季節の変わり目で急に気温が下がったと感じるこの頃、どうもお腹の調子がよくない。


もともと腸は弱い性質なのだが、同時に鼻の奥がムズムズするので風邪でも引きかけているのだろう。


なにか消化の良いものでも食べようかと思い、昨夜は雑炊的なものを作ったわけであるが、ここで欠かせないのが梅干しだ。


子供の頃からどうも梅干しが好きだ。


果肉もさることながら、梅干しの醍醐味は何と言っても種である。


といっても種をガリガリ食べるのが好きなわけではない。


種を口の中でいつまでも弄ぶのが好きなのである。


アメ玉ならどんどん小さくなっていき、いつしかなくなってしまうだろう。


その前に、ついアメ玉に歯を立ててしまい、ガリッと噛み砕いてしまうこともしばしばである。


梅干しの種はいつまでなめてても無くなりはしない。


それどころか、軽く歯を立てるとほのかな弾力感で抵抗をしめし、まさに口の中で弄ぶに持ってこいのシロモノなのである。


子供の頃からよくそんな事をしているのであるが、時々事故も起こる。


ちょっとしたはずみで飲み込んでしまうのだ。


「種を飲むと、ヘソから芽が出るよ!」


祖母だったか母親だったかが時々言っていた。


梅干しの種じゃなく、スイカの種だったかもしれない。


実はこの「種を飲むとヘソから芽が出る」という教えは我が一族にのみ伝わるものではなく、世間一般に言われている話らしい。


おそらく種は消化に悪くお腹を壊しやすいから、子供が飲まないように注意する脅し文句的な言葉なのであろう。


実際、種の消化抵抗力は結構なものだ。


そもそも果物が甘くおいしいのは、動物に果肉を種ごと飲み込ませ、排泄物にまぎれて遠く離れた土地で芽が出るようにと考えられた植物の知恵だ。


この時、種ごと消化されたのでは意味がないから、ことさら種子というやつは消化されにくくなっているのだろう。


今は洋式便器が趨勢を極めるので中々機会がないが、まだ和式便器が多かったころは、自分の排泄物に点々とトウモロコシが姿を残すこともよく見られた。


ゆでて加熱してあるトウモロコシでさえこの打たれ強さであるから、生の種なんてどれほどのものか。


特に子供の消化器は未熟であろうから、お腹を壊さないようにという祖父母であり親でありの気遣いが、「種を飲むとヘソから芽が出る」という脅しになったのだろう。


もし本当に飲み込んだ種が腹を突き破って発芽するとしたら、そこらじゅうに冬虫夏草状態で朽ち果てる鳥の死がいが転がるなんてことになる。


オームの体から芽吹く腐海の植物みたいな世界のようで、ユパ様もビックリだ。


と、なんでこんなことを書いているかというと、昨夜ついうっかり梅干しの種を飲み込んでしまったからなのである。


食べた物が消化され排出されるまで、およそ18時間くらいらしい。


そして今、自分はお腹の調子が悪い。


おそらく今日の夜くらいには、


「カランカラン」


と乾いた音がトイレに響き渡るかもしれないと思うと、ちょっとワクワクしないでもない。