300年以上前の物は壊れやすく、部品すらなく、壊れたままの状態の宝物も多かったようです。

それを見られた明治天皇が、破損の激しかった楽器類の修復を命じて、宝物を整理するとともに、模造品を作って、宝物を守り伝える大切さ、再現するための技術の継承を行ってきたものなのです。

 

中国だけでなくアフガニスタンなど中東地域からのさまざまな伝承品などが正倉院にはたくさんあります。

展示されていたものにもハーブのような大きな楽器や、琵琶などもありました。

また刀剣も展示されていました。

 

それらはすべて模造品です。

しかしどれも素晴らしい物です。

なぜか。

 

もともとの本物をもとにして、どんな部品でどのように作られているのかを分析し、忠実にそれを表現して作っているのです。

中には傷まで同じように表現して作られた模造品もありました。

 

模造とはここまで忠実に作るものなのかと驚きました。

 

すべての宝物を見て、明治天皇がこれらの元の本物を見て、さぞかしがっかりされたことを思いました。

本来は光り輝いている物、美しく彩られていた物が、時と共に色褪せ、壊れ、そのままになっていたわけです。

 

通常ならそれは仕方がないものとしてそのままにしてしまうところでしょう。

代々受け継いできたものに手を加えることにも抵抗があったはずです。

 

しかし、そのままではその本物も朽ちてなくなってしまう。

シルクロードをたどってきた価値ある宝物が、時代と共になくなってしまうことの損失は耐えられないと感じたのだと思います。

そこで、それを未来永劫この世に残していくために、正倉院の宝物の修理、修復をし続けるための技術を残していくため、模造品を作ることで技術の伝承をしてきたのです。

 

模造とはそのような意味があったのだと私ははじめて知りました。

 

通常、何かを模造するということは、何か悪い意味でとらえられることが多いと思います。

先日話題になっていたユニクロのショルダーバッグをまねたバッグをSHEINが作ったとして提訴した問題もそうです。

ある企業の作ったバッグを何の許諾もなく、同じようにコピーして作り販売する。

これも一種の模造品ですが、これは自社の利益を得るために他社の物を参考にまったく同じ品を作り、自社の利益にしていくというやり方になります。

 

同じ模造でも、自社の利益にしてしまう模造と、世の中に技術を残し宝物としての価値を残していくために模造していくという世の中の利益のためにする模造とは、まったく違います。

 

生成AIに模造の類義語を尋ねてみると次のような言葉が並びます。

 

「模造」の類義語には、

「偽造」「偽作」「贋作」「贋造」「代作」「変造」「複製」「作り物」「偽物」「紛い物」「食わせ物」「如何様」「いかさま」「擬古」「コピー」「イミテーション」「レプリカ」「フェイク」「模倣」「まね」「模擬」「人まね」「猿まね」「右へ倣え」「複写」「模写」「写し」「真似事」「模する」「倣う」「見倣う」「なぞらえる」「擬する」「カーボンコピー」

 

このように、本物のようにまねて作るという意味合いの言葉は、どちらかと言うと、フェイクだったり贋作だったりと、何かをまねるのですが、それを自分の利益のためにしてしまうような意味の言葉が多くあります。

 

一方で、倣う、見倣う、コピーする、そして本来の模造という、相手に対する敬意をもって倣うことの意味もあるのです。

 

模造はこのように使っていけばとても良い物であるのです。

世の中のためになるような模造を私たちもしていくべきではないでしょうか。

 

自分のためではなく世のため、人のためになるような模造をして、素晴らしい地権、技術を次の世代につないでいきましょう。

 

今日も模造していけるいける!!