ザザーン、、
ザザーン、、、
5月の日差しは暖かだったが、風が強い日だった。
群青色の海
灰白色の砂浜に
ポツンと小さな黒い猫が
風にあおられながらふるふると震えている。
ごめんごめーん
僕は彼女を抱き上げた。
怖がるその猫は必死に僕の肩によじ登り、
顔に擦り寄って小さな声で鳴いた。
風が強く、目を細めながら、2人は海を見ていた。
ふと、目を覚ませば新幹線に乗っていた。
出張の、帰りで帰ったらこのまま仕事だ。就職希望の方の面接だったっけ、、、
妻から連絡だ。
むちゃこが、、、また、倒れた。
これはまずい。1月に一度倒れ、なんとか復活。毎日、皮下点滴をしている状態だった。
慌てても、新幹線は速くはならない。いや、もう十分ものすごいスピードだ。
むちゃこは意識がない。
むちゃこは22歳。
覚悟はしていたが、こんな日が来てしまうとは。
夢で見た、22年前の風景は、子猫むちゃことの思い出。当時、私は19歳。
妻の素晴らしい対処で、むちゃこは昼には意識を回復した。
だが夕方には再び昏睡。触っても呼吸のみで反応しない。
半ば諦め、輸液ポンプとともに自宅に連れ帰って点滴しながら、経過を見ていた。
うつらうつらしていると、妻のあっ、むちゃこという言葉に目覚め、目を向ける。
むちゃこが起き上がっていた!
神様!
と
あまり信心深くない私も思った。
倒れた翌日はなんとか意識を保ってくれて、一緒に病院に、いき、一緒に帰り、一緒に過ごした。
でも、血液検査も、見た感じも徐々に意識を保てなくなっていく。。
夜遅く。息を引き取った。
学生の6年間、勤務医時代の7年間、開業しての9年、獣医師を目指し、獣医師になり、結婚して、開業して、、、
私の人生の半分以上を一緒に暮らしてきたむちゃこ。
天国で、安らかに、過ごして欲しい。コジロウくんにも会えるかな??
むちゃこ、ありがとう。。